米金融大手JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは、現在アメリカ連邦議会で審議中の暗号資産市場構造法案「クラリティ法案(CLARITY Act)」の現行版に対し、銀行業界として反対の姿勢を貫く方針を明らかにしました。ダイモン氏は、暗号資産企業による利息支払いの容認や規制の不十分さを強く批判しています。この対立は、伝統的な銀行業界と暗号資産分野の企業との間で、デジタル資産の規制基準を巡る主導権争いが激化していることを示しており、法案の年内成立の行方に大きな影響を与える可能性があります。
ジェイミー・ダイモンCEOによるクラリティ法案への批判と主張
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは、2026年5月29日にFOXビジネスに出演し、クラリティ法案の現行版に対して戦い続けると表明しました。ダイモン氏が特に問題視しているのは、法案の最新版が暗号資産企業に対してユーザーの預金やステーブルコイン(米ドルなどの法定通貨と価値が連動するよう設計されたデジタル資産)残高への利息支払いを事実上可能にしている点です。同氏は、銀行はこのような状態では受け入れないと明言し、利回り商品を提供したい企業は銀行免許を取得すべきだと主張しました。
さらにダイモン氏は、暗号資産サービス事業者に対する規制が、銀行に課されている基準と比較して著しく不十分であると指摘しています。具体的には、銀行が遵守すべきマネーロンダリング対策(AML)規定、銀行秘密法(BSA)に基づく制裁措置、および資本準備金要件が、暗号資産事業者に対して課されていない点を挙げました。同氏は、法案成立を後押しするコインベース(Coinbase)のブライアン・アームストロングCEOを名指しで批判し、銀行界が圧力に屈することはないと強調しています。
法案の現状と年内成立に向けた政治的ハードル
クラリティ法案(Digital Asset Market Clarity Act)は、米国における暗号資産の規制上の分類を明確化し、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)などの管轄権を整理することを目的とした包括的な法案とされています。しかし、その成立に向けた政治的プロセスには依然として高いハードルが存在します。
同法案は2026年5月に上院銀行委員会を通過したものの、賛成した民主党議員はわずか2名にとどまりました。このため、上院本会議の審議においては超党派の支持不足が大きな壁となる可能性があります。
法案が正式に発効するためには、連邦議会の上下両院を通過した上で、トランプ大統領の署名を得る必要があります。シンシア・ルミス上院議員は自身のXで今議会中に法案を成立させることの重要性を訴え、この機会を逃せば次のチャンスは2030年になると警告しています。なお、予測市場Polymarketにおける2026年中の法案成立確率は、現時点で約60%にとどまっています。
ポイント
- JPモルガンのダイモンCEOが、暗号資産市場構造法案「クラリティ法案」の現行版に強く反対し、銀行業界として抗議を続ける意向を示した点で注目されます。
- 銀行業界が、暗号資産企業による利息支払いの容認や、マネーロンダリング対策(AML)、資本準備金要件といった規制が不十分である点を問題視していることが明らかになりました。
- 法案成立を推進するコインベースのアームストロングCEOと、反対する銀行業界トップの対立が浮き彫りになり、業界間の主導権争いが激化している点で注目されます。
- 法案は5月に上院銀行委員会を通過したものの、民主党からの賛成が極めて少なく、本会議での超党派の支持獲得が今後の大きな課題となる点に注目が集まります。
- ルミス上院議員が早期成立を促す一方で、予測市場Polymarketにおける2026年中の成立確率は約60%にとどまり、法案成立の不確実性が依然として高い点で注目されます。