ブロックチェーン分析企業であるChainalysis(チェイナリシス)は、近く公開予定のレポート「The New Rails」のプレビューとなるブログ記事を公開し、暗号資産業界におけるコンプライアンス基準が急速に厳格化している実態を明らかにしました。Chainalysisはブロックチェーン上の取引データを分析するソフトウェアやコンプライアンスソリューションを世界各国の金融機関や政府機関、暗号資産企業に提供している企業とされています。また、同レポートはデジタル資産が金融機関にどのような変革をもたらしているかを分析したものとされています。レポートによると、2026年に新規参入した組織の半数近くが、5年前であれば業界最高水準とされた極めて厳格なモニタリング体制を導入しています。しかし、その一方で仲介アドレスを経由した資金移動を追跡する「間接監視」の基準には依然として緩さがあり、不正行為者に悪用されるリスクが指摘されています。
業界全体のコンプライアンス基準が急速に向上
Chainalysisの報告によると、暗号資産業界は厳格化する規制やハッカーによる脅威の増大に対応するため、セキュリティとコンプライアンスを大幅に強化しています。
同社がアラートの重大度や検知の最低基準額などを組み合わせて算出した「コンプライアンス指数」によると、2020年から2021年にかけて参入した組織のうち、当時の最高水準(上位10%)を満たしていたのは約10%にとどまっていました。しかし、この指数は2023年を境に大きく上昇しています。
2026年に新規参入した組織においては、半数近くが2020年時点の上位10%に相当する積極的なモニタリング体制を初期段階から導入しているとされています。Chainalysisは、今日の標準的なコンプライアンス設定がわずか5年前の業界最先端水準に達しているとし、エコシステムが急速に成熟している兆候であると評価しています。
課題として浮き彫りになる「間接監視」のギャップ
コンプライアンス基準全体が向上している一方で、監視手法のギャップという新たな課題も浮き彫りになっています。
既知の不正な送金元から直接資金が届くケースを監視する「直接監視」においては、各社の対応が標準化され、均質化が進んでいます。しかし、複数の仲介アドレスを経由して送金されるケースを監視する「間接監視」においては、依然として対応に大きな差が存在します。
特に、ランサムウェアや詐欺、ダークネット市場といった高度な不正行為が疑われるカテゴリーにおいて、間接監視の検知基準は直接監視に比べて10倍から20倍も緩く設定される傾向があるとされています。この監視基準の差が、不正資金を移動させる経路として悪用される隙を生み出しているとChainalysisは警告しています。
Web3ビジネスにおける今後の影響と差別化
Chainalysisの調査チームは、直接監視と間接監視の間に存在するギャップが、不正行為者にとっての抜け穴になっていると指摘しています。
このギャップを能動的に埋め、間接監視の基準を強化する組織は、規制上の正当性を高めることができるとされています。また、セキュリティ意識の高いWeb3業界において「信頼できる取引相手」としての地位を確立し、他社との差別化を図る上でも重要なビジネス戦略になると見られます。
ポイント
- 2026年に参入した暗号資産関連組織の半数近くが、2020年における上位10%に相当する極めて厳格な監視体制を導入しており、業界全体のコンプライアンス基準が大幅に向上しています。
- 不正な送金元から直接届く資金を監視する「直接監視」は標準化が進んでいるものの、仲介アドレスを経由する「間接監視」においては依然として監視体制にギャップが存在します。
- ランサムウェアや詐欺などのカテゴリーでは、間接監視の基準が直接監視に比べて10〜20倍も緩く設定されている場合があり、不正資金移動の抜け穴となるリスクが懸念されます。
- 間接監視のギャップを早期に埋める取り組みを行う組織は、規制上の正当性を証明し、他社との差別化や取引相手からの信頼獲得につながる可能性があります。