ブロックチェーン技術を活用したデジタル証券(セキュリティ・トークン、以下ST)の市場が拡大する中、地方金融機関の参入を促す新たな動きが始まっています。これまでシステム導入などのコストや変更登録手続きの負担が障壁となっていた地域金融において、共同取次スキームの活用が活性化の起爆剤として注目されています。2026年4月22日に開催されたオンラインイベントでは、国内初の地銀系証券によるST参入事例を交え、今後の地域経済におけるSTの可能性について議論が交わされました。
共同取次スキームとセカンダリー市場の活用による参入障壁の緩和
地域金融機関がST事業に新規参入する際、商品の選択、オペレーションやシステムコスト、変更登録手続きの3点が大きな課題とされています。東海東京証券とブロックチェーン技術開発のBOOSTRY(ブーストリー)は、これらの課題を解決するため、国内初となる証券会社向けのST取次スキームを構築しました。
このスキームでは、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営する日本初のSTセカンダリー(二次流通)市場であるSTARTの銘柄を取り扱うことが推奨されています。プライマリー市場での資金調達スケジュールに左右されず、すでに審査や販売ツールが整備されているため、新規参入者にとって大きな利点となります。東海東京証券の名義で市場に発注する共同参加スキームを活用することで、決済業務も効率化できるとされています。地銀系証券として国内で初めてST取扱いに向けた変更登録を完了した十六TT証券は、この共同スキームを通じて、低コストで不動産STを提供することが可能となりました。
証券基幹システムとブロックチェーンを繋ぐE-Walletの役割
複数の金融機関による安全かつ円滑なデータ連携をシステム面から支えているのが、BOOSTRYが提供するE-Wallet(イーウォレット)です。E-Walletは、証券会社の基幹系システムとブロックチェーンを接続するハブ機能を持つエンタープライズソリューションとされています。
今回の取次スキームでは、E-Walletのマルチユーザーオプションを活用しています。これにより、個人情報などの重要データ領域は各社で分離しつつ、ODXへの受発注や決済に必要な情報のみを東海東京証券へ連携させる仕組みが構築されました。受注から約定日2営業日後(T+2)のSTや資金の決済に至るまで、極力自動化できる仕組みが整えられています。直感的でわかりやすいUI設計も特徴であり、金融事業者にとって大きな負担となりがちなオペレーション業務をなめらかにすることで、システム面からST事業への参入を強く後押ししています。
地産地消から互産互消へ、地域経済を活性化するSTの可能性
国内のST市場はすでに成長と多様化のフェーズに入っており、公募STの発行総額は3333億円に達し、個人投資家向けに82件のトークンが販売されています。今後は、同じ地域の金融機関が地元のアセットを地元の投資家に届ける地産地消だけでなく、お互いで生み出してお互いで消費し合う互産互消のエコシステム構築が重要になるとされています。
十六TT証券では、実物資産を小口化した不動産STに加え、将来的には地元である岐阜県の観光資源や地場産品などをトークン化する構想を掲げてしています。また、今後は地域に根ざした企業の社債をST化する社債STのポテンシャルも大きいとされています。地域密着型の企業は、地元の顧客基盤を深く理解している地域金融機関にとって販売しやすい特性があります。さらに、地方債のデジタル化に向けた法改正の動きもあり、県民債のような地域性の強い商品がデジタル証券として流通するようになれば、地方企業や自治体の新たな資金調達手段として活用される機会が広がっていくと見られます。
ポイント
- 国内の公募ST市場は発行総額3333億円、販売件数82件に達し、成長と多様化のフェーズに入っています。
- 共同取次スキームとODXのセカンダリー市場STARTを活用することで、地域金融機関のシステム導入コストや変更登録の負担といった参入障壁が大幅に軽減されます。
- BOOSTRYのE-Walletが提供するマルチユーザーオプションにより、個人情報を分離しつつ、決済や受発注の自動化による効率的な運用が可能となります。
- 単なる不動産STの提供にとどまらず、地域の観光資源や地場産品のトークン化、地域企業の社債ST化などを通じた地域経済の活性化が期待されています。
- 地方債のデジタル化に向けた法改正の動きに伴い、将来的に地方企業や自治体の新たな資金調達手段としてSTが活用される可能性があります。