欧州の投資会社スピコ、国債ファンドにコインベースのステーブルコイン決済を導入

欧州の投資会社スピコ、国債ファンドにコインベースのステーブルコイン決済を導入

欧州の投資会社スピコは、EU(欧州連合)の規制下にある2本の短期国債ファンドにコインベース・ペイメンツを組み込んだことを発表しました。これにより対象となる投資家は、USDCやEURCといったステーブルコインを用いて、ファンドへの申し込みや解約時の償還金の受け取りを直接行えるようになります。欧州において、ステーブルコインによる直接決済を受け入れるUCITS(欧州連合の規制に準拠した投資信託)ファンドは今回が初めてとされています。オンチェーンの資本と伝統的な規制下の投資ファンドをシームレスにつなぐ、新たな決済インフラの実用例として注目されます。

ステーブルコイン決済の導入と24時間365日運用の仕組み

欧州の投資会社スピコ、国債ファンドにコインベースのステーブルコイン決済を導入

今回の連携の対象となるのは、スピコが運用する「EU Tビル・マネー・マーケット・ファンド」と「US Tビル・マネー・マーケット・ファンド」の2本です。いずれもEUの規制に準拠した投資信託であるUCITS(譲渡可能証券の集団投資事業)として組成されています。

コインベースが提供する決済、ウォレット、APIのインフラが組み込まれ、取引はコインベースのレイヤー2ネットワークであるベース(Base)上で処理されます。これにより、投資家は週末や祝日を問わず、24時間365日いつでもファンドへの申し込みを行うことが可能になります。また、ポジションが清算された後は、解約金を数分以内にステーブルコインのウォレットで受け取ることができます。

ただし、スピコは今回の取り組みについて、あくまで新たな支払い手段を導入するものであり、ファンド自体の仕組みを変更するものではないと説明しています。ステーブルコインの送金が常時可能であっても、ファンド本体が申し込みや解約を絶え間なく処理するわけではない点には注意が必要です。

伝統的金融とオンチェーン資産の融合が進む背景

コインベースは、今回の連携をステーブルコインが投資信託の決済インフラを刷新する一例と位置づけています。投資家がファンドへ出入りする際の遅延を取り除き、オンチェーン資本を伝統的な金融商品へ直接つなぐ決済基盤として機能することが期待されます。

このようなトークン化ファンドにおいて24時間365日のアクセスを模索する動きは、業界全体で広がっています。

たとえば、2月には資産運用会社のウィズダムツリーが、自社のトークン化米国債ファンドについて、24時間365日のセカントリー取引とUSDCによる即時決済の承認を取得しました。この仕組みでは、同社のブローカーディーラーが流動性を提供する一方、ファンド本体の一次プロセスは従来通り維持されています。

また、同じく2月にはフランクリン・テンプルトンとバイナンスが機関投資家向けのプログラムを開始し、規制下のカストディに資産を置いたまま、トークン化ファンドの持ち分を取引所外取引の担保として差し入れられる仕組みを構築しています。

拡大するUCITS市場とステーブルコインの親和性

今回のステーブルコイン決済の導入は、欧州のUCITS市場への資金流入が急回復しているタイミングと重なっています。

業界団体EFAMA(欧州投資信託協会)が公表したデータによると、UCITSファンドには4月に1040億ユーロ(約19兆2400億円)の純流入が記録され、前月の純流出(410億ユーロ、約7兆5850億円)から大幅に回復しました。さらに、2025年の純販売額は過去最高となる8280億ユーロ(約153兆1800億円)に達しており、従来の最高額であった2021年の8130億ユーロ(約150兆4050億円)を上回っています。

このような巨大な伝統的金融市場に対してステーブルコイン決済の道が開かれたことは、Web3領域の資本が規制下の安定した運用商品へ流入する流れを加速させる可能性があります。

ポイント

  • 投資会社スピコが、EU規制下の2本の国債ファンドにコインベースの決済インフラを導入しました。
  • 欧州で初めて、UCITS(欧州連合の規制に準拠した投資信託)ファンドにおいてステーブルコイン(USDC、EURC)による直接決済が可能になった点で注目されます。
  • 決済はコインベースのレイヤー2「ベース」上で処理され、投資家は24時間365日いつでも申し込みを行い、解約金を数分で受け取れるようになります。
  • ただし、ファンド本体の処理スケジュール自体は変更されず、あくまで新たな支払い手段としての導入である点に注意が必要です。
  • 成長を続ける大規模なUCITS市場とオンチェーン資本を直接結びつけることで、ステーブルコインが伝統金融の決済インフラとして機能することを示す重要な事例と見られます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta