米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産や予測市場ファンドなど、これまでにない資産クラスや新しい投資戦略を採用する「新型ETF(Novel ETFs)」について、一般からの意見募集(パブリックコメント)を開始しました。意見募集の期間は、連邦官報への掲載後60日間となっています。この動きは、暗号資産ETFの仕組みや投資戦略が急速に複雑化する中、既存の規制が十分に対応できているかを検証し、将来的な規制の枠組みを検討するためのものです。市場の急成長に伴い、投資家保護と金融イノベーションのバランスをどのように取るかが、当局にとって重要な課題となっています。
新型ETF規制見直しの背景と目的
SECのポール・アトキンズ(Paul Atkins)委員長が、5月に20件以上の保留中である申請案件の上場を一時停止する声明を発表したことに続き、今回の正式な意見募集が開始されました。アトキンズ氏は2025年にSEC委員長に就任したとされています。
SECは、これまでにない資産クラスに投資したり、新しい投資戦略を用いたりする上場投資信託(ETF)を「新型ETF」とし、現行のルールがなお妥当であるかを検証する狙いがあります。具体的には、既存の規制が新型ETFに十分対応できているか、これらのファンドをどのように規制すべきか、そして新商品の流入に伴い登録手続きの見直しが必要かといった点について、市場関係者から幅広く意見を募ります。
背景には、ETF市場の急速な拡大があります。SECによると、ETFの運用資産残高は2019年の約4兆ドル(約650兆円)から、2025年末には12兆ドル超(約1950兆円超)へと大幅に増加しています。
複雑化する暗号資産ETFの投資戦略
近年、暗号資産ETFの発行体は、単に暗号資産の価格に連動する商品から、より複雑な投資戦略を取り入れた商品へとシフトしています。これらは、暗号資産、オプション、ステーキング、ステーブルコイン、伝統的資産などを組み合わせた、多様な設計が特徴です。
最近の具体的な動きとして、以下のような商品が提案・ローンチされています。
ステーキング報酬の獲得:グレイスケール(Grayscale)は、HYPEへの投資機会を提供しながら、ステーキング報酬の獲得を目指す「ハイパーリキッド・ステーキングETP(HYPG)」を立ち上げました。なお、Hyperliquid(ハイパーリキッド)は分散型のデリバティブ取引プラットフォームであり、HYPEはそのネイティブトークンであるとされています。
ステーブルコイン準備資産の活用:プロシェアーズ(ProShares)は、決済用ステーブルコインに関する「ジーニアス法(GENIUS Act)」で認められた準備資産を念頭に、米国債を中心に運用する「ジーニアス・マネーマーケットETF」を6月に発表しました。ジーニアス法は、米国で初めてステーブルコインを包括的に規制する連邦法として2025年7月に成立したとされています。
オプション取引やカバードコール戦略:ブラックロック(BlackRock)はオプションを活用した「ビットコイン・プレミアム・インカムETF」を提案しており、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)も現物ビットコインとカバードコール戦略を組み合わせたファンドを4月に打ち出しています。
伝統資産との組み合わせ:ビットワイズ(Bitwise)は、ビットコインと金、貴金属、鉱山株を組み合わせたアクティブ運用型ETFを1月にローンチしました。また、フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)は、米国株の配当をビットコイン関連投資へ機械的に再投資するETFを今月初めに提案しています。
このように、ETFはもはや単純な指数連動型商品にとどまらず、最先端の金融技術を組み合わせた実験場となっており、これが当局による規制見直しの直接的な要因となっています。
業界への影響と今後のスケジュール
今回のパブリックコメントの期間は、連邦官報への掲載後60日間です。この期間中、市場関係者は将来的な規制変更に影響を与える意見を提出する機会を得ることになります。
また、米国の市場規制当局はこれ以外にも規制の調和を進めており、先週にはSECと米商品先物取引委員会(CFTC)が、証券市場とデリバティブ市場にまたがるポートフォリオ・マージン規則の調和について市場から意見を求めています。
これらの規制見直しの動向は、今後暗号資産をはじめとする革新的な金融商品がどのような枠組みで市場に提供されるかを決定づけるため、Web3業界や伝統的な金融機関のビジネスパーソンにとって極めて重要な意味を持ちます。
ポイント
- 米SECは、暗号資産や予測市場ファンドなどを含む新型ETFの規制見直しに向け、60日間の意見募集を開始しました。
- この動きは、5月にポール・アトキンズSEC委員長が20件以上の申請案件の上場を一時停止した声明に続くものです。
- 暗号資産ETFは、単なる価格連動型から、ステーキングやステーブルコイン準備資産、伝統資産との組み合わせ、オプション戦略の活用など、複雑な投資戦略を取り入れた商品へと進化しています。
- ETF市場全体の運用資産残高は、2019年の約4兆ドルから2025年末には12兆ドル超へと急拡大しており、当局は投資家保護とイノベーションのバランスを重視しています。
- パブリックコメントの募集は、今後の新型ETFの登録手続きや規制のあり方に直接影響を与える可能性があり、市場関係者の動向が注目されます。