イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)のコミュニティメンバーであるクリストフ・イェンチ氏が、ENS DAOを解散し、プロトコルを公共インフラに移行することを提案しました。この提案は、ENSの共同創設者であるニック・ジョンソン氏が、プロトコルのアクティブな投票権の約半分を行使してセキュリティカウンシルの更新を阻止した翌日に行われました。一部のコミュニティメンバーからは、特定の組織によるDAOの支配に対する懸念が示されています。Web3の意思決定プロセスや分散型ガバナンスのあり方を問い直す事例として、業界内で注目を集めています。
共同創設者によるガバナンス権限行使と支配への懸念
ENSの共同創設者であるニック・ジョンソン氏は、DAOのセキュリティカウンシル(ガバナンス提案を一時的に取り消すなどの権限を持つ組織)の更新を阻止するオンチェーン投票において、プロトコルのアクティブな投票権の約半分に相当する票を投じて否決しました。また、これに先立つ約2週間前にも、ジョンソン氏は自身に投票権を委任し、ENS財団による財務管理権限を拡大する別の提案を支持していました。
これに対し、ENSのデリゲートであるspengrah.eth氏などは、開発母体であるENS Labsが創設者を通じてDAOの運営、財務、セキュリティカウンシルのすべてを同時に支配しようとしていると指摘し、ガバナンスが事実上「乗っ取られた」状態にあるとの懸念を表明しています。
クリストフ・イェンチ氏によるDAO解散と公共インフラ化の提案
この状況を受けて、2016年の「The DAO」のコードを執筆し、現在はスタートアップ投資プラットフォームのTokenize.itを運営するクリストフ・イェンチ氏が、ENS DAOの解散を提案しました。イェンチ氏はENSのガバナンスにおいて公式な役職を持っていませんが、SNS上で「ENS DAOは機能不全に陥っている」と指摘しました。
同氏の提案では、ENS DAOを段階的に縮小し、スマートコントラクトのアップグレード権限を取り消すことが求められています。具体的には、ENSv2 Universal Routerの管理キーを破棄(バーン)して0x00のアドレスに設定し、残された資金を分配することで、ENSを特定の組織に依存しない真の公共インフラへと正式に転換すべきだとしています。
技術的・組織的な背景と業界への影響
ENS(イーサリアム・ネーム・サービス)は、複雑な暗号資産ウォレットのアドレスを人間が読みやすい文字列に変換する分散型ドメインサービスです。2021年に管理権限がDAOに移行して以来、ENSトークン保有者によるガバナンスが行われてきました。
しかし、今回の事態は、トークン投票による意思決定プロセスにおいて、特定の創設者や初期開発メンバーが圧倒的な投票パワーを保持しているという、Web3プロジェクトにおける中央集権化の課題を浮き彫りにしています。DAOが本来目指すべき分散型の意思決定と、効率的な運用のバランスをどのように取るべきかという議論が、今回の提案を通じて改めて活発化しています。
ポイント
- ENSの共同創設者であるニック・ジョンソン氏が、アクティブな投票権の約半分を行使してセキュリティカウンシルの更新を否決しました。
- 投票権の集中に対し、一部のデリゲートからDAOのガバナンスが特定の開発組織に掌握されているとの懸念が寄せられています。
- 2016年の「The DAO」のコード作成者であるクリストフ・イェンチ氏が、ENS DAOを解散し、管理キーの破棄や残余資金の分配を通じてENSを公共インフラ化することを提案しました。
- 特定の個人や組織による投票権の集中とガバナンスの形骸化は、Web3プロジェクトが抱える分散化の課題を示す事例として注目されます。