イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、2026年5月24日、イーサリアム財団における自身の権限や影響力が今後も縮小し続ける見通しであることを示唆しました。この表明は、同財団がETHの売却を抑制し、組織をスリム化して「広さよりも持続性」を重視する方針に舵を切る中で行われたものです。財団は、検閲耐性やプライバシーなどを定義した「CROPS」フレームワークを中核に据え、長期的な存続を目指すとしています。この決定は、2026年に入ってから財団内で相次いでいる主要開発者らの離脱や組織再編の動きに対応したものであり、イーサリアムの分散化をさらに推し進める重要なステップとして注目されます。
権限の縮小と組織のスリム化を目指す意思表明
ブテリン氏は自身のX(旧Twitter)アカウントへの長文の投稿を通じて、イーサリアム財団の今後の方向性と自身の役割について言及しました。同氏によると、財団における自身の権限や影響力は今後も減少し続ける見通しであり、これは自身が望んでいることであると強調しています。
また、実務的な組織移行プロセスの大部分は、2026年初頭に Tomasz Stanczak 氏から引き継いだ暫定共同エグゼクティブ・ディレクターの Bastian Aue 氏が実行していると説明しました。財団の理事会は現在、メンバーの拡大プロセスにあるとされています。
ブテリン氏は今後の財団について「以前よりも小さな船になるが、より長く存続するものになる」と表現し、今後数ヶ月の間に新たな長期的な組織体制が安定する見込みであると述べています。
背景にある研究者らの相次ぐ離脱と「EF Mandate」
今回の表明は、2026年に入りイーサリアム財団から主要な研究者や開発者が相次いで離脱していること、およびそれに伴うコミュニティからの批判に対応する形で行われました。
2026年には、すでに以下のような中心的なメンバーの離脱や休職が明らかになっています。
- 2026年2月:共同エグゼクティブ・ディレクターの Tomasz Stanczak 氏が辞任。
- 2026年4月:Josh Stark 氏、Trent Van Epps 氏が離脱。
- 2026年5月:レイヤー1(ブロックチェーンの基本となるメインチェーン)設計を担うプロトコル・クラスターの共同リードである Barnabe Monnot 氏と Tim Beiko 氏、コンセンサス(合意形成)メカニズム研究者の Carl Beekhuizen 氏、暗号経済学研究者の Julian Ma 氏らが離脱。また、Alex Stokes 氏が長期休暇に入っています。
これらの離脱の背景には、2026年3月に財団が発表した新たなガバナンス文書「EF Mandate(イーサリアム財団の使命)」の存在があるとされています。この文書は、財団の役割を「支配者ではなく、一介の管理者」に限定し、財団が消滅してもプロトコルが稼働し続けられるかを示す「ウォークアウェイ・テスト」を重視する姿勢を明確にしました。一方で、このマニフェストへの署名を職員に求めたことなどが、一部の内部摩擦を招いたと報じられています。
「CROPS」フレームワークへの集中とビジネスへの影響
イーサリアム財団は今後、ETHの売却ペースを抑えつつ、活動の焦点を「CROPS」と呼ばれる4つの非妥協的なプロトコル原則に絞り込むとしています。CROPSとは、以下の頭文字を取ったものです。
- Censorship resistance(検閲耐性:外部の圧力に関わらず取引が不変であること)
- Open source(オープンソース)
- Privacy(プライバシー)
- Security(セキュリティ)
ブテリン氏は、ユーザーの自己主権やプライバシー、セキュリティを最優先するユーザー体験の開発といった取り組みに財団が特化すべきであり、一般的な普及推進活動はエコシステム外部のプレイヤーに委ねるべきであるとの見解を示しました。
Web3業界のビジネスパーソンにとって、この方針転換はイーサリアムが単なる規模の拡大を追うのではなく、分散化と自己主権を徹底する「聖域技術」としての堅牢性を強化していく姿勢を示しています。創設者の影響力低下と財団のスリム化は、ネットワークの真の分散化に向けた重要なステップと評価される可能性があります。
ポイント
- 創設者の影響力縮小:ヴィタリック・ブテリン氏は、イーサリアム財団における自身の権限が今後も減少し続ける見通しであることを示し、自身の望む方向性であると述べました。
- 組織の「スリム化」とETH売却抑制:イーサリアム財団は「広さよりも持続性」を重視し、組織規模を縮小するとともに、ETHの売却を減らす方針を選択しています。
- 相次ぐ開発者の離脱への対応:2026年に入り、財団から少なくとも8名の主要な開発者・研究者が離脱しており、今回の表明はこれらの混乱や批判に対応する形で行われました。
- 「CROPS」原則の徹底:検閲耐性、オープンソース、プライバシー、セキュリティを最優先事項として位置づけ、財団がなくても存続できる「ウォークアウェイ・テスト」のクリアを目指します。
- 業界への意義:イーサリアムが特定の組織や個人に依存しない真の分散型インフラへと移行するプロセスの一環であり、長期的な信頼性を高める動きとして注目されます。