株式会社日立製作所をはじめとする9社は、円建てのトークン化預金「DCJPY」を活用し、企業間取引における受発注から決済、会計までの一連の業務プロセスを自動化する実証実験に成功したと発表しました。本実証では、日立が開発した共通基盤「インボイスチェーン」を通じて、商流データと金流データをブロックチェーン上でシームレスに連携させています。これにより、従来は手作業で行われていた経理・財務部門の業務負荷を大幅に軽減できる可能性が示されました。本実証はブロックチェーン技術を用いた企業間決済の効率化に向けた、重要な一歩として注目されます。
既存システムとブロックチェーンを繋ぐ「インボイスチェーン」の仕組み
本実証実験では、ディーカレットDCPが提供する円建てトークン化預金「DCJPY」が活用されました。DCJPYは、民間銀行を発行主体とする日本円と連動するデジタル通貨とされています。
日立が主要機能を開発した共通基盤「インボイスチェーン」は、ブロックチェーン技術を活用して企業間取引の受発注から会計業務をシームレスに完結させるプラットフォームとされています。このインボイスチェーンを通じて、商品の受発注処理に用いられる「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」と、DCJPYによる決済処理をブロックチェーン上で連携させました。流通BMSは、流通業に携わる企業が統一的に利用できる電子データ交換(EDI)の標準仕様とされています。
具体的な検証プロセスでは、ツルハグループの受発注システムから花王グループカスタマーマーケティング向けの受領・返品データを取得し、そのデータをもとに商取引トークンを生成しました。そして、生成されたトークンに基づいてDCJPYでの支払い処理を行い、支払い完了後には債権データとの照合に使う消込ファイルを自動生成しました。机上検証において、このファイルを用いた消込作業が問題なく実行できることも確認されています。
経理・財務部門の業務効率化とビジネスへのインパクト
一般的な企業間取引においては、受発注、請求、入金確認、消込、会計処理などがそれぞれ異なるシステムで管理されているケースが多く、経理や財務部門において手作業による確認や照合作業が大きな負担となっています。
今回の実証実験では、既存の受発注システムと債権管理システムをインボイスチェーンで繋ぐことにより、取引情報と決済情報の不整合を防ぎながら、処理の迅速化と自動化に繋げられることが確認されました。日立の発表によると、同基盤を活用することで、経理・財務部門において数人月分の業務負荷を軽減できる可能性があるとされています。
本実証は、ディーカレットDCPが事務局を務める「デジタル通貨フォーラム」のインボイスチェーン分科会を中心に、以下の9社が共同で実施しました。
- イオンスマートテクノロジー株式会社
- 株式会社池田泉州銀行
- 花王グループカスタマーマーケティング株式会社
- 株式会社サイバーリンクス
- 株式会社ツルハホールディングス
- 株式会社ディーカレットDCP
- 株式会社日立製作所
- 富士通株式会社
- 株式会社ミロク情報サービス
今後の展望:信頼性の高いデジタル基盤の構築へ
日立は今後、トークン化預金「DCJPY」を活用した企業間取引の省力化および自動化をさらに進める方針を示しています。
また、将来的にはAIエージェントが人に代わって調達や決済を自律的に行う社会を見据え、データの改ざんが困難なブロックチェーン技術をベースとしたデジタル基盤の提供を進めるとしています。これにより、人とAIが安心して取引できる環境の実現に貢献することを目指しています。
ポイント
- 円建てのトークン化預金「DCJPY」を活用し、受発注から決済、会計までのプロセスを自動化する実証実験に成功しました。
- 既存の受発注システム(流通BMS)と決済処理を共通基盤「インボイスチェーン」で連携させ、手作業が多かった消込作業などの自動化を実現しています。
- 経理・財務部門における数人月分の業務負荷を軽減できる可能性が示され、業務効率化の観点からビジネスパーソンにとって重要なマイルストーンとなります。
- 日立は将来的に、AIエージェントが調達や決済を自律的に行う社会を見据え、改ざん耐性の高いブロックチェーン基盤の提供を目指しています。