ビットコインのOrdinals(オーディナルズ:ビットコインの最小単位であるサトシに画像やテキストなどのデータを直接紐付ける技術)およびRunes(ルーンズ:ビットコイン上でトークンを発行・取引するためのプロトコル)エコシステムの主要な開発者であるLeonidas(レオニダス)氏が、新しいオープンソースのビットコインクライアント「$DOG Mode」を提案しました。このクライアントは、ビットコインネットワーク上で非金融データを制限しようとする動きに対抗し、個々のノードの転送ポリシーを緩和することで、大容量トランザクションの転送やダストリミットの引き下げを可能にします。コンセンサスルールの変更や投票を必要とせず、ノードやマイナーの自発的な採用を通じて、ビットコインエコシステムにおける新たな選択肢を提示しています。
「$DOG Mode」提案の背景と目的
ビットコインネットワークでは、画像やテキストなどの非金融データをトランザクションに埋め込むOrdinalsや、トークンを発行するRunesの台頭に伴い、ブロックチェーンの容量やスパム対策を巡る議論が続いています。
直近では、ビットコインから非金融データを排除することを目指す「BIP-110」と呼ばれる提案が議論されていましたが、マイナーからの支持はほとんど得られず、進展が停滞していると報じられています。
こうした中、Runestoneプロジェクトの共同創設者であるLeonidas氏は、投票やネットワーク全体の合意形成を必要としないアプローチとして、新しいオープンソースのビットコインクライアントである$DOG Modeを提案しました。
技術的な特徴とビットコインCoreとの違い
$DOG Modeは、ビットコインの共識規則(コンセンサスルール)自体を変更するものではなく、個々のノードがどのトランザクションを隣接するノードに転送するかを決める転送ポリシー(リレーポリシー)を緩和するものです。
主な変更点は以下の通りとされています。
- 最大トランザクションサイズの大幅な引き上げ:
主流のクライアントである「Bitcoin Core」では、ネットワークの保護を目的として、1つのノードが転送する標準的なトランザクションサイズの上限を400,000ウェイトユニットに制限しています。これに対し$DOG Modeでは、上限を3,900,000ウェイトユニット(ブロック容量4,000,000ウェイトユニットのほぼ全体に相当)まで引き上げ、Ordinalsなどの大容量データを伴うトランザクションを容易に転送できるようにします。
- ダストリミットの引き下げ:
Bitcoin Coreでは、極めて少額の出力を伴うトランザクションを排除するため、ダストリミット(転送可能な最小出力額)を294から546サトシに設定しています。一方$DOG Modeでは、これを1サトシまで引き下げます。これにより、OrdinalsやRunesのトランザクションで必要とされていた余分なビットコインの埋め込み(パディング)が不要となり、約2,500万ドル相当の資金が解放される可能性があるとされています。
業界への影響
Leonidas氏は、経済的なインセンティブが$DOG Modeの採用を後押しすると主張しています。このクライアントを稼働させるノードが増え、マイナーがこれらを受け入れるようになれば、Bitcoin Coreが転送を拒否する非標準的なトランザクションであっても、問題なくブロックに記録されるようになります。
Leonidas氏は、時間の経過とともに経済的インセンティブが$DOG Modeの採用を促し、Bitcoin Coreに対してゲートキーピング(門番行為)をやめさせ、完全に有効なこれらのトランザクションを許可せざるを得なくなるだろうと述べており、開発者やマイナーに対してこの取り組みへの支持を呼びかけています。
なお、本プロジェクトは初期段階にあり、現時点では具体的なコードは公開されていません。
ポイント
- 投票不要のアプローチ:議論が停滞しているBIP-110などの提案とは異なり、コンセンサスルールの変更を伴わないため、ネットワーク全体の投票を経ずにノード個別のポリシー変更のみで実行可能である点で注目されます。
- トランザクション制限の緩和:標準トランザクションサイズの上限を400,000ウェイトユニットから3,900,000ウェイトユニットへ約10倍に引き上げ、大容量データの転送を容易にする点で実用性が期待されます。
- ダストリミットの引き下げ:最小出力額を1サトシに引き下げることで、OrdinalsやRunesの取引で生じていた約2,500万ドル相当の余剰資金(パディング)を解放できる可能性があり、コスト削減の観点から重要視されています。
- 経済的インセンティブによる普及:Leonidas氏は、マイナーやノード運用者が経済的なメリットから$DOG Modeを自発的に採用し、最終的にはBitcoin Core側の制限緩和につながると見ています。