オンチェーンファンドとは、ファンドの持分(受益権)の発行・記録・移転をブロックチェーン上で行うファンドです。rwa.xyzの集計では、トークン化された米国債ファンド(MMFを含む)の総額は2026年10月16日時点で146.8億ドルでした。

米国ではBlackRockが2024年3月にBUIDLを公開ブロックチェーン上で発表し、国内でも三菱UFJグループ3社とProgmatが2026年8月にトークン化投資信託の実証ファンドを設定しました。持分がトークンになると、ステーブルコインと同じ台帳の上で待機資金の管理や決済をつなげられるため、AIエージェントによる自動の資金管理や決済の受け皿としても検討が始まっています。
- ファンド持分の記録をブロックチェーン上の台帳へ移す仕組み
- 米国はMMFの決済・担保用途で先行、国内は実証段階
- 運用会社・受託者・カストディ・データ連携の役割分担が設計の中心
- 国内は投信法の券面と原簿の扱いを実証で確認中
- 検討はユースケースと法令の確認から着手
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オンチェーンファンドとは
オンチェーンファンドとは、ファンドの持分(受益権)の発行・記録・移転をブロックチェーン上で行うファンドです。投資家が持つ持分はトークンとして記録され、誰がどれだけ保有しているかを示す名簿の役割をブロックチェーン上の台帳が担います。

トークン化ファンド、トークン化投信、トークン化MMFと呼ばれるものも、指している対象は同じです。投資対象の資産そのものは国債や短期金融資産など従来どおりで、変わるのは持分を管理する基盤の部分です。
代表例はBlackRockが2024年3月20日にEthereum上で発表したBUIDLで、同社初の公開ブロックチェーン上のトークン化ファンドでした。国内では三菱UFJアセットマネジメント、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJ信託銀行の3社がProgmat, Inc.とともに、国内籍のトークン化投資信託の実証を目的とするファンドを2026年8月31日に設定しています。運用の中身は変わらず、既存ファンドの持分管理の基盤が置き換わる動きです。
オンチェーンファンドの国内外の事例
米国の2本と国内の実証1本を並べると、先行する用途と国内の段階の差が見えてきます。

| 事例 | 主体 | 対象資産 | チェーン | 置き換える既存インフラ |
|---|---|---|---|---|
| BUIDL | BlackRock(移転代理人・基盤はSecuritize) | 現金・米国短期国債・レポ | Ethereumほか計8チェーン(2025年11月時点) | 移転代理人の名簿管理から、許可制のオンチェーン台帳へ |
| BENJI(FOBXX) | Franklin Templeton | 米国政府系MMF | Stellar | 持分記録の記録システムを、公開ブロックチェーンへ |
| 国内実証ファンド | 三菱UFJグループ3社・Progmat | 投資信託(実証用) | Progmatの基盤 | 受益権原簿の管理を、オンチェーンへ(予定) |
事例①:BlackRockのBUIDL
BUIDLは、総資産の100%を現金・米国短期国債・レポに投資し、1トークン1ドルの安定価値を目指すファンドです。従来のMMFは持分の移転や分配に営業日の事務処理が挟まりますが、BUIDLは日次で発生した分配金を毎月新たなトークンとして投資家のウォレットに届けます。

2025年11月14日には、SecuritizeとBinanceがBUIDLをBinanceでの取引の取引所外担保として受け入れると発表しました。同時にBNB Chain上に新しいシェアクラスが設けられ、利用できるチェーンはArbitrum、Aptos、Avalanche、Ethereum、Optimism、Polygon、Solana、BNB Chainの8つになりました。BUIDLの台帳と名簿の管理を担うSecuritizeの役割は、Securitizeの解説で詳しく扱っています。
事例②:Franklin TempletonのBENJI
Franklin OnChain U.S. Government Money Fund(FOBXX)は2021年にStellar上で始まったファンドで、持分はBENJIトークンで表されます。公開ブロックチェーンを取引処理と持分記録の正式な記録システムに使う、初の米国登録投資信託です。

BENJIは持分のP2P移転と、週末・祝日を含む365日の日次オンチェーン分配を備えています。P2P移転は2025年5月に個人保有者へ広がりました。Franklin TempletonとStellar Development Foundationの発表では、BENJIスイートの運用資産は2026年4月29日時点で19.8億ドルでした。
事例③:三菱UFJグループとProgmatの国内実証
国内の実証ファンドは、投資信託受益権の権利を券面に表示したうえで、原簿の管理をオンチェーンで行う予定です。目的は実務的知見の蓄積で、受益権の外部投資家への募集・販売は行いません。

4社は今後、外部投資家向けの提供拡大や、ステーブルコイン・トークン化預金との連携へ段階的に検証範囲を広げる方針を示しています。この実証でトークン化基盤を担うProgmatは、Pacific Metaが戦略的業務提携を結ぶ発行基盤でもあり、国内のセキュリティトークン発行でも使われています。
米国はMMFを決済や担保に使う段階まで進み、国内は投信法との整合を実証で確かめている段階です。国内で今すぐ外部投資家へ販売できる商品はまだ無いため、自社の検討は実証や私募の範囲から組み立てることになります。
オンチェーンファンドの仕組みと関係者
オンチェーンファンドは、運用会社1社ではなく、複数の関係者が役割を分担して動かす仕組みです。BUIDLでは、運用・カストディと管理事務・移転代理人とトークン化基盤・募集取扱・監査の5つの役割を別々の事業者が担っています。

主な関係者は次のとおりです。
- 運用会社:ファンドの資産を運用し、基準価額を算出する(BUIDLではBlackRock Financial Management)
- 受託者・カストディ:裏付け資産を保管し、管理事務を担う(BUIDLではBank of New York Mellon)
- 移転代理人・トークン化基盤:受益者名簿にあたる台帳をブロックチェーン上で管理し、トークンの発行・移転・償還を処理する(BUIDLではSecuritize)
- データ連携(オラクル):基準価額や準備金などの外部データをチェーンに渡す
- 投資家:許可されたウォレットでトークンを受け取り、保有・移転する
データ連携では、トークン化資産向けに準備金・基準価額・運用資産のデータをオンチェーンへ提供するサービスがすでに提供されています。国内実証でも、運用・受託・トークン化基盤の各機能を実環境で動かすことが試みの中心に置かれています。
運用会社1社では完結しないため、導入側は受託・記録・データ連携をどの事業者がどう分担するかを先に決める必要があります。
従来のファンドとの違いとメリット
従来のファンドとの違いは、運用の中身よりも持分の記録と移転の方法にあります。

| 項目 | 従来のファンド | オンチェーンファンド |
|---|---|---|
| 持分の記録 | 受託銀行や移転代理人の名簿 | ブロックチェーン上の台帳 |
| 移転の手続き | 販売会社・受託銀行を経由して名簿を更新 | ウォレット間で移転し台帳を更新 |
| 移転できる時間 | 営業日・営業時間 | BUIDLは事前承認された投資家間で24時間365日 |
| 担保としての利用 | 解約・現金化を経由することが多い | トークンのまま担保に差し入れる例がある |
| 分配の方法 | 定期の事務処理 | BENJIは365日の日次オンチェーン分配 |
メリットは3点に絞れます。
- 移転と決済の時間短縮:営業日に縛られずに持分を移せる
- 担保としての利用:BUIDLが取引所外担保に受け入れられたように、トークンのまま差し入れられる
- 記録業務の効率化:名簿の更新と分配の処理を台帳上でまとめて行える
英国財務省のAsset Management Taskforce傘下の作業部会(Technology Working Group)も、2024年3月26日公表の第2報告書でMMFトークンを担保に使うユースケースを取り上げています。事業会社にとっては、待機資金の管理や決済担保の選択肢として検討の対象になります。
オンチェーンファンドと日本の制度
日本では、投資信託の受益権をトークン化する際に、投信法上の受益証券の券面と受益権原簿の扱いをどう整理するかが論点になります。三菱UFJグループ3社とProgmatの実証は、権利を券面に表示しながら原簿管理をオンチェーンで行う組み合わせで、この論点への対応を試みるものです。

この実証は2025年12月4日に公表された「トークン化投資信託の商品化に向けた基盤整備に関する協業」の延長にあり、法的整理と業務フローの構築を経て設定されました。ただし状態はあくまで実証で、商品化や販売が決まったわけではありません。財務省や金融庁の側でも、トークン化に関わる制度論点の検討が進んでいます。
トークン化された権利は、セキュリティトークン(デジタル証券)の制度と重なる部分があり、スキームによって適用される規制が変わります。なお「オンチェーンファンド」という言葉は、暗号資産やブロックチェーン関連企業に投資するファンドを指して使われることもありますが、ここで扱うオンチェーンファンドは持分そのものをトークンで管理するファンドを指します。
ここでの内容は2026年10月16日時点の公表資料に基づく制度の一般的な整理です。個別のスキームがどの規制の対象になるかは、弁護士や当局への事前相談で確認する必要があり、基準日以降の制度改正で扱いが変わることがあります。
オンチェーンファンドのリスクと注意点
オンチェーンファンドで注意したいのは、プログラム、保有者の範囲、償還、制度の4つの領域です。いずれも事業の資金繰りや取引先との移転に直接響きます。

リスク①:スマートコントラクトの不具合
トークンの発行・移転・償還はプログラムで処理されます。不具合があると、移転が止まる、誤った相手に持分が移るといった事態が起こり、名簿の正しさそのものが揺らぐことになります。監査済みかどうか、不具合時に台帳を訂正する手続きがあるかを確認する必要があります。

リスク②:保有者要件と許可リスト
BUIDLは米国証券法Rule 506(c)などに基づいて発行され、当初の最低投資額は500万ドルで適格投資家に限られていました。保有できるのは事前承認されたウォレットだけで、要件を満たさない相手には移転できません。自社の取引先や子会社へ移す前提で設計すると、運用開始後に使えない場面が出てきます。

リスク③:流動性と償還
トークンが24時間移転できても、裏付け資産の売却や償還の処理は従来の市場の時間に依存します。急いで現金化したい場面で償還が間に合わない可能性を、資金繰りの計画に織り込んでおく必要があります。

リスク④:規制の変更
国内では制度の整理が実証の段階にあり、今後の改正で必要な手続きや関係者が変わることがあります。現時点のスキームが将来もそのまま使える前提で投資判断をしないよう、見直しの時期を計画に入れておきます。

オンチェーンファンドの検討の進め方
検討は5つの段階に分けて進めます。

- ユースケースの定義:MMF・投資信託・私募のどれを対象に、何のためにトークン化するかを決める
- 法令・制度の確認:投信法・金融商品取引法上の扱いと、必要な登録・届出を確認する
- 発行基盤と関係者の選定:トークン化基盤、受託者、カストディ、データ連携の担い手を決める
- 業務・会計の設計:名簿管理、償還、分配、会計・税務の処理を既存業務とつなぐ
- 実証:本格導入の可否を判断する材料を集める場として、検証項目と判定基準を先に決めて行う
実証は試すこと自体が目的ではなく、事業化するかどうかを判定するための設計として組みます。三菱UFJグループの実証が法的整理と業務フローの構築を先に済ませてから設定されたように、2〜4の確認が終わっていない段階の実証は判断材料になりにくくなります。
| 検討の目的・論点 | 確認すること | 確認先 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 対象ユースケース | MMF・投資信託・私募のどれを、決済・担保・待機資金管理のどの用途で使うか | 事業部門・財務部門 | 対象商品と用途が1つに絞られ、社内で合意されている |
| 投信法・金商法上の扱い | 受益権の券面と原簿の扱い、必要な登録・届出 | 法務部門・顧問弁護士・当局への事前相談 | 必要な手続きの一覧と、未確定の論点が文書で整理されている |
| 発行基盤と受託・カストディ | トークン化基盤、受託者、カストディ、データ連携の分担 | 各候補事業者の公表資料・提案書 | 役割ごとの担い手と責任範囲が契約前提で確定している |
| 会計・税務処理 | トークン化持分の会計上の分類、分配・償還の処理 | 経理部門・監査法人・税理士 | 仕訳の方針と監査法人の見解がそろっている |
| 保有者要件と販売チャネル | 保有できる投資家の範囲、許可リストの運用、販売経路 | 法務部門・販売部門 | 移転できる相手の範囲と、許可リストの管理者が決まっている |
オンチェーンファンドの検討は、制度の確認、発行基盤の選定、名簿や償還の業務設計が同時に動きます。法務・財務・システムの各部門がそれぞれの論点を持ち寄っても、どの順で何を確定させるかは部門をまたいで決める必要があり、社内だけでは判断が止まりやすいところです。発行基盤の選定からスキーム設計までの進め方は支援内容で紹介しています。
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セキュリティトークンによる資金調達を検討段階から支援します。
スキーム選定・規制対応・パートナー選定まで、STO・デジタル証券の発行検討を伴走します。
STO支援サービスの詳細を見るよくある質問
個人でもオンチェーンファンドを保有できますか
ファンドごとに保有できる投資家の範囲が決まっています。BUIDLは当初、最低投資額500万ドルの適格投資家向けでした。一方でBENJIは2025年5月にP2P移転を個人保有者へ広げています。国内の三菱UFJグループの実証ファンドは、外部投資家への募集・販売を行いません。
トークン化投信とSTOはどう違いますか
STOはトークン化した有価証券を発行・募集する取り組みの総称で、不動産や社債なども対象になります。トークン化投信はその中で、投資信託の受益権をトークンで管理するものです。国内では投信法上の券面や受益権原簿の扱いという、投資信託に固有の論点が加わります。
事業会社がオンチェーンファンドを保有する意味はありますか
待機資金の置き場や、取引の担保として使う選択肢になります。BUIDLが暗号資産取引所の取引所外担保に受け入れられた例のように、トークンのまま差し入れられる点が従来のファンドとの違いです。ステーブルコインと同じ台帳で扱えるため、決済の直前まで資金を運用に回す設計も検討されています。
オンチェーンファンドのまとめ
オンチェーンファンドは、ファンド持分の記録と移転をブロックチェーン上の台帳へ移す仕組みです。米国ではBUIDLやBENJIが決済・担保の用途で先行し、国内では三菱UFJグループとProgmatが投信法との整合を実証で確かめています。

検討の中心は商品そのものよりも、受託・記録・データ連携の役割分担と、制度上の扱いの確認にあります。リスクもプログラムや償還、制度の変更に集まるため、ユースケースを決めてから法令と関係者の確認へ進みます。
自社で扱う対象を決めても、制度の扱い、発行基盤の選び方、名簿と償還の業務設計はそれぞれ別の部門の判断になります。これらを1つの計画にまとめる段階で、外部の知見を交えて論点を整理する場面が出てきます。