KrakenのFedマスターアカウント、承認から4ヶ月超も未稼働:CEOが遅延の背景を説明

米暗号資産取引所大手Krakenの銀行部門であるKraken Financialは、今年3月に米連邦準備制度(Fed)のマスターアカウント(連邦準備制度の決済口座)の承認を獲得し、暗号資産企業として初の快挙を成し遂げました。しかし、承認から4ヶ月以上が経過した現在も、同アカウントは稼働していません。Kraken FinancialのCEOであるブライアン・マセナ(Brian Mathena)氏は、ワイオミング州の議会でその理由と現在の状況を説明しました。

監修:ブロックチェーンマガジン編集部

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異例の承認と稼働遅延の背景

Kraken Financialは、2026年3月4日にカンザスシティ連邦準備銀行からマスターアカウントの承認を受けました。これにより、同社は中間銀行を介さずに米ドルを直接送金できる「Fedwire」などの決済システムへ直接アクセスする道が開かれました。しかし、承認から4ヶ月以上が経過した現在もアカウントは稼働しておらず、顧客の送金は依然として中間銀行であるDart Bankなどを経由しています。

Kraken FinancialのCEOであるブライアン・マセナ氏は、ワイオミング州のブロックチェーン特別委員会において、稼働の遅れについて説明しました。マセナ氏によると、アカウントをめぐる規制上の不確実性が存在したため、現在はその遅れを取り戻すプロセスを進めており、アカウントの運用開始や預金製品の拡充、マスターアカウントの最大活用に向けて取り組んでいる段階であるとしています。また、Kraken側は当初から即時の全面稼働を約束しておらず、まずは大口の機関投資家向け顧客から段階的に展開していく計画を示していました。

厳格な制限と規制当局の警戒

今回Krakenに付与されたマスターアカウントは、極めて異例かつ制限付きのものです。カンザスシティ連邦準備銀行は、このアカウントの有効期間を1年間に限定しており、Krakenの持つリスクに合わせた非公開の制限を設けているとされています。

Fedのミシェル・ボウマン理事は、Krakenが属する「Tier 3(連邦預金保険の対象外となる機関など)」へのアクセス権付与について、事実上「入手困難なもの」と表現しています。実際に、53件の申請のうち承認されたのはわずか3件にとどまり、暗号資産関連企業としてはKrakenが唯一の事例です。他の2件はプエルトリコの協同組合と紙幣専門のNumisma Bankであり、暗号資産とは関係がありません。同じワイオミング州で認可されたCustodia Bankは、2020年に同様の申請を行ったものの2023年に却下され、現在も法廷闘争を続けています。

さらに、銀行業界団体などは「Fedがルールを確定する前にKrakenを承認した」と警告しており、Fedは地域連邦準備銀行に対し、Tier 3機関の登録を一時停止するよう求めています。現在Fedは、非銀行向けの決済口座に関する新たな規則案を策定中であり、意見募集が7月27日に終了した後、年末までに最終決定される見通しとされています。

業界にとっての重要性

暗号資産企業にとって、Fedのマスターアカウント獲得は長年の課題とされてきました。従来、暗号資産取引所などは米ドルの送金や保管を中間銀行(コルレス銀行)に依存せざるを得ず、これが運用のコストやカウンターパーティリスク(取引相手の破綻リスクなど)を高める要因となっていました。

Krakenがこのアカウントを完全に稼働させることができれば、中間銀行を排除した効率的かつ安全な米ドル決済が可能となり、Web3ビジネスにおける資金効率と信頼性が大幅に向上すると見られます。しかし、今回の稼働遅延やFedによる新規登録の一時停止、および年末に向けた新たなルール策定の動きは、暗号資産企業が伝統金融システムへ直接アクセスすることの難しさと、規制当局の極めて慎重な姿勢を改めて浮き彫りにしています。

ポイント

  • Kraken Financialは2026年3月に暗号資産企業として初めてFedのマスターアカウント承認を獲得しましたが、4ヶ月以上経った現在も稼働していません。
  • CEOのブライアン・マセナ氏は、アカウントをめぐる規制上の不確実性により運用の準備に遅れが生じており、現在は運用の開始に向けた遅れを取り戻す作業を行っていると説明しました。
  • 今回承認されたアカウントは1年間限定の試験的なものであり、Krakenのリスクに応じた非公開の制限が課されています。
  • Fedは現在、非銀行向けの決済口座に関する新たなルールを策定中であり、地域連邦準備銀行に対して新規の登録作業を一時停止するよう求めています。
  • マスターアカウントの完全な稼働は、中間銀行への依存を排除し、送金コストやカウンターパーティリスクを削減できる点で注目されますが、規制の不確実性が依然として高いハードルとなっています。
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