ビットコインマイナーがAI事業への転換を加速、手数料は2019年以来の低水準に急落

ビットコインのトランザクション手数料が2019年以来の低水準に急落し、マイナーの収益が弱気相場レベルにまで落ち込んでいます。こうした厳しい収益環境を背景に、多くのビットコインマイナーが人工知能(AI)やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けのデータセンター事業へと事業を転換する動きを加速させています。本稿では、マイニング業界で起きているこの劇的な構造変化の背景と、それがWeb3業界に与える影響について解説します。

収益性の極端な悪化とハッシュプライスの低下

ビットコインマイナーがAI事業への転換を加速、手数料は2019年以来の低水準に急落

現在、ビットコインマイナーは厳しい収益環境に直面しています。ビットコインのトランザクション手数料は2019年以来の低水準にまで落ち込んでおり、マイナーの収益力を示すハッシュプライス(1 terahash/秒あたりの1日の推定収益)は、過去最低水準となる0.28ドルに急落したとされています。

この背景には、ビットコインの価格下落やオンチェーンアクティビティの低下があるとされています。また、2024年の半減期以降、ブロック報酬が減少した中で、かつて収益の補填となっていたトランザクション手数料の貢献度も著しく低下しています。これにより、最新かつ最も効率的なマイニング機器や、非常に安価な電力へのアクセスを持たない多くのマイナーにとって、マイニング事業の継続が極めて困難な状況に陥っていると見られます。

マイナーからAIインフラ企業への転換

マイニングによる収益性が大幅に悪化する一方で、AI分野におけるインフラ需要は世界的に急増しています。こうした状況から、多くのビットコインマイナーが自社の持つ強力な電力インフラやデータセンター設備を、AIやHPC向けに再配分する動きを見せています。

Capriole Investmentsのデータによると、主要な上場マイニング企業のすべてが何らかの形でAIへの事業転換を表明しているとされています。具体的には、IREN(旧Iris Energy)やTeraWulf、Core Scientific、Hut 8、Bitdeer、Cipher Miningなどのマイニング企業が、AIおよびHPCフォーカスのデータセンター運営への移行を深めています。

マイナーにとって、メガワット時あたりの収益という観点から見ると、AIやHPCのオペレーター向けにインフラを提供する方が、ビットコインマイニングよりもはるかに予測可能で、かつ高い利益率をもたらすとされています。そのため、マイニング企業はAIインフラ提供企業としての側面を急速に強めています。

業界への影響と今後の懸念

このマイナーによるAIへのシフトは、ブロックチェーン業界のビジネスパーソンにとっても見過ごせない重要な意味を持っています。

まず、収益性が悪化し、AIデータセンターへの事業転換や運営資金を確保するため、マイナーが保有するビットコインを売却する動きが見られます。これはビットコイン市場における一時的な売り圧力となり、価格の回復を遅らせる要因になっている可能性があります。

次に、非効率なマイニング機器を使用する中小マイナーが事業を縮小または停止し、大手やプライベート事業者、安価なエネルギーを確保できるプレイヤーへハッシュレートが集中する傾向が強まっています。これはビットコインネットワークのセキュリティや分散性に長期的な影響を与える可能性があります。

ポイント

  • 手数料と収益の急落:ビットコインのトランザクション手数料が2019年以来の低水準に落ち込み、マイナーの収益は過去最低レベルに達しています。
  • AIやHPCへの急速なシフト:マイニングの採算悪化とAI需要の爆発的増加を背景に、主要な上場マイナーのすべてがAIやHPCデータセンター事業への転換を表明・加速させています。
  • 高い収益性と予測可能性:AIやHPC向けに電力を供給する事業は、ビットコインマイニングよりもメガワット時あたりの収益性が高く、安定した利益をもたらすとされています。
  • 市場への売り圧力:AI事業への投資や運営資金を調達するため、マイナーが保有するビットコインを売却する動きがあり、市場価格の重石となっていると見られます。
  • ネットワーク構造の変化:収益性の悪化によって非効率なマイナーの退出が進み、一部の有力な事業者にハッシュレートが集中する懸念が生じています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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