アジアにおける暗号資産規制の厳格化と金融インフラへの統合の動き

アジア地域において、暗号資産に対する規制整備と消費者保護の動きが急速に強まっています。一方で、大手金融機関や事業者によるM&A、ステーブルコインを用いた決済ネットワークの構築、資本市場へのトークン証券の組み込みなど、デジタル資産を実社会の金融インフラへと統合する試みも本格化しています。規制による市場の健全化と、技術の社会実装が同時に進行する現在の状況は、Web3業界のビジネスパーソンにとって今後の事業戦略を左右する重要な局面といえます。

アジア各国における規制の厳格化と消費者保護の潮流

アジアにおける暗号資産規制の厳格化と金融インフラへの統合の動き

アジアの主要国では、暗号資産に関連するリスクへの対策や消費者保護、個人情報管理を徹底するための規制強化が相次いでいます。

シンガポール金融管理局(MAS)は、分散型永久先物取引所(あらかじめ定められた期日なしに将来の価格を予想して取引を行う分散型の仕組み)であるハイパーリキッドを投資家警告リストに追加しました [1]。このリストは、MASから認可を受けていると誤解される恐れのある事業者を示す消費者保護のためのもので、すでにバイビットやクーコイン、ビットゲットなども掲載されています [1]。

インドネシアでは、SNS上で暗号資産などのデジタル金融資産を推奨するインフルエンサーに対し、能力認証の取得を義務付ける新制度が導入されました [1]。インフルエンサーが宣伝できるのはライセンス取得済みの事業者が扱う認可された資産に限定され、宣伝内容の責任は金融サービス事業者が負うことになります [1]。

韓国では、暗号資産取引所のビッサムが、テザー(USDT)の注文板共有などの過程で、利用者の同意を得ずに個人情報を海外の取引所に移転していたとして、個人情報保護委員会から約2,211万円の制裁金を科されました [1]。また、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、デジタル資産事業者に対するライセンス申請の猶予期間を9月30日まで延長し、規制への適応を促しています [1]。

国内最大規模の取引所誕生とステーブルコインによる決済革新

規制の厳格化が進む一方で、大手金融機関や事業者による事業拡大や、ステーブルコイン(法定通貨などと価値が連動するように設計された暗号資産)を実務決済に活用する取り組みが具体化しています。

日本のSBIホールディングスは、暗号資産取引所のビットバンクを約467億円で完全子会社化する契約を締結しました [1]。規制当局の承認を前提として10月ごろの取引完了を目指しており、実現すればグループ全体の預かり資産は約1.1兆円、口座数は約292万口座に達し、日本最大の暗号資産取引所が誕生する見通しです [1]。これにより、ステーブルコインやトークン化資産(ブロックチェーン技術を用いてデジタル化された資産)を展開するための新たな販売チャネルが確保される可能性があります [1]。

さらに、ステーブルコイン発行企業のサークルと野村は、日本企業向けに即時の外国為替(FX)決済を可能にする提携を行いました [1]。早ければ2027年にもサービスが開始される見込みで、企業は国際決済において円をドル建てステーブルコインに交換し、銀行の営業時間や時差に左右されない即時決済が可能になります [1]。

国際的な決済網の開発も進んでおり、チェーンリンクは、韓国のコンソーシアムであるユニファイド・コリア・アライアンス(UniKA)や欧州のステーブルコイン連合キバリスなどとともに、プロジェクト・パンゲアを発表しました。このプロジェクトは、ユーロ建ておよび韓国ウォン建てステーブルコインを直接かつ同時に決済するアトミックスワップ(第三者を介さずに異なるチェーン上の資産を安全に同時交換する技術)を検証するもので、従来の決済遅延を解消するホールセール(金融機関間)金融インフラとしての活用が期待されています。

韓国の資本市場改革におけるトークン証券の組み込み

韓国では、国内資本市場のデジタル化と効率化に向けた動きも本格化しています。

韓国金融委員会(FSC)は、国内資本市場の大規模な改革構想の中にトークン証券(ブロックチェーン技術を用いて発行される証券)のインフラを組み込みました [1]。この改革には、決済期間の短縮や取引時間の延長などが含まれており、証券決済サイクルの短縮に向けたロードマップは10月までに示される見通しです [1]。また、韓国預託決済院(KSD)は、2026年末までに非上場株式や分割投資商品の店頭取引を決済するためのシステムを整備する計画を進めています [1]。

ポイント

  • アジア地域では、シンガポールやインドネシア、韓国などを中心に、消費者保護や個人情報の管理、インフルエンサーの認証制度導入など、暗号資産市場の健全化に向けた規制強化が急速に進んでいます。
  • SBIホールディングスによるビットバンクの買収は、国内市場における事業基盤の拡大にとどまらず、ステーブルコインやトークン化資産の社会実装に向けた販売チャネルの強化につながる可能性がある点で注目されます。
  • サークルと野村の提携や、チェーンリンクが参加するプロジェクト・パンゲアの始動は、ステーブルコインが個人向け取引を超えて、企業間や金融機関間の実用的な外国為替決済インフラとして活用され始める兆候を示している点で重要です。
  • 韓国における資本市場改革へのトークン証券インフラの組み込みは、伝統的な証券決済プロセスをデジタル技術によって高度化・効率化する具体的なロードマップとして注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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