一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、2026年7月1日にウォレット・AI部会を新たに設立したと発表しました。同部会では、秘密鍵を自ら管理するノンカストディアルウォレットや、AI(人工知能)技術を統合したウォレットをめぐる論点を業界横断で整理します。利用者保護や安全管理に関する自主基準の策定、適格ノンカストディアルウォレットの制度要件の検討、申告分離課税を含む政策提言の取りまとめを推進する方針です。
設立の背景とウォレット機能の高度化
日本の暗号資産制度は、金融商品取引法への規制移管に向けた議論や、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業制度の開始など、大きな転換点を迎えているとされています。
その中で、ウォレットは暗号資産の保管や送受信にとどまらず、DeFi(分散型金融)やNFT、ステーブルコインといったオンチェーンサービスとユーザーをつなぐ重要な基盤となっています。さらに近年は、AIエージェントによる取引提案や実行支援、ガス代・取引経路の最適化、詐欺検知、MPC(複数の当事者で秘密鍵を分散管理するマルチパーティ計算技術とされています)や生体認証を活用したシードレス認証(従来の復旧用フレーズを使用しない認証手法とされています)など、機能の高度化が進んでいるとされています。
一方で、利用者保護やAML/CFT(マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策とされています)、プライバシー保護、DEX(分散型取引所)接続UIの位置付け、AIによる取引時の責任の所在、国内外の規制格差など、制度や実務における課題も顕在化しています。
主な検討テーマと今後の活動方針
ウォレット・AI部会では、主に以下のテーマについて検討を進めます。
- ノンカストディアルウォレット提供事業者における利用者保護・安全管理の自主基準
- DEX接続UI、DAppsブラウザ、ブリッジなどの規制上・実務上の位置付け
- AIエージェントが取引提案や実行支援を行う場合の責任分界
- AIを活用した詐欺検知、リスク説明、取引前確認などのベストプラクティス
- MPC、生体認証、シードレス認証などの新たな秘密鍵管理手法
- AML/CFTとプライバシー保護の両立
今後の活動として、ウォレット事業者や暗号資産交換業者、金融機関、AI・セキュリティ関連事業者、法律事務所、監査法人などの知見を集約する方針です。具体的には、勉強会や事業者へのヒアリング、国内外の制度・技術動向の調査を実施していくとしています。
37社・51名が参加する運営体制
同部会には、設立時点でウォレット事業者や法律事務所を含む計37社、51名が参加・登録しています。2026年6月29日には、すでに第1回全体会合が開催されました。
部会の運営体制は以下の通りです。
- 部会長:吉田世博氏(株式会社HashPort 代表取締役CEO)
- 副部会長:黒田千春氏(KDDI株式会社 渉外・広報本部 政策調整部 レギュラトリーエキスパート)
- 副部会長:磯野太佑氏(SMBC日興証券株式会社 Nikko Open Innovation Lab長、DeFiテクノロジー部長)
- 顧問:河合健氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナー)
- 顧問:増島雅和氏(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 パートナー)
- 顧問:佐野史明氏(片岡総合法律事務所 パートナー)
- 顧問:白石陽介氏(MZ Web3 Fund General Partner)
今後は幹事や顧問などの運営メンバーをさらに募集し、運営体制の機能拡充を図る予定としています。
ポイント
- JCBAが新たにウォレット・AI部会を設立し、ノンカストディアルウォレットやAI統合ウォレットの自主基準策定や政策提言に向けた活動を開始しました。
- 暗号資産制度が金融商品取引法への規制移管など大きな転換点を迎える中、オンチェーンサービスとユーザーをつなぐウォレットの安全性確保やルール整備が求められています。
- 部会にはウォレット事業者や法律事務所など37社・51名が参加し、HashPortの吉田世博氏が部会長に就任しました。AIエージェントによる取引提案の責任分界やDEX接続UIの位置付けなど、実務と規制の両面から具体的なテーマを検討する点で注目されます。