米国の予測市場プラットフォームであるカルシ(Kalshi)とマサチューセッツ州当局との法廷闘争において、州側による新たな修正訴状の提出が認められました。修正訴状では、同社がSNSや大学キャンパスでのプロモーション活動を通じて、21歳未満の若年層を標的にスポーツ賭博に類似した取引を促していたとする主張が追加されています。この裁判は、予測市場の規制権限が連邦機関である米商品先物取引委員会(CFTC)と州政府のどちらにあるのかという、業界の今後のあり方を左右する重要な管轄権争いとして注目されています。
若年層への宣伝活動とスポーツ賭博該当性をめぐる新たな追及
マサチューセッツ州サフォーク郡上級裁判所のピーター・クラップ陪席判事は、2026年6月30日に州当局が提出した71ページに及ぶ修正訴状を認めました。この修正訴状により、カルシが州法に違反してスポーツ賭博を行っていたとする従来の訴えに加え、新たな主張が積み増されることになりました。
新たな訴状では、カルシが21歳未満の若者を標的にしており、彼らがプラットフォームを利用するのを防ぐ取り組みをほとんど行っていないと指摘されています。州当局は、大学キャンパスを対象としたマーケティング活動や、広告に21歳未満に見える人物の画像を使用していることをその根拠として挙げています。
マサチューセッツ州司法長官のアンドレア・ジョイ・キャンベル氏は2025年9月、カルシを相手取って訴訟を起こしました。州側は、オンラインスポーツ賭博に関する州法を順守するためには、カルシがマサチューセッツ州ゲーミング委員会のライセンスを取得する必要があると主張しています。2026年1月には、裁判所が仮差し止め命令を認め、審理が続いている間、カルシがスポーツ関連のイベント契約(将来の特定の出来事の結果に連動して取引される契約)を提供することを禁じていました。
連邦と州の管轄権争い CFTCは排他的管轄権を主張
カルシやポリマーケット(Polymarket)をはじめとする予測市場企業は、スポーツ、政治、時事問題など、さまざまな結果に連動するイベント契約をユーザーが取引できる仕組みを提供しています。
一部の法域では、カルシによるスポーツ賭博の提供が禁じられていますが、同社は連邦機関であるCFTCの規制下にあると主張しています。CFTCは2026年4月に本訴訟に関する意見書を提出し、予測市場については同機関が排他的管轄権を持つとの立場を示しました。
CFTCのマイケル・セリグ委員長は、こうしたプラットフォーム上のイベント契約は商品取引所法の対象となるスワップ(デリバティブ取引の一種)に該当し、州の規制対象ではないと述べています。セリグ委員長は、議会が予測市場を含む商品デリバティブ市場を規制する唯一の権限をCFTCに委ねていることを強調し、連邦法を無効化して権限を奪おうとする州に対して法廷で争う姿勢を示しています。
法制化による明確な線引きを求めるゲーミング団体の動き
予測市場プラットフォームと州当局との管轄権をめぐる争いは、いずれ最高裁判所まで持ち込まれる可能性も取り沙汰されていますが、司法の判断を待たずに議会によるルール策定を求める動きも出ています。
全米のゲーミング団体、先住民部族系団体、労働団体は、米上院議員らに対し、審理中のデジタル資産市場明確化法案(CLARITY法案)において、スポーツおよびカジノ型ゲーミングに結びつくイベント契約を明確に禁止する文言を追加するよう要請しました。
CLARITY法案は、CFTCにデジタル資産をめぐるより大きな規制権限を与えるものになると見込まれています。業界団体などは、この法案を通じて予測市場の提供できる範囲に明確な一線を画すことを目指しています。
ポイント
- マサチューセッツ州の裁判所は、カルシが21歳未満の若年層を標的にしていたとする州当局の修正訴状の提出を認めました。
- 州側はカルシの提供するイベント契約が実質的なスポーツ賭博に当たるとして、州ゲーミング委員会のライセンス取得を求めています。
- CFTCのマイケル・セリグ委員長は、予測市場は連邦法に基づくスワップ取引であり、CFTCが排他的な管轄権を持つとして州独自の規制に反対しています。
- ゲーミング団体などは、上院で審議中のCLARITY法案にスポーツやカジノ関連のイベント契約を禁止する文言を盛り込むよう求めており、法制化による境界線の明確化が模索されています。