米商品先物取引委員会(CFTC)は2026年6月12日、ニューメキシコ州を相手取り、同州がCFTC登録市場に州の賭博法を適用することを阻止するための訴訟を連邦裁判所に起こしました。この動きは、急速に拡大する予測市場、とりわけスポーツ関連のイベント契約をめぐる規制権限(管轄権)の争いの一環です。連邦政府による専属的管轄権を主張するCFTCと、独自の規制権限を主張する州政府との対立は、予測市場事業者や関連するWeb3業界のビジネスパーソンにとって、今後の法的な準拠基準を左右する重要な局面となっています。
訴訟の経緯と双方の主張
今回の訴訟は、ニューメキシコ州がその前週に、予測市場プラットフォームであるKalshiEX(カルシEX、特定の出来事の結果を予測して取引する「イベント契約」を提供する米国の取引所とされています)を州裁判所に提訴したことが発端となっています。
ニューメキシコ州側の主張によれば、カルシEXは必要なライセンスを取得せずに同州内で違法なオンラインスポーツ賭博を提供しており、さらに州の法定年齢である21歳に満たない18歳から20歳の住民の参加を認めていたとしています。同州のラウル・トレス司法長官は、州内での合法的なゲーミングは、部族と州のゲーミング協定、または厳格な州規制の下でのみ運営されるべきであると説明しています。
これに対しCFTCは、カルシEXのようなCFTCに登録された市場で取引されるイベント契約(特定の出来事の結果を予測して取引する契約)は、商品取引所法(CEA)に基づき、CFTCが専属的な管轄権を持つと主張しています。CFTCは訴状において、ニューメキシコ州による法執行は連邦政府および同委員会の権限を侵害するものであるとし、州法の適用を差し止める恒久的な命令を求めて連邦裁判所に提訴しました。訴訟の対象には、同州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事やトレス司法長官らが含まれています。
全米に広がる管轄権争いと政治的動向
予測市場の管轄権をめぐる対立は、ニューメキシコ州にとどまらず全米に広がっています。CFTCはここ数カ月、スポーツベッティングにおける管轄権を主張するため、複数の州を相手に訴訟を起こしています。関連する訴訟は、ニューメキシコ州のほか、アリゾナ州、コネチカット州、イリノイ州、ニューヨーク州、ミネソタ州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州の計8州に及んでいます。
一方で、連邦政府内でも予測市場のルール化に向けた動きが活発化しています。
2026年5月28日には、ホワイトハウスが予測市場のルール化に関する審査を開始したと報じられており、トランプ大統領は予測市場におけるCFTCの独占的管轄権を支持する意向を示しているとされています。しかし一方で、エリザベス・ウォーレン上院議員がCFTCに対し、暗号資産や予測市場の監督能力に疑問を呈する書簡を送るなど、連邦議会内には慎重な見方もあります。これに対し、CFTCは2026年6月11日に、急成長する予測市場に対する包括的な規制案を発表するなど、監督体制の整備を急いでいます。
業界への影響と技術的・ビジネス的意味合い
予測市場は、ブロックチェーン技術や暗号資産とも親和性が高く、Web3業界でも注目を集めている分野です。今回の連邦政府と州政府による管轄権争いは、今後のビジネス展開において以下の影響を与える可能性があります。
第一に、規制の統一性(シングルスタンダード)の確保です。もしCFTCの主張する専属的管轄権が認められれば、予測市場プラットフォームは連邦法に基づく統一された基準のもとで全米にサービスを展開できるようになります。一方で、州側の主張が認められた場合、事業者は各州独自の賭博法やライセンス要件に対応しなければならず、法的な準拠コストが大幅に増加する可能性があります。
第二に、「イベント契約」の法的性質の定義です。これらがデリバティブ取引(金融商品)として連邦政府に監督されるべきか、あるいはオンラインスポーツ賭博として州政府に規制されるべきかという判断は、予測市場のビジネスモデルそのものの存続に関わります。特に、今回のケースのように年齢制限(連邦登録市場の18歳以上か、州賭博法の21歳以上か)などの具体的な運用ルールに直接影響を及ぼすと見られます。
ポイント
- 米CFTCが、予測市場プラットフォーム「KalshiEX」に州の賭博法を適用しようとしたニューメキシコ州を連邦裁判所に提訴しました。
- CFTCは商品取引所法(CEA)に基づき、登録市場のイベント契約に対して連邦政府が専属的な管轄権を持つと主張しています。
- 同様の管轄権争いは、ニューメキシコ州を含む全米8州で発生しており、連邦政府と州政府の対立が激化しています。
- ホワイトハウスがルール化の審査を開始し、トランプ大統領がCFTCの独占権を支持する一方で、ウォーレン議員が監督能力に疑問を呈するなど、政治的な議論も活発化しています。
- 予測市場が「金融商品」か「賭博」かという法的な位置づけの決着は、今後のWeb3や予測市場関連ビジネスにおける規制リスクを大きく左右する可能性があります。