パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)とアクティアは2026年6月2日、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティ・プラットフォーム「Tracephere(トレースフィア)」の事業展開に向け、戦略的パートナーシップを締結したと発表しました。Tracephereは、製品や素材のライフサイクルに関する情報を記録・連携するトレース基盤です。この提携により、両社は循環経済領域などにおける信頼性の高いデータ連携基盤の社会実装を進めることになり、Web3技術のビジネス展開の観点から業界内で注目を集めています。
提携の背景と両社の役割分担
脱炭素や循環経済(サーキュラーエコノミー)の進展、サプライチェーン全体における信頼性の高い情報流通へのニーズの高まりを背景に、製品や素材のライフサイクル全体のトレーサビリティや、CO2排出量および資源循環率の可視化が重要視されています。
パナソニックHDは、2017年からブロックチェーン技術に関するプロジェクトを進めており、これまでに照明器具の循環リサイクル実証などを通じて「Tracephere」の開発を推進してきました。
今回の提携において、パナソニックHDはTracephereの企画・研究開発やユースケースの創出を担います。一方で新規事業やDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を手がけるアクティアは、この基盤を組み込んだクラウドシステムの開発・導入を進めます。さらに、サービス提供型ビジネスを主軸とする子会社のCALMと連携し、SaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)などのサービス型ビジネスとして提供・運営を行う役割を担います。
Tracephereの技術的特徴と想定される活用領域
Tracephereは、ブロックチェーン技術を用いて製品や素材のライフサイクルデータを記録・連携するプラットフォームです。この技術は、2025年1月に開催されたテクノロジー見本市「CES 2025」で初披露されたとされています。
具体的な仕組みとして、製品が形を変えるたびに代替不可能なデジタルデータであるNFT(Non-Fungible Token)の証明書を発行して紐づけることで、流通経路や資源循環の流れを証明できるとされています。
想定されている主な活用領域は以下の通りです。
- 製品や素材のリユース、リファービッシュ、リサイクル工程に関するデータの記録
- CO2排出削減効果の定量化
- 資源循環率の可視化
- NFT証明書を用いたサプライチェーン全体の貢献の可視化
これにより、企業は再生素材が本当に再生品であるか、またどの程度のCO2が削減されたかを改ざん困難な形で証明できるようになり、環境価値の透明性を担保することが可能になるとされています。
今後の展開とブロックチェーン業界への影響
両社は今後、循環経済領域での社会実装を進めるとともに、製造、流通、エネルギー、公共分野など、信頼性の高いデータ連携が求められる幅広い産業領域への展開を検討していく予定です。
これまで暗号資産などの投機的な側面が注目されがちだったブロックチェーン技術ですが、パナソニックHDのような大手製造業が実用的な「資源証明」や「環境価値の可視化」といった実需領域での事業化に本格的に乗り出したことは、本技術が企業の経営課題を解決する信頼性の高いインフラとして社会に根づきつつあることを示していると見られます。
ポイント
- パナソニックHDとアクティアが、ブロックチェーン基盤「Tracephere」の事業化に向けて戦略的パートナーシップを締結しました。
- パナソニックHDが開発を担い、アクティアとその子会社CALMがクラウドシステムの開発やSaaS形式でのサービス提供・運営を担当します。
- 製品や素材のライフサイクルデータをNFT証明書を用いて記録し、改ざん困難な形で資源循環率やCO2排出削減効果を可視化します。
- 循環経済領域だけでなく、製造、流通、エネルギー、公共分野など、業界横断での信頼性の高いデータ連携基盤としての展開が検討されています。
- 大手企業が実用的な資源証明の社会インフラとしてブロックチェーンを事業化する動きは、Web3技術の実社会への実装が進展していることを示す事例として注目されます。