エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、同国が保有するビットコインの戦略的準備金を民間事業者へ移管したとする報道を否定しました。発端となったスペイン紙の報道は、国際通貨基金(IMF)との合意に伴い7,763 BTC超の準備金が移管されたとしていましたが、ブケレ大統領は移管された対象は準備金ではなく政府系電子ウォレット「Chivo」の株式であると反論しています。IMFの発表によると、同ウォレットの過半数の所有権と運営管理権が民間へ移管される一方、エルサルバドル政府は少数持分と顧客資産の保管責任を維持します。国家のビットコイン保有体制と公的関与のあり方、さらに国際機関との融資交渉における資産管理の境界線が明確化された事例として注目されます。
株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。
報道の経緯とブケレ大統領による否定
今回の問題は、スペイン紙エル・パイスが公式Xにおいて、エルサルバドル政府がIMFとの合意に伴い、7,763 BTC超(評価額6億3,200万ドル超)からなる準備金の過半数の所有権と管理権を民間事業者へ移したと伝えたことから始まりました。
これに対し、ブケレ大統領は日本時間9月5日に自身のXで報道を完全に誤りであると表明しました。ブケレ大統領は根拠とされたIMFの発表を提示した上で、民間へ移管されたのは政府系電子ウォレットであるChivoの株式であり、戦略的ビットコイン準備金ではないと説明しています。この反論を受け、エル・パイス側も記事末尾に訂正文を掲載し、初版の内容を修正しました。修正文では、ビットコイン準備金を引き渡したのではなく、移管されたのはChivoウォレットの過半数所有権と運営管理権であり、政府は少数持分を維持すると改められています。
IMFとの事務レベル合意とChivoの民間移管
IMFは9月3日、40カ月にわたる拡大信用供与措置(EFF)の第2次および第3次審査をめぐり、エルサルバドル当局と事務レベル合意に達したことを発表しました。
発表によると、Chivoウォレットへの公的関与が大幅に縮小され、過半数の所有権と運営管理権が民間事業者へ移管されたと説明されています。エルサルバドル政府は少数持分と顧客資産の保管責任を引き続き維持する形態をとります。なお、今回移管された先の事業者名は明らかにされていません。Chivoの売却交渉については、IMFが2025年12月の時点で大きく進展していると報告しており、今回の発表によって実際の移管が完了している実態が公表された形となります。
ビットコイン積み増しの現状と支援プログラムの枠組み
IMFの発表では、同国のビットコイン積み増しに関する状況も言及されています。2025年6月27日に完了した第1次審査以降に行われたビットコインの積み増しについて、公的資金は使用されておらず、民間からの寄付によるものであることを確認する文書がエルサルバドル側から提出されたと説明されています。寄付者や寄付額の内訳は公表されていませんが、IMFは文書で確認された寄付分を超える追加の積み増しは見込まれないとの認識を示しました。
今回の事務レベル合意は、IMF理事会による承認および合意済みの事前措置の完了が条件となっています。承認が得られた場合、エルサルバドルは約1億4,000万ドルを受け取る見通しです。エルサルバドルに対するEFFは2025年2月に承認されており、融資枠の総額は約14億ドルとなっています。
ポイント
- ブケレ大統領がエル・パイス紙による7,763 BTC超の準備金民間移管報道を否定し、報道元も対象がChivoウォレットの持分であったと訂正した点
- 政府系電子ウォレット「Chivo」の過半数の所有権と運営管理権が民間事業者へ移管され、公的関与が大幅に縮小された点
- エルサルバドル政府がChivoの少数持分と顧客資産の保管責任を維持しつつ、移管先事業者名は非公表とされている点
- 第1次審査以降のビットコイン積み増しは民間寄付によるもので公的資金不使用と確認され、追加の積み増しは見込まれないとIMFが認識を示した点
- IMF理事会の承認と事前措置完了により、同国が約1億4,000万ドルの融資を受け取る見通しである点