米大手証券取引所のナスダック(Nasdaq)は、オンチェーンの金融データネットワークであるパイス(Pyth / Pyth Network)と提携し、プロ向けの市場データ「ナスダック・トータルビュー」をブロックチェーン上へ配信することを発表しました。この提携により、DeFi(分散型金融)などのWeb3アプリケーションや各種ソフトウェアは、プログラムを通じてウォール街の高度な市場データに直接アクセスできるようになります。伝統的金融とデジタル資産インフラの融合を象徴する、新たな一歩として注目されます。
ナスダックの「トータルビュー」がパイス経由でオンチェーンへ
ナスダックが提供を開始する「ナスダック・トータルビュー(Nasdaq TotalView)」は、同取引所の詳細な板情報データフィードです。
通常の相場情報とは異なり、あらゆる価格帯に表示されている買い注文と売り注文の厚み(気配情報)を立体的に把握できるほか、寄り付きや引けのオークション前後における注文不均衡データも含まれています。これまで主に専用端末や直接接続回線を通じてプロのトレーダーに提供されてきたこのデータが、今後はパイスのマーケットプレイスを介して、ブロックチェーン・アプリケーションやデジタル資産取引所、予測市場、トレーディングシステムなどに向けて配信されます。
パイス(Pyth Network)は、ブロックチェーン外部の金融データをブロックチェーン上のアプリケーションへリアルタイムに提供する分散型オラクルネットワークとされています。開発者はパイスを統合することで、一次ソース(データ提供元)から直接、中立的な条件で市場データにアクセスできるようになります。
広がるパイスのデータ提供ネットワーク
パイスのマーケットプレイスには、すでに伝統的金融やデジタル資産の主要なプレイヤーがデータを供給しています。
具体的には、欧州の取引所グループであるユーロネクスト、OTCマーケッツ、電子取引プラットフォームのトレードウェブやカルシ、マーケットデータ提供会社のエクスチェンジ・データ・インターナショナル、シンガポール取引所傘下のSGX FX、さらには米商務省などが名を連ねています。ここに今回ナスダックが加わることで、オンチェーンで利用可能な伝統金融データの信頼性と多様性がさらに強化されることになります。
ナスダックと伝統的取引所が推進するデジタル資産戦略
今回の提携は、伝統的な取引所運営会社がデジタル資産ビジネスを拡大しようとする一連の動きの最新事例です。ナスダックは近年、ブロックチェーン技術の活用や暗号資産関連商品の展開を急速に進めています。
インフラとトークン化の推進:
2026年3月には、暗号資産取引所クラーケンおよびそのインフラ関連会社バックト(Bakkt)と提携しました。伝統的な株式とブロックチェーン・ネットワークをつなぐインフラ開発を進め、トークン化資産を既存の市場インフラに組み込む戦略を強化しています。
指数オプションの上場:
翌月の2026年4月には、米証券取引委員会(SEC)がナスダック・ビットコイン指数に連動するビットコイン指数オプションの上場提案を承認しました。米商品先物取引委員会(CFTC)の承認を経て取引が開始される見通しです。
指数先物の立ち上げ:
CMEグループとも提携し、ビットコイン、イーサ、ソラナ、XRPを含む7種類のデジタル資産バスケットに連動する暗号資産指数先物の立ち上げを計画しています。
また、こうした動きはナスダックに留まりません。ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるICEも、2026年5月に暗号資産取引所OKXと提携し、ブレント原油やWTI原油のベンチマークに連動する無期限先物を立ち上げました。ICEのジェフリー・スプレッチャー最高経営責任者(CEO)は、伝統的な取引所も24時間365日取引可能なオンチェーン無期限先物を提供できるよう、規制当局が認めるべきだと主張しており、既存金融のオンチェーン化への動きは活発化しています。
ポイント
- プロ向けデータ「トータルビュー」のオンチェーン化:ナスダックがパイス(Pyth Network)と提携し、詳細な板情報や注文不均衡データを含む「ナスダック・トータルビュー」をブロックチェーン上へ直接配信します。
- DeFiやWeb3アプリの開発を支援:開発者はパイスを統合することで、ウォール街の一次ソースデータにプログラムを通じて容易にアクセスできるようになります。
- 伝統的金融とブロックチェーンの融合が加速:ナスダックによるクラーケンやバックトとの提携、指数先物の計画など、既存の市場インフラとデジタル資産を接続する取り組みが多角的に進められています。
- 取引所間の競争の激化:ICEによるOKXとの提携や、24時間365日のオンチェーン無期限先物の提供を求める動きなど、ウォール街の主要プレイヤーがオンチェーン領域でのシェア獲得を競っています。