米投資銀行のTDコーウェンは、暗号資産市場を包括的に規制する「クラリティ法案」の年内成立が困難であるとの見通しを示しました。同法案は米国におけるデジタル資産の規制明確化に向けた重要なステップとされていますが、大統領をめぐる利益相反問題や政治的対立が障壁となっています。本稿では、法案の成立が遅れる背景と今後のタイムライン、そしてこれがブロックチェーン業界に与える影響について解説します。
政治的対立と大統領の利益相反問題が法案前進の障壁に
クラリティ法案(Digital Asset Market Clarity Act)は、米国の暗号資産市場における規制の枠組みを定め、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の管轄権を整理することを目的とした法案とされています。2026年5月中旬には上院銀行委員会で可決され、民主党議員の一部も支持に回るなど、一時は前進を見せました。
しかし、TDコーウェンのワシントン・リサーチ・グループでマネージング・ディレクターを務めるジャレット・サイバーグ氏は、法案を取り巻く政治環境が急速に悪化していると指摘しています。その主な要因は、トランプ大統領に関連する一連の動向です。
具体的には、以下の点が議会内で議論の対象となっており、民主党が法案を支持する上での大きなハードルとなっています。
・トランプ氏と内国歳入庁(IRS)の訴訟和解に伴う、約17億ドルの特別基金の設立
・大統領の過去の納税申告書に対する監査の永久禁止措置
・トランプ氏の家族と暗号資産および予測市場ビジネスとの関連性
・2026年第1四半期に実行された、大統領名義の約3600件に及ぶ株式取引
民主党は、大統領に適用される厳格な利益相反基準が法案に盛り込まれない限り、支持に回ることが難しい立場をとっています。一方で共和党も、大統領を対象とした利益相反に関する修正案への採決を避けるため、法案の審議入り自体に消極的になる可能性が指摘されています。
今後のスケジュールと業界への影響
議会は中間選挙を控えており、議論を長引かせる時間的な猶予は残されていません。サイバーグ氏は、法案成立の実質的な期限を議会が8月の休会に入る前までと見積もっています。
もし年内に合意に至らない場合、今後のスケジュールは以下のように大幅にずれ込む可能性があると予測されています。
・法案の可決:2027年まで延期
・規則の施行:2029年まで延期
この法案は、米国における暗号資産規制の不透明性を解消し、業界の健全な成長を促す基盤となることが期待されているとされています。そのため、法案の成立が2027年以降にずれ込むことは、規制の明確化を待ち望むブロックチェーン業界にとって、不確実な状況がさらに数年間続くことを意味しており、ビジネスの計画や投資判断に影響を与える可能性があります。
ポイント
・米投資銀行のTDコーウェンが、暗号資産を包括的に規制するクラリティ法案の年内成立は困難との見通しを示しました。
・トランプ大統領に関連する特別基金の設立や家族のビジネス、株式取引などを巡り、利益相反基準の導入を求める民主党と、審議に消極的な共和党との間で政治的な対立が深まっています。
・中間選挙を控え時間がない中、法案成立の実質的な期限は8月の休会前と見られています。
・年内に合意できない場合、法案可決は2027年、規則施行は2029年までずれ込む可能性があり、業界の規制明確化が遅れる要因となる点で注目されます。