イーサリアムのレイヤー2ブロックチェーンであるStarknetを開発するスタークウェアは、2026年6月30日にポスト量子対応に向けた3段階のロードマップを公開しました。この計画は、量子コンピューターによる暗号解読リスクが現実化する前に、Starknetをエンドツーエンドでポスト量子対応にすることを目指すものです。Starknetは設計段階から移行しやすい構造を備えており、数カ月規模で進められる初期段階を経て、最終的にはイーサリアム側の対応に合わせて移行を完了させる方針です。
量子コンピューターの脅威とStarknetの構造的優位性
量子コンピューターの性能向上に伴い、現在多くのブロックチェーンで利用されている楕円曲線暗号が将来的に解読されるリスクが指摘されています。各国政府による量子コンピューター企業への投資や、Googleなどの大手企業によるロードマップの提示、米ホワイトハウスによる大統領令の公表などを背景に、量子耐性への対応は「いつ移行するか」という実用化の段階に入っているとされています。
このような状況において、Starknetは設計段階からポスト量子対応へ移行しやすい構造を備えている点が特徴です。Starknetで取引の正当性を証明する技術であるSTARK(ゼロ知識証明の一種)は、量子コンピューターでも解読が困難とされるハッシュベース暗号を採用しており、その証明システムは設計上ポスト量子耐性を備えています。さらに、Starknetはアカウント抽象化(ウォレットの認証方式を柔軟に変更できる機能)を標準で備えているため、既存のウォレットからポスト量子対応ウォレットへの移行をプロトコルの変更なしに実現できると説明されています。
3段階で進められる移行プロセスと今後のスケジュール
スタークウェアが発表したロードマップは、以下の3段階で構成されています。
第1段階では、現在利用されている暗号アルゴリズムであるペダーセンハッシュを、量子耐性を持つとされるブレイク2(BLAKE2)へと置き換えます。これにはネットワーク設定ハッシュやコントラクトアドレス生成、ステートコミットメントでの利用が含まれます。また、Falcon-512などのポスト量子対応署名をコンセンサス署名に導入し、新しく展開されるスマートコントラクトを標準でポスト量子対応にすることを目指します。この段階は開始から約2カ月で完了する見込みとされています。
第2段階では、既存のスマートコントラクトを開発者が大規模な改修やデータ移行を行うことなくポスト量子対応へと移行できるよう、スタークウェアが移行ツールを提供します。この段階は、第1段階の完了から約1カ月での実装が見込まれています。
第3段階では、イーサリアムに依存する部分の対応を進めます。レイヤー1とのブリッジ機能やデータ可用性など、Starknet単独では変更できない領域については、イーサリアム側のポスト量子対応の進捗に合わせて移行を進める方針です。
スタークウェアの共同創業者兼CEOであるイーライ・ベン=サッソン氏は、このロードマップが将来の脅威に対してStarknetを安全な資産保管場所とするための道筋であると述べており、適切な暗号技術の採用によって他のブロックチェーンでも同様の対応が可能であるとの考えを示しています。
ポイント
- 量子コンピューターによる暗号解読リスクに備え、Q-Day前の完全なポスト量子対応を目指す具体的なロードマップが示された点
- Starknetが採用するSTARK証明や標準搭載のアカウント抽象化により、プロトコル変更を伴わないスムーズな移行が可能である点
- 既存のスマートコントラクトを保護するため、開発者に負担をかけない移行ツールが第2段階で計画されている点
- 最終的な移行完了は、イーサリアム側のポスト量子対応の進捗状況に依存する点