日本の暗号資産税制改正と金商法移行の背景、国内ビットコインETF実現への論点を解説

2026年5月22日のビットコイン・ピザ・デーに合わせ、Tokyo Bitcoin Baseにてイベント「ビットコインピザデー 2026 by 楽天ウォレット」が開催されました。イベントでは、楽天ウォレットシニアアナリストの松田康生氏が登壇し、暗号資産を用いた決済の実演を行うとともに、今後の税制・規制の見直しや国内におけるビットコインETF(証券取引所に上場している投資信託)の可能性について解説しました。日本の暗号資産規制が金融商品取引法(金商法)へ移行する動きは、今後の市場構造や関連ビジネスに大きな影響を与える可能性があるとして注目されています。

税制改正と金融商品取引法への移行がもたらす変化

日本の暗号資産税制改正と金商法移行の背景、国内ビットコインETF実現への論点を解説

現在、個人の暗号資産取引で発生した所得は、原則として雑所得などとして総合課税の対象となっています。これに対し、令和8年度税制改正大綱では、金商法などの改正を前提に、一定の暗号資産取引について20%の申告分離課税(他の所得と分けて課税する方式)へ移行する方向性が示されました。

ただし、すべての暗号資産取引が一律に20%課税へ移行するわけではありません。対象は国内の登録業者を通じた一定の暗号資産の譲渡などが中心になる見通しであり、海外業者を利用した取引、DeFi(分散型金融)、国内未取扱銘柄、ステーキングやレンディングなどについては、今後の制度設計やガイドラインを確認する必要があります。また、税制上は3年間の損失繰越控除(ある年の損失を翌年以降の利益と相殺できる仕組み)も重要な論点となっています。

この見直しは単なる減税策にとどまらず、暗号資産をこれまでの資金決済法上の決済手段から、投資性のある商品として金商法上の規律に移すことを前提としています。金商法への移行により、発行体や交換業者による情報開示、インサイダー取引規制、不公正取引規制、市場監視などが整備され、投資家保護や市場の公正性が高まることが期待されます。一方で、暗号資産交換業者にとっては、金融商品取引業者としての登録や体制整備が求められる可能性があり、ビジネスモデルの再設計が必要になることも想定されます。

国内ビットコインETF実現に向けた課題と業界内の利害調整

日本が暗号資産の法的位置付けを金商法へ移行しようとする背景には、国内におけるビットコインETFの実現という本命の狙いがあると見られています。2024年に米国で現物ビットコインETFが承認されて以降、香港での上場や英国での上場投資証券(ETN)のアクセス解禁など、世界的に暗号資産市場を取り込む動きが進んでおり、日本でも自前でETFを組成できる制度環境の整備が急務となっています。

国内でビットコインETFを実現するためには、暗号資産を投資対象として位置付け、投資信託に組み入れられるようにする制度設計のほか、安全な保管(カストディ)を担う信託業界、販売を担う証券業界などの役割整理が必要です。

さらに、ETFの法整備だけが先行して20%の申告分離課税が適用され、現物の暗号資産取引が総合課税のまま放置された場合、投資家が税制面で有利なETFに流れ、国内の現物市場から資金が流出する懸念があります。そのため、ETFの実現と現物取引の税制見直しをセットで進めることで、ETF市場と現物市場のバランスを取る制度設計が進められていると見られます。

既存インフラを介したビットコインの日常決済実演

イベントの冒頭では、ビットコインが初めて商品購入に使われた記念日である「ビットコイン・ピザ・デー」にちなみ、日常決済での利用実演も行われました。

実演では、国内のピザ店が直接ビットコインを受け取るのではなく、楽天ウォレットに保有するビットコインを電子マネーの「楽天キャッシュ」にチャージし、その残高を用いて「楽天ペイ」で決済する手法が示されました。これにより、ビットコインを単に保有するだけでなく、既存の決済インフラを通じて日常の買い物に利用できる具体的な活用事例が紹介されました。

ポイント

  • 令和8年度税制改正大綱により、金商法改正を前提として、国内登録業者を通じた一定の暗号資産取引に20%の申告分離課税と3年間の損失繰越控除が導入される方向が示されました。
  • 税制改正と金商法への移行は、暗号資産を決済手段から投資性のある金融商品と位置付け直すものであり、投資家保護や市場の公正性を高める点で注目されます。
  • 国内でのビットコインETF実現に向けては、カストディ(保管)や販売規制などの制度設計に加え、現物市場からの資金流出を防ぐために現物取引の税制見直しも同時に進める必要があります。
  • ビットコインの日常利用においては、楽天キャッシュへのチャージを介して楽天ペイで決済を行うなど、既存の決済インフラを活用した実用的な仕組みが実演されました。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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