金融庁はデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第2回会合を開き、電子決済手段(ステーブルコイン)の発行や移転にかかる100万円の上限規制やレンディング規制の見直しについて議論を行いました。会合では事業者のJPYC株式会社やSBI VCトレードが実務上の課題を挙げて上限の撤廃や緩和を求めた一方、全国銀行協会(全銀協)は利用者保護やデジタル・ランへの懸念から慎重な検討を求めています。政府がオンチェーン金融の推進を掲げるなか、大口決済や自治体の給付金配布といった実需に向けた制度設計の方向性が注目されます。
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事業者による100万円上限の見直し要望と実務上の課題
現行制度では、資金移動業者が国内で発行する1号電子決済手段は第二種資金移動業の登録が前提となっており、為替取引1件あたり100万円の上限が課されています。また、USDCのような外国の電子決済手段を取り扱う取引業者に対しても、移転を1件あたり100万円以下に抑える措置が義務付けられています。
電子決済手段型ステーブルコインJPYCを発行するJPYC株式会社は、利用者が管理するアンホステッドウォレット(事業者が管理しないウォレット)間のオンチェーン移転は対象外であるものの、自治体や企業が原資をまとめてJPYCに換える発行の段階で1件の上限が適用される点を課題として挙げました。同社の試算によると、自治体が10万人に5万円ずつ給付金を配るケースでは、原資50億円を発行するために5,000回に分割して手続きを行う必要があります。このため同社は、受取人ごとの金額が100万円以下に区分できる場合のまとめ発行の扱いを整理することや、国や自治体、本人確認済みの法人などを相手方とする場合の上限撤廃または別枠設定を要望しました。
SBI VCトレードは、ドル建てのUSDCやRLUSDに対して1回100万円相当の移転上限や保有上限が課されていることで、法人のクロスボーダー送金や大口決済の引き合いに応えられていない現状を説明しました。そのため、日本の制度との同等性を要件とする4号電子決済手段について上限規制などの撤廃を求めています。あわせて、顧客からの貸出残高が2銘柄合算で約107億円に達しているレンディングサービスの実績に触れ、包括的な規制が存在しない現状に対して仮想通貨と同様の業規制を設けることが利用者の安心につながると提案しました。
全銀協が指摘する資金保全の遅れとデジタル・ランのリスク
全銀協は、現行の第二種資金移動業の枠組みを維持したまま上限のみを撤廃または緩和することに対して、極めて慎重な検討が必要であるとの見解を示しました。
その理由として全銀協は、第二種資金移動業における利用者資金の保全が算定期間の末日から3営業日以内と定められており、休日を挟むと発生から保全完了まで暦日で10日を超える場合がある点を指摘しています。さらに、従来型の供託を利用する事業者が破綻した際には、利用者が資金を受け取るまでに最低でも170日を要する可能性があると説明しました。
また、24時間移転が可能な電子決済手段の特性上、短時間に償還請求が集中するデジタル・ラン(取り付け騒ぎ)が発生しやすい点や、マネーロンダリング対策上のリスクも懸念事項として挙げています。全銀協は高額取引の取扱いについて認可制の第一種資金移動業で行うことが基本であるとし、銀行などの預金取扱金融機関による1号電子決済手段の発行についても直ちに進めるべき具体的なニーズは明確になっていないと述べています。
ポイント
- 金融庁の研究会で、ステーブルコインの発行・移転にかかる1件あたり100万円の上限規制やレンディング規制の見直しが議論されました。
- JPYC株式会社は50億円の給付金発行に5,000回の分割が必要となる試算を示し、法人や公的機関向けの大口発行における上限撤廃や別枠設定を要望しました。
- SBI VCトレードは法人の大口送金需要に応えるための外国ステーブルコインの上限撤廃や、約107億円規模に達したレンディングに対する業規制の整備を求めました。
- 全国銀行協会は資金保全までの日数や短時間に償還請求が集中するデジタル・ランのリスクを挙げ、現行枠組みのまま上限を緩和することに極めて慎重な姿勢を示しました。