米国ニューハンプシャー州のケリー・アヨット知事が、州内における暗号資産(仮想通貨)のイノベーションと利用を保護する「ブロックチェーン基本法(HB639)」に署名しました。この法律は、ユーザーの自己管理(セルフカストディ)の権利やマイナー、バリデーターへの明確な法的保護を規定するものです。さらに、ブロックチェーン技術に関連する法的紛争を専門に扱う裁判部門の設置も盛り込まれており、法的な明確性を高めることでデジタル経済を支援する姿勢を示しています。
ブロックチェーン基本法が定める主な権利と保護範囲
この法律は、ニューハンプシャー州内における仮想通貨の利用、保有、および関連する事業運営に対して、具体的な法的保護を提供しています。主な規定内容は以下の通りです。
- 個人が自己管理(セルフカストディ)を通じて自身の仮想通貨をコントロールする権利を保護し、自己管理型または第三者ウォレットでの自己保管を制限しない。
- 合法的な商品やサービスの購入に仮想通貨を使用することを制限しない。
- マイニングやノード運営を行う際、州法上の送金業者ライセンス(RSA 399-G)の取得を不要とする。
- 個人の自宅でのマイニングは、地域の騒音条例に従う限り許可する。また、産業用地区における事業者のマイニング活動を認める。
- 州がノード運営、仮想通貨の送金、ステーキング(暗号資産を保有してネットワークの維持に貢献する仕組みとされています)を禁止することを制限する。
これらの規定により、ブロックチェーン開発者やマイナー、バリデーター、起業家、そして次世代の金融技術を構築する企業に対して、明確な法的保護が提供されることになります。
専門的な法的紛争に対応する裁判部門の設置
本法のもう一つの大きな特徴は、ブロックチェーンや仮想通貨に関連する法的紛争に特化した、専門の裁判部門(ドケット)の上級裁判所内への設置です。
この法律への違反によって直接的な影響を受けた者は、州の裁判所やブロックチェーン紛争専門部門に救済を申し立てることが可能となります。当事者間の合意があることなどを条件として、上級裁判所内のブロックチェーン紛争部門が技術的な紛争を審理し、裁定する管轄権を有することになります。これにより、高い専門性が求められるトラブルに対しても、適切な司法対応が行われる環境が整備されます。
ニューハンプシャー州における仮想通貨を巡る取り組みの背景
ニューハンプシャー州は、仮想通貨に対して先進的な取り組みを行ってきた背景があります。2025年5月には、米国で初めて公的資金の一部をビットコインなどで運用できる「戦略的準備法(ビットコイン準備金法)」を成立させました。この法律は、州財務官に公的資金の最大5%を主要な仮想通貨に投資する権限を与えるものですが、義務化ではないため、現在のところ実際のビットコイン購入は伝えられていません。
一方で、すべての提案が無条件で承認されているわけではありません。2026年7月8日には、州のビジネス金融公社(BFA)が提案していた、ビットコイン担保のコンジット債(公的機関が名義上の発行者となり、民間企業等が資金調達を行う債券)1億ドルの発行案が行政評議会によって3対2で否決されました。ムーディーズによる格付けが「投機的格付け」に相当したことなどから、税金に依存しない構造であっても、州が関与することの妥当性を懸念する声が上がったためと見られます。このように、同州はイノベーションを保護する法整備を進める一方で、公的な関与については慎重な議論が重ねられている様子がうかがえます。
ポイント
- 米ニューハンプシャー州知事が、州内における仮想通貨のイノベーションと利用を保護する「ブロックチェーン基本法(HB639)」に署名しました。
- ユーザーによる自己管理(セルフカストディ)の権利や決済での利用、ステーキングなどの禁止を制限し、法的保護を提供します。
- マイニングやノード運営において、州法上の送金業者ライセンスの取得を不要とすることを明確にしました。
- 上級裁判所内にブロックチェーン紛争専門の裁判部門(ドケット)を設置し、専門的な法的紛争に迅速に対応する体制を整えます。
- 同州は2025年にビットコイン準備金法を可決した実績を持つ一方で、2026年7月にはビットコイン担保債の発行案を否決するなど、慎重な判断も行われています。