ビットコインのレイヤー2(取引処理速度などを向上させるための二層目のネットワーク)であるBotanixが、約4年間の開発期間を経てネットワークを段階的に閉鎖することを発表しました。Botanix Labsはユーザーに対し、2026年7月9日までにネットワーク上のビットコインやその他の暗号資産を引き出すよう強く求めています。技術的な不具合やセキュリティインシデントによるものではなく、ビットコインを基盤とした分散型金融(DeFi)の需要が想定を下回り、インフラの維持コストを手数料収入で賄えなくなったことが要因とされています。
需要不足と経済的持続性の課題によるネットワーク閉鎖
Botanix Labsは、2025年7月にEVM(イーサリアム仮想マシン。イーサリアム向けのスマートコントラクトを実行するための環境)互換のビットコインレイヤー2ネットワークとしてメインネットをローンチしました。独自の「Spiderchain(スパイダーチェーン)」技術を強みとし、ビットコインにスマートコントラクトやDeFi機能をもたらすことを目指していました。
メインネットの運用開始から約1年で、ネットワークは2500万件以上のトランザクションを処理し、20万件を超えるウォレットが作成されました。また、稼働率は100%を維持し、セキュリティインシデントも発生していませんでした。しかし、ビットコイン保有者の多くは依然としてビットコインを「価値の保存手段」や「長期保有資産」として扱っており、オンチェーンでの活発な取引には至りませんでした。
さらに、ビットコインを活用したDeFi需要の多くは、すでにイーサリアム上の Wrapped Bitcoin(WBTC。イーサリアム上でビットコインと同等の価値を持つトークン)などで満たされていることや、取引活動が大手の中央集権型プラットフォームに集中していることも、Botanixの利用拡大を阻む要因となりました。Botanixは独自のネイティブトークンを発行せず、トークンインセンティブに依存しないモデルを採用していたため、流動性を引き付けることができず、手数料収入がインフラ運営コストを下回る結果となりました。
2026年7月9日までの資産引き出し要請と影響
Botanix Labsは、ユーザーに対して2026年7月9日までにすべての資産を引き出すよう呼びかけています。
この期限を過ぎた場合、ネットワーク上に残されたビットコインはバリデータ(ネットワークの検証者)の集まりである「Federation」によって回収されます。また、ビットコイン以外のトークンや資産については、期限を過ぎると永久に回収不可能(紛失)となるため、対象となるユーザーは早急な対応が必要とされています。
今回の閉鎖は、Polychain Capitalなどの著名なベンチャーキャピタルから計1150万ドルの資金調達に成功し、技術的にも安定して稼働していたプロジェクトであっても、ビットコインネイティブなDeFi市場における実質的な需要の創出やビジネスモデルの確立が極めて困難であることを示しています。
ポイント
- ビットコインのレイヤー2ネットワークであるBotanixが、需要低迷による手数料不足を理由に閉鎖を決定しました。
- ユーザーは2026年7月9日までに資産を引き出す必要があり、期限を過ぎるとビットコイン以外の資産は永久に失われます。
- 技術的にはセキュリティ問題なく安定稼働していたものの、ビットコインを日常的なDeFiアプリケーションで利用する需要が十分に育ちませんでした。
- 独自のネイティブトークンを発行しないモデルが、流動性の確保や経済的な持続可能性の面で課題となったと見られます。
- 著名なベンチャーキャピタルから1150万ドルを調達したプロジェクトの閉鎖は、今後のビットコインレイヤー2やDeFiの市場設計に大きな教訓を与える点で注目されます。