暗号資産およびブロックチェーン業界において、決済、インフラ、セキュリティの各分野で大きな動きがありました。決済大手のStripeがPayPalに対して530億ドル規模の共同買収提案を行い、ステーブルコイン決済分野における主導権争いが激化しています。また、Coinbaseのレイヤー2ネットワークであるBaseは、これまでのソーシャル分野への投資の失敗を認めて戦略を転換し、消費者向けアプリの開発を著名トレーダーのCobie氏に委ねることを発表しました。一方で、実世界資産(RWA)の取引プロトコルであるOstiumがオラクル悪用により最大1800万ドルを失うなど、DeFiにおけるセキュリティ面の課題も改めて浮き彫りになっています。
Baseがソーシャル戦略の失敗を認め方針転換、アプリ開発はCobie氏へ
Coinbaseのイーサリアム・レイヤー2ネットワークであるBaseの創設者、ジェシー・ポラック(Jesse Pollak)氏は、消費者向けアプリ(Base App)の開発および運営の主導権を、著名トレーダーである「Cobie」ことジョーダン・フィッシュ(Jordan Fish)氏に引き渡すことを発表しました。
ポラック氏は自身のSNSへの投稿で、これまで推進してきたオンチェーン・ソーシャル(SocialFi)やクリエイターコインなどの戦略が完全に崩壊したことを認め、2026年第1四半期の状況を「顔面へのパンチ」と表現して謝罪しました。FarcasterやZoraといったソーシャル関連プロトコルの利用が急減する一方で、競合チェーンに対して取引や決済、予測市場などの分野で遅れをとったと分析しています。
今後は、ポラック氏はBaseブロックチェーン自体のインフラ開発に専念し、最優先事項を「トークン化された資産の取引」「グローバルなステーブルコイン決済」「AIエージェント」へとシフトする方針を示しています。一方、Coinbaseが買収したEchoの創設者でもあるCobie氏がBase Appの開発を主導し、より広範なオンチェーン体験の提供を目指すとされています。
StripeがPayPalに530億ドルの買収提案、ステーブルコイン決済の統合へ
決済大手のStripeとプライベート・エクイティ(PE)ファンドのAdvent Internationalが、競合であるPayPalに対して530億ドル規模の共同買収提案を行ったことが報じられました。1株あたり60.50ドルでの買収を提案しており、これは直近の株価に対して約28%のプレミアムを上乗せした水準とされています。
この買収が実現した場合、Web3業界における決済インフラの勢力図が大きく塗り替わる可能性があります。Stripeは2025年にステーブルコインAPI提供企業のBridgeを11億ドルで買収しており、一方のPayPalは独自の米ドル連動型ステーブルコイン「PYUSD」(時価総額約28億〜29億ドル)を擁しています。
Stripeの持つ高度なステーブルコイン発行・決済インフラと、PayPalが抱える広大な消費者および加盟店ネットワークが統合されることで、ステーブルコインを用いた実社会での決済導入が一気に加速する可能性があると注目されています。現時点でPayPal側からの公式な回答は行われていないとされています。
RWA取引プロトコル「Ostium」がオラクル悪用により最大1800万ドルの流出被害
Arbitrumを基盤とする実世界資産(RWA)の無期限先物取引所である「Ostium」が、価格フィード(オラクル)システムの脆弱性を突かれ、最大1800万ドル(USDC)の資金流出被害に遭いました。この事態を受けて、Ostiumはすべての取引を一時停止しています。
セキュリティ企業のBlockaidなどの調査によると、攻撃者は登録済みの価格更新フォワーダー(PriceUpKeep)と、未来の日付が設定された承認済みオラクルレポートを悪用したとされています。これにより、システム上で架空の取引利益を捏造し、Ostiumの流動性プールであるUSDCバルクから繰り返し資金を引き出すことに成功したと報じられています。
OstiumはGeneral CatalystやJump Cryptoなどの大手ベンチャーキャピタルから計2780万ドルの資金を調達しており、 Nasdaqとの提携も行うなど注目を集めていたプロトコルでした。今回の事件は、DeFiやRWA取引において、オラクルなどの自動インフラのセキュリティがいかに重要であるかを改めて示す事例となりました。
ポイント
- Baseの創設者であるジェシー・ポラック氏がオンチェーン・ソーシャル戦略の失敗を認め、Base Appの開発主導権をCobie氏に譲渡しました。
- Baseは今後、ソーシャル分野から「取引」「ステーブルコイン決済」「AIエージェント」へと焦点を移し、金融インフラとしての成長を目指す方針です。
- StripeとAdvent InternationalがPayPalに対して530億ドルの買収提案を行いました。実現すれば、StripeのBridgeとPayPalのPYUSDが統合され、ステーブルコイン決済の巨大なプラットフォームが誕生する可能性があります。
- RWA取引所のOstiumがオラクルシステムの脆弱性を悪用され、最大1800万ドルのUSDCが流出するハッキング被害に遭い、取引を停止しました。
- これらの出来事は、Web3業界においてソーシャルから金融インフラや実用決済への回帰が進む一方で、DeFiプロトコルのセキュリティ対策が引き続き最優先課題であることを示しています。