金融分野に特化した新興のレイヤー1ブロックチェーン「Pharos(ファロス)」が、日本の低金利環境を活かした独自の現実資産(RWA)戦略を展開しています。同プロジェクトは、住友商事の子会社を含む投資家から4400万ドルの資金調達を完了し、2026年4月にメインネットを稼働させました。日本の低金利による資金調達コストの低さと、新興国の高利回りなRWA商品を組み合わせることで、新たな利ざや(スプレッド)を生み出すモデルを提示しています。伝統金融とWeb3を融合させるこの取り組みは、日本の金融プレイヤーにとっても新たなビジネス機会を提供する可能性があり、注目を集めています。
既存ブロックチェーンの課題を解決する金融特化型インフラの構築
Pharosは、従来のレイヤー1ブロックチェーンにおける現実資産(RWA)トークン化の課題を解決することを目指しています。最高戦略責任者(CSO)のデビット・ダイ氏によると、既存のチェーンには主に3つの障壁が存在します。1つ目は、一般の金融ユーザーにとってセルフカストディウォレット(自身で秘密鍵を管理するウォレット)の作成やDeFi(分散型金融)の操作が難しいという参入障壁です。2つ目は、投機的資金が多く、伝統金融で一般的な「リスク調整後リターン」の考え方やリスク管理が不足している点です。3つ目は、実体がオフチェーン(ブロックチェーン外)にあるRWAのデータが不透明になりがちで、リアルタイムの状況把握が困難であるという課題です。
Pharosはこれらの課題をL1レベルのインフラから解決し、単に資産をオンチェーン化するだけでなく、二次市場での取引やレンディング(貸借)など、実際に金融市場で機能し流通するユースケースを構築しています。なお、開発チームには中国の決済サービス「アリペイ」を運営するアントグループの出身者が参画しており、大規模な決済インフラ設計の経験が活かされています。
日本の低金利環境と新興国RWAを組み合わせる「スプレッド戦略」
Pharosが日本市場に注目する最大の理由は、他国にない極めて低い資金調達コストにあります。日本国内では2〜3%という低金利で資金(日本円)を調達することが可能です。この環境において、日本円建てのステーブルコイン(JPYSCなど)を組み合わせることで、独自の「スプレッド(利ざや)戦略」を展開できるとされています。
具体的には、低コストで調達した日本円を、Pharos上で提供されるタイやメキシコなどの個人向け小口ローンを裏付けとしたRWA運用商品「APC(Axil Prime Credit)」で運用します。APCは目標年間利回り約14%を掲げており、このモデルを活用することで、ボラティリティ(価格変動)を抑えながら数%規模のスプレッドを得られる可能性があるとされています。現在、SBIホールディングスをはじめとする日本の主要金融プレイヤーと、日本円建てステーブルコインの活用について具体的な対話が進められています。
AIエージェントの活用と日本不動産のオンチェーン化
Pharosは、中長期的にデジタル資産を動かすメインユーザーが人間ではなく「AIエージェント」になると確信しており、これを制御する独自のプログラムを開発しています。金融取引において「AIに何をさせてはいけないか」を定義し、行動のコントロールや損失防止、責任の所在の明確化をチェーンの基本インフラとして組み込んでいます。
また、日本市場における具体的なロードマップとして、優良な日本の不動産アセットのRWA化を視野に入れています。銀座周辺の稼働率95%〜100%の高級ホテルや、北海道のスキーリゾートなどは海外投資家にとって魅力的なアセットですが、日本円での資金調達や為替リスクが障壁となっています。Pharosは日本のパートナー企業や不動産会社とも対話を進めており、こうした優良アセットをオンチェーンで活用し、海外投資家がアクセスしやすい投資の仕組みを構築することを目指しています。
ポイント
- 住友商事の子会社が出資する金融特化型L1のPharosは、既存のブロックチェーンが抱えるユーザー参入障壁やリスク管理、データの不透明性といった課題の解決を目指しています。
- 日本の約2〜3%という極めて低い金利環境を逆手に取り、日本円建てステーブルコインと新興国の個人向けローンを裏付けとした高利回りRWA商品を組み合わせることで、安定したスプレッド(利ざや)を得る戦略を提示しています。
- 実際に金融市場で流通するユースケースの構築に特化しており、SBIホールディングスなどの主要金融プレイヤーとステーブルコインの活用に向けた具体的な対話を進めている点で注目されます。
- 将来的にデジタル資産の主要な取引主体になると見込まれる「AIエージェント」の行動制御やリスク管理プログラムを、チェーンの基本インフラとして組み込んでいる点が特徴的です。
- 銀座の高級ホテルや北海道のスキーリゾートといった日本の優良な不動産アセットをオンチェーン化し、海外投資家がアクセスしやすい環境を整える計画を進めています。