SECが偽の暗号資産取引所ナノビットを巡る詐欺訴訟で勝訴、関係者に約8.8億円の支払い命令

米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産プラットフォーム「ナノビット・リミテッド」を巡る詐欺訴訟で勝訴し、ニューヨーク東部地区連邦地方裁判所は関係者に対し合計約8.8億円の支払いを命じる最終判決を下しました。この事件は、SNSやメッセージアプリを通じて投資家と親密な関係を築き、偽のプラットフォームへ資金を誘導する「関係構築型投資詐欺(relationship investment scam)」と呼ばれる手法に対するSECの法執行の一環とされています。トランプ政権下でも暗号資産関連の詐欺摘発が厳格に継続されていることを示す象徴的な事例として、Web3業界のビジネスパーソンにとっても注目すべき動向と言えます。

巧妙化する関係構築型詐欺の手法とナノビットの虚偽説明

SECが偽の暗号資産取引所ナノビットを巡る詐欺訴訟で勝訴、関係者に約8.8億円の支払い命令

ナノビットの運営者らは、SNSやメッセージアプリを活用して、極めて組織的かつ巧妙な手法で投資家から資金をだまし取っていました。

具体的には、まずインスタグラムなどのSNSでターゲットを勧誘し、その後ワッツアップ(WhatsApp)のグループに誘導していました。グループ内では金融の専門家になりすまして投資家との信頼関係を構築し、偽の暗号資産取引プラットフォームであるナノビットへ資金を入金させていました。

投資家を信用させるため、関連会社であるナノビットUSセキュリティーズがSEC登録ブローカーであるという虚偽の説明を行っていたほか、高いリターンを約束する偽のICO(イニシャル・コイン・オファリング。新規暗号資産公開による資金調達)を売り文句にしていたとされています。

プラットフォーム上では取引が一切行われていなかったにもかかわらず、利益が膨らんでいるかのように見せかけた偽のダッシュボードを画面上に表示し、資金が順調に増えているという幻影を演出していました。実際には、投資家の資金は運営関係者に流れており、200万ドル(約3.3億円)超が香港の銀行口座へ送金され、数十万ドル規模の暗号資産も横領されていました。投資家が出金を求めると、さまざまな言い訳とともに多額の手数料の支払いを要求され、プラットフォームの正当性に疑問を呈しただけでグループから排除される事態も発生していました。

裁判所による約8.8億円の支払い命令と判決内容

ニューヨーク東部地区連邦地方裁判所は2026年6月16日、ナノビット詐欺事件に関与した4法人と2個人に対し、米国証券法に違反したと認定する最終判決を下しました。被告らには今後、証券の発行、購入、販売に関与することを禁じる恒久的差止命令が出されています。

金銭的な支払い命令の詳細は以下の通りです。

ナノビット・リミテッドには、118万ドル(約1.9億円)の民事制裁金に加え、不正利得の返還として53万2000ドル超(約8653万円)、さらに判決前利息として約8万1200ドル(約1321万円)の支払いが命じられました。合計額は約180万ドル(約2.9億円)にのぼります。

また、ナノビットの関連先であるラディアント・ホライズンズ、スウィート・カルマ、ジャオ・デリの3社には、それぞれ118万ドル(約1.9億円)の制裁金が科されました。

さらに、スキームの主要な首謀者の1人とされるジャジエ・リウには、制裁金、不正利得返還、判決前利息を合わせて約12万ドル(約1952万円)の支払いが命じられました。

これら被告らに対する支払い命令の総額は、日本円で約8.8億円に達します。

SECの規制方針と相次ぐ暗号資産関連の詐欺摘発

この事件は、トランプ政権下においてもSECが暗号資産市場における悪質な詐欺行為の摘発を精力的に続けていることを示しています。一方でSECは、暗号資産企業に対する規制姿勢をやや緩和し、何が証券の募集に該当するかについての見直しも進めているとされています。

しかし、詐欺的な投資勧誘に対する姿勢は依然として厳しく、近年も以下のような摘発事例が相次いでいます。

2026年5月29日には、AI(人工知能)搭載の取引ボットで保証付きのリターンを生み出すと偽り、約150人の投資家から1200万ドル超(約19.5億円)を集めたとしてテキサス州の男性を提訴しました。

さらに4月には、暗号資産トークン「ビットコイン・ラティナム」に関する虚偽説明で、数百人の投資家から約1600万ドル(約26.0億円)を集めたとして、業界幹部のドナルド・バジル氏と支配下の2社を提訴しています。

このように、投資家保護に向けた法執行は多方面で活発に行われています。

ポイント

  • SECは偽の暗号資産取引所ナノビットを巡る訴訟で勝訴し、関係者に合計約8.8億円の支払いを命じる判決が下されました。
  • 詐欺の手法は、SNSやメッセージアプリで専門家を装って信頼関係を築き、偽の取引所に資金を誘導する関係構築型詐欺であり、プラットフォーム上での実際の取引は行われていませんでした。
  • ナノビット側は、関連会社がSEC登録ブローカーであるという虚偽の説明や、偽のICO、操作されたダッシュボードなどを用いて投資家を信用させていました。
  • この判決は、SECが暗号資産関連の詐欺摘発を精力的に継続している姿勢を象徴しており、投資家保護と市場の健全化に向けた重要な事例として注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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