Sui、プロトコルレベルの供給管理を備えた「機密送金」機能を発表

Suiブロックチェーンの共同創設者であるアデニイ・アビオドゥン氏が、取引金額を非公開にしつつ、プロトコルレベルでトークン供給量の整合性を維持する「機密送金」機能をネットワークに導入することを発表しました。この機能は、暗号技術であるレンジプルーフ(範囲証明)を用いて送金金額を保護し、不正なトークン発行を防ぐ設計となっています。ブロックチェーンの透明性とユーザーのプライバシー保護を両立させる技術として、今後のビジネス利用における重要な進展になると期待されています。

開発の背景:プライバシーとトークン供給管理の両立

Sui、プロトコルレベルの供給管理を備えた「機密送金」機能を発表

Web3やブロックチェーン技術が企業や金融アプリケーションに普及する上で、取引データのプライバシー保護は極めて重要な課題とされています。しかし、取引金額を非公開にする場合、ネットワーク内でトークンが不正に新規発行されていないかを検証することが技術的な難所となっていました。

Suiが今回発表した機密送金機能は、送金金額を外部から隠しながらも、プロトコル(システム基盤)レベルでトークン供給量の整合性を厳格に管理することで、この課題を解決します。このアプローチにより、第三者による不正な資産増殖の余地を排除し、ネットワーク全体の信頼性を強固に保つことが可能になるとされています。

技術的特徴:役割の分離とレンジプルーフィングの採用

Suiの機密送金システムは、1つの暗号証明に複数の役割を持たせるのではなく、以下の2つのプロセスを完全に分離する設計を採用しています。

・レンジプルーフ(範囲証明)による金額保護

送金金額そのものを外部に明かすことなく、その金額が正当な範囲内に収まっていることだけを暗号学的に証明します。これにより、取引の当事者以外には正確な取引額が見えなくなります。

・プロトコルレベルでの供給量管理

トークン総量の整合性チェックを個別の暗号証明に依存させるのではなく、ブロックチェーンのプロトコル自体が直接強制します。これにより、プライバシー機能の裏で不正にトークンが発行されるリスクを構造的に防ぎます。

かつてプライバシー重視の暗号資産であるZcash(ジーキャッシュ)のOrchardプロトコルにおいて、プライバシー保護と供給管理を同時に処理しようとした設計の隙を突かれ、不正発行の脆弱性が生じた事例がありました。Suiの設計は、この教訓を活かし、役割を分離することでより攻撃に強いアーキテクチャを実現していると説明されています。

業界およびビジネスへの影響

この機能は、特にプライバシーとコンプライアンス(法令順守)の両立を求める企業や金融機関にとって、実用性の高いインフラとなる可能性があります。外部のミキサー(資金洗浄などに使われるツール)や追加のオプトインツールを必要とせず、プロトコル自体にネイティブ機能として組み込まれるため、ウォレットや取引所、法定通貨との入出金サービス間で安全かつシームレスに利用できるようになるとされています。

開発元であるMysten Labsの共同創設者兼CPOであるアデニイ・アビオドゥン氏によれば、この機能は2026年中にSuiネットワークに実装される予定です。

ポイント

  • 取引金額の非公開化を実現:暗号技術「レンジプルーフ(範囲証明)」を使用し、第三者から正確な送金金額を隠す機密送金機能を導入します。
  • 不正発行を構造的に防止:トークンの供給量管理をプロトコルレベルで直接実行することで、プライバシー保護の裏で生じる不正なトークン新規発行を設計上不可能にします。
  • 過去のセキュリティ事例から学習:Zcashの脆弱性問題などの教訓を踏まえ、プライバシー証明と供給管理の役割を分離する安全なアーキテクチャを採用しています。
  • ネイティブ機能としての統合:追加ツールを介さずプロトコル自体に組み込まれるため、ウォレットや取引所などでシームレスなプライバシー決済の実現が期待されます。
  • 2026年中の導入予定:Mysten Labsの共同創設者により、2026年内の実装に向けて開発が進められていることが明かされました。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta