欧州証券市場監督局(ESMA)は、欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)における移行期間が終了したことを受け、認可された暗号資産サービスプロバイダー(CASP)の登録名簿を更新しました。今回の更新では、大手金融機関のスタンダードチャータード銀行や暗号資産プライムブローカーのファルコンX(FalconX)など、新たに37社が追加されました。移行期間の終了に伴い、EU市場での事業継続には正式な認可が不可欠となる中、伝統的な金融機関の参入と規制への適応が加速しているとされています。
移行期間の終了と登録数の推移
EUにおけるMiCAの移行期間は2026年7月1日に終了しました。この移行期間は、それ以前からEU加盟国で活動していた暗号資産関連企業が、正式な認可手続きを進めながら暫定的に事業を継続できるように設けられた猶予期間でした。
この期限が過ぎたことにより、正式なMiCAライセンスを持たない事業者は、EU内での新規顧客の獲得を即座に停止し、秩序ある形で事業を縮小することが求められています。
ESMAが公開した最新の登録名簿によると、認可された暗号資産サービスプロバイダーの数は、2026年6月26日時点の243社から、今回の更新を経て280社へと増加しました。この急増は、移行期間の終了を前に各企業が認可取得を急いだ結果であるとみられます。
大手金融機関や暗号資産ネイティブ企業の認可取得
今回の追加リストには、伝統的な金融機関から暗号資産に特化した企業まで、多様な事業者が名を連ねています。
なかでも注目されるのは、大手国際金融グループであるスタンダードチャータード銀行の追加です。同行は2026年6月25日にルクセンブルクの金融規制当局からMiCA認可を取得しました。また、同時に電子マネー機関(EMI)ライセンスも取得したと発表されています。これにより、同行はEU全域で単一のライセンス(パスポート)に基づき、電子マネーの発行や決済サービス、デジタル資産のカストディ(保管・管理)などのサービスを展開することが可能になったとされています。
さらに、機関投資家向けの暗号資産プライムブローカーであるファルコンXは、移行期限直前にマルタの金融規制当局から認可を受け、リストに追加されました。このほか、デジタル資産銀行のシグナム・ヨーロッパ(Sygnum Europe)や、クレディ・アグリコルおよびサンタンデール銀行の資産サービス部門であるCACEISなどが新たに登録されています。
国別の認可状況と市場への影響
今回の更新における認可取得企業を国別にみると、キプロスが最も多い6社を記録しました。次いで、フランス、イタリア、マルタがそれぞれ5社、チェコとスペインがそれぞれ4社、ルクセンブルクが3社となっています。
移行期間が完全に終了したことで、EUにおける暗号資産ビジネスは個別国の暫定的な規制枠組みから、共通のMiCA規制に基づくライブ市場監督のフェーズへと本格的に移行したとされています。未認可の事業者が市場から排除される一方で、スタンダードチャータード銀行のような大手金融機関が強固な規制対応を進めて参入していることは、業界の信頼性向上や機関投資家によるデジタル資産の採用拡大につながる可能性があるとみられます。
ポイント
- 欧州証券市場監督局(ESMA)が、MiCAの移行期間が終了した2026年7月1日以降、初となる暗号資産サービスプロバイダー(CASP)の登録名簿を更新しました。
- 今回の更新で新たに37社が追加され、暫定登録リストに記載された認可取得企業の総数は243社から280社に増加しました。
- 大手金融機関のスタンダードチャータード銀行がルクセンブルクでMiCA認可とEMIライセンスを取得し、EU市場でのデジタル資産事業の拡大に向けた基盤を整えた点で注目されます。
- 移行期間の終了に伴い、認可を持たない事業者はEU内での新規顧客獲得の停止や事業縮小を求められるため、MiCAライセンスの取得は市場での事業継続において必須の要件となっています。
- 国別の認可取得数ではキプロスが最も多く、次いでフランスやイタリア、マルタなどが続くなど、欧州各国の規制当局での認可プロセスが進んでいることが示されています。