ECB、ユーロ建てステーブルコイン拡大案に慎重姿勢を示し反発

欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ建てステーブルコインの発行拡大を促す提案に対し、金融安定や金融政策運営へのリスクが大きいとして慎重な姿勢を示しました。この提案は経済シンクタンクのBruegel(ブリューゲル)が提示したもので、ドル建てステーブルコインの支配に対抗することを目的としていました。しかし、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁を含む中央銀行関係者は、銀行預金の流出や「最後の貸手機能」の適用範囲などを巡り、強い懸念と反発を示しています。

ステーブルコイン拡大を促す「ブリューゲル提案」とその背景

ECB、ユーロ建てステーブルコイン拡大案に慎重姿勢を示し反発

ベルギーのブリュッセルを拠点とする経済シンクタンクであるBruegelは、キプロス・ニコシアで開催されたEU財務当局者の非公式会合において、ユーロ建てステーブルコインの発行拡大を促す提案を行いました。

現在、世界のステーブルコイン市場はドル建てトークンが大部分を占めており、ロイターの報道によると、ユーロ建てステーブルコインの供給量は全体のわずか0.3パーセントにとどまっています。Bruegelはこの状況に対抗するため、暗号資産発行体に対する流動性要件を緩和し、場合によってはECBの資金へのアクセスを認めることを提案しました。

Bruegelのエコノミストらは、EUのステーブルコイン規制が米国よりも厳格な場合、関連する活動が域外に流れ、デジタルドル化がさらに進行する懸念があると指摘しています。

ECBが示す強い警戒感と反発の理由

クリスティーヌ・ラガルド総裁をはじめとする中央銀行関係者は、Bruegelの提案に対して即座に反発しました。ECB側が懸念する主な要因は以下の通りです。

1. 銀行預金の流出と融資への影響

ステーブルコインの購入が進むと、購入者の資金は商業銀行の預金口座からステーブルコイン発行体の口座へと移動します。これが大規模に発生した場合、銀行にとって安定的な資金源である預金が流出し、資金調達コストの上昇を通じて銀行の融資活動を抑制する恐れがあると指摘されています。

2. 「最後の貸手機能」の適用制限

Bruegel案では、ECBがステーブルコイン企業に対して「最後の貸手機能」を提供することが盛り込まれていましたが、中央銀行関係者はこれに疑問を呈しました。最後の貸手機能とは、金融機関が一時的に資金不足に陥った際、中央銀行が流動性を供給する仕組みとされています。現在、この役割は厳格な規制下にある銀行部門のみを対象に提供されているため、ステーブルコイン企業への適用には否定的な見方を示しました。

なお、Bruegel側が指摘する「デジタルドル化」のリスクについて、会合に出席した中央銀行関係者らは、その懸念を過度に強調すべきではないとの見解を示しています。

代替案としての「トークン化された預金」とデジタルユーロの展望

ラガルド総裁はユーロ建てステーブルコインに対して懐疑的な見方を示す一方、代替案として「トークン化された商業銀行預金」を支持しています。これは、従来の銀行口座が持つ安全性と、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術が持つ迅速な決済やプログラム可能性を組み合わせた仕組みとされています。

さらに、ECBとEUの財務相らは、決済の自立性を高める取り組みの一環として、2029年の導入を目指している中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタルユーロ」の準備作業を継続する方針です。

ポイント

  • 経済シンクタンクのBruegelが、ドル建てトークンの支配に対抗するため、ユーロ建てステーブルコインの拡大案を提示しました。
  • ECBのラガルド総裁らは、銀行預金の流出による融資抑制や、金融安定へのリスクを理由にこの提案へ強く反発しました。
  • ステーブルコイン企業への「最後の貸手機能」の提供について、ECBは対象を銀行部門に限定すべきだとして否定的な見解を示しました。
  • ECBはユーロ建てステーブルコインの代わりに、信頼性と技術を両立する「トークン化された商業銀行預金」の活用や、2029年導入を目指す「デジタルユーロ」の開発を推進する方針です。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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