米国において、暗号資産(仮想通貨)ATMに対する規制の波が急速に広がっています。2026年7月1日、テネシー州では暗号資産ATMの設置・運用が全面的に禁止され、ジョージア州では送金制限や警告表示などの厳しい運用規制が導入されました。また、ミネソタ州でも8月1日からの全面禁止が予定されています。これらの動きは、暗号資産ATMを悪用した詐欺被害の急増に対応するものであり、業界に多大な影響を与えています。
州ごとに分かれる規制アプローチ:全面禁止のテネシー州と制限導入のジョージア州
2026年7月1日、米国テネシー州とジョージア州において、暗号資産ATM(キオスク)を対象とした新たな法律が施行されました。
テネシー州では、ビル・リー知事が4月に署名した法律に基づき、州内における暗号資産ATMの設置、運用、およびホスティングが全面的に禁止されました。施行前には州内で185台の暗号資産ATMが稼働していましたが、これらはすべて撤去の対象となり、違反した場合は軽罪(Class A misdemeanor)として処罰の対象となるとされています。
一方でジョージア州は、全面禁止ではなく厳しい消費者保護ルールの導入という異なるアプローチを採用しました。新たな規制により、ATMオペレーターは新規および既存ユーザーに対する送金金額に上限を設けることが義務付けられました。さらに、取引前の詐欺警告の表示や、特定の詐欺被害に対する返金義務などが課されていると報じられています。
全米に波及する暗号資産ATMへの包囲網
こうした暗号資産ATMへの規制強化は、テネシー州やジョージア州に留まりません。
米国ではすでに、2026年3月にインディアナ州が全州規模での暗号資産ATMの禁止措置を施行しています。また、ミネソタ州でも2026年8月1日から公共の暗号資産ATMの運用が全面的に禁止される予定であり、既存の機器は2026年末までにすべて撤去することが求められているとされています。さらに、デラウェア州やニュージャージー州でも、同様の全面禁止に向けた法案が提出され、審議が進められていると報告されています。
規制強化の背景にある詐欺被害の深刻化と業界への影響
各州がこのような厳しい措置に踏み切る背景には、暗号資産ATMを悪用した詐欺被害の急増があります。
暗号資産ATMは、現金から暗号資産への即時変換が可能であるという利便性を持つ一方で、そのスピードとアクセスの容易さが詐欺グループに悪用されてきました。特に高齢者をターゲットに、公的機関などを装ってATMへ誘導し、追跡の難しい暗号資産を送信させる手口が深刻化しています。FBI(連邦捜査局)のデータによると、2025年だけで暗号資産キオスクに関する苦情が13460件寄せられており、被害額の拡大が自治体や州政府の迅速な対応を促す要因となっています。
この規制強化は、暗号資産ATMを運営するビジネスモデルに直撃しています。2026年5月には、業界大手のATMオペレーターであるBitcoin Depotが、厳しい規制環境や訴訟負担を理由に、連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請したとされています。専門家は、消費者保護基準の厳格化や手数料の圧縮、オペレーターの詐欺対策への賠償責任の増大により、今後数年間で業界全体にさらなる再編の圧力がかかる可能性があると指摘しています。
ポイント
- テネシー州とジョージア州で2026年7月1日から暗号資産ATMへの新規制が施行され、テネシー州では全面禁止、ジョージア州では厳格な運用制限が導入されました。
- ミネソタ州でも2026年8月1日より公共の暗号資産ATMが全面禁止される予定であり、全米で同様の規制強化の動きが加速しています。
- 規制の背景には、現金から暗号資産へ即時換金できる利便性を悪用した、高齢者などを狙う詐欺被害の急増があります。
- 規制強化とコンプライアンスコストの増大により、大手オペレーターのBitcoin Depotが倒産申請を行うなど、暗号資産ATM業界はビジネスモデルの転換や再編を迫られています。