国際決済銀行がプロジェクト・アゴラの報告書を公表、トークン化による国境を越えた決済の有効性を実証

国際決済銀行(BIS)は2026年5月27日、国境を越えたホールセール決済の実験的プロトタイプ「プロジェクト・アゴラ(Project Agorá)」に関する報告書を発表しました。このプロジェクトは、トークン化された中央銀行準備預金と商業銀行預金を共有プラットフォーム上で組み合わせ、複数通貨にまたがる安全かつ効率的な決済の実現を目指す取り組みです。報告書では、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術(DLT)を用いることで、従来の国際決済における安全性を維持しつつ、長年の非効率性を解消できる可能性が実証されました。

トークン化とアトミック決済による国際決済リスクの低減

国際決済銀行がプロジェクト・アゴラの報告書を公表、トークン化による国境を越えた決済の有効性を実証

プロジェクト・アゴラのプロトタイプは、国境や通貨、法域をまたぐ取引において、すべての処理が「全成立か全不成立か」で完結するアトミック決済(原子的な決済)を、安全かつ最終性(ファイナリティ)をもって達成できることを示しました。

従来の国際送金は、複数の金融機関を中継するコルレス銀行網などの仕組みが前提となっており、送金指示から資金の確定までに時間差が生じることで、資金の滞留や決済失敗のリスクが課題とされてきました。今回の検証では、トークン化された中央銀行の準備金と民間銀行の預金を同一の共有プラットフォーム上で統合することにより、これらのリスクや非効率性を安全に解消できる可能性が示されています。

各国中央銀行の自律性とプライバシー保護を両立するアーキテクチャ

本プロジェクトで構築されたプロトタイプは、参加する各中央銀行が自国通貨に対する自律性や業務操作の自主性を維持しながら、相互運用が可能な「階層型アーキテクチャ」を採用している点が特徴です。

これにより、機密データを保護しながら規制への準拠をサポートする技術を用いて、プライバシー保護と法規制対応(マネーロンダリング防止やテロ資金供与対策など)の両立が図られています。また、将来的には、あらかじめ設定された特定の条件に基づいて自動的に決済が実行される「条件付き決済」や、24時間365日の稼働に対応する決済機能の実装も見込まれています。

官民連携の拡大と今後の実取引テストへの移行計画

プロジェクト・アゴラは、BISと国際金融協会(IIF)が主導する大規模な官民連携の実証プロジェクトです。これまで、日本銀行、イングランド銀行、ニューヨーク連邦準備銀行、フランス銀行(ユーロシステム代表)、韓国銀行、メキシコ銀行、スイス国民銀行の7つの主要中央銀行と、40を超える民間金融機関が参加してきました。

今回の報告書の発表に伴い、新たにカナダ銀行の参加が公表されました。BISは今後、理論やプロトタイプによる実験の段階から次のステップへ進み、特定の通貨や参加者を対象とした、実際の資金(リアルバリュー)を用いた実取引テストへと段階を進める方針を示しています。さらに、民間金融機関の追加参加も予定されています。

ポイント

  • トークン化された中央銀行準備預金と商業銀行預金を共有プラットフォーム上で組み合わせ、複数通貨にまたがる安全な決済が実証された点で注目されます。
  • 取引が全成立か全不成立かで完結するアトミック決済により、従来の国際決済における時間差や資金滞留のリスクを排除できる可能性が示されました。
  • 階層型アーキテクチャの採用により、各国中央銀行が自国通貨に対する自律性を維持しつつ、プライバシー保護や規制準拠を両立できる設計となっています。
  • 新たにカナダ銀行がプロジェクトに加わり、今後は実際の資金を用いた実取引テストへと移行する予定です。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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