イギリスの超党派議会グループである暗号資産およびデジタル資産に関する超党派議会グループ(APPG)は、国内の銀行が暗号資産関連企業に対して口座開設を拒否したり、暗号資産取引に制限を課したりしている問題について、本格的な調査を開始しました。この調査は、金融機関による制限措置が適切であるかを評価し、市場の競争やイノベーション、そして消費者に与える影響を明らかにすることを目的としています。暗号資産企業が直面している金融アクセスの制限、いわゆる「デバンキング」は業界の長年の課題であり、今回の議会による調査は、今後のビジネス環境の改善に向けた重要な一歩となる可能性があります。
調査の背景と目的:暗号資産企業の金融アクセス制限の実態解明へ
イギリスのAPPGは、国内の銀行からサービス制限を受けている暗号資産企業の実態を解明するための調査に乗り出しました。
これまで多くの暗号資産企業や、保険などの関連する専門職サービスが、銀行口座の開設拒否や、特定の暗号資産企業への送金ブロック、送金限度額の設定といった制限に直面してきました。APPGの共同議長であるディドコットのヴェイジー卿は、業界から銀行口座やサービスへのアクセス困難に関する報告が長年にわたり一貫して寄せられていたことを明かしています。
本調査では、銀行が課しているこれらの制限措置が、リスクに対して「比例的(適切)なものであるか」を検証し、消費者、ビジネス、イノベーション、そして市場競争に及ぼしている影響を調査します。
対象となる範囲と今後のスケジュール
今回の調査は、暗号資産企業に対する直接的な銀行口座提供の不足だけでなく、決済制限や送金限度額の設定など、多岐にわたる金融サービスの制限を対象としています。
APPGは今後、以下のようなプロセスで調査を進める予定です。
- 証拠の募集:銀行、決済会社、フィンテック企業、暗号資産事業者などの業界関係者から、6週間にわたり書面による証拠を募集します。
- 報告書の作成と提言:収集した証拠に基づき、調査結果をまとめた報告書を作成し、イギリス政府に対して具体的な推奨事項(提言)を提出します。
なお、本グループの共同議長は、元デジタル経済担当大臣のヴェイジー卿と、労働党のグリンダー・シング・ジョサン下院議員が務めています。
業界にとっての重要性とビジネスへの影響
暗号資産企業が安定した銀行口座を確保することは、日々の事業運営において極めて重要です。米国において企業や個人の組織的な金融アクセス遮断が「オペレーション・チョークポイント2.0」と呼ばれ問題視されてきたように、英国でも銀行によるサービス制限はWeb3ビジネスの成長を阻む大きな障壁となってきました。
現在、英国政府はステーブルコインの規制やトークン化金融市場の枠組み構築を進めており、同国を「暗号資産およびフィンテック・イノベーションのグローバルハブ」にするというビジョンを掲げています。今回の議会による調査は、こうした政府のビジョンを後押しし、暗号資産企業が伝統的な金融インフラに公平にアクセスできる環境を整えるための重要な契機になると見られます。
ポイント
- イギリスの超党派議会グループ(APPG)が、暗号資産関連企業に対する銀行の口座開設拒否や取引制限に関する調査を開始しました。
- 調査は、銀行の制限措置が適切であるかを評価し、イノベーションや市場競争、消費者へ与える影響を明らかにすることを目的としています。
- 銀行、決済、フィンテック、暗号資産の各セクターから6週間にわたって書面による証拠を募集し、最終的に政府への提言をまとめた報告書を公表する予定です。
- 英国が目指す「グローバルな暗号資産ハブ」の実現に向け、業界の長年の課題であった金融アクセスの改善につながる一歩として注目されます。