EUのMiCA規制、施行から2年で「資産参照トークン(ART)」の認可数は依然ゼロ 構造的障壁の解消に向け見直しを求める声

欧州連合(EU)の包括的な暗号資産規制「MiCA(暗号資産市場規制)」の施行から2年が経過した現在、認可を受けた暗号資産関連企業が約280社に達する一方で、「資産参照トークン(ART)」の認可を得た発行体はいまだに存在しないことが明らかになりました。業界関係者からは、このカテゴリーにおける規制要件が実務上の高い障壁になっているとの指摘が出ており、EUによる今後の規制見直しの機会に制度の修正やカテゴリー自体の廃止を求める声が上がっています。本件は、欧州における多様なデジタル資産市場の発展を左右する重要な課題として注目されています。

拡大する認可企業と「ART」の深刻な停滞

MiCAの施行以降、EU域内では暗号資産サービスプロバイダー(CASP)や電子マネートークン(EMT)の発行体など、合計で約280社がライセンス認可を取得したとされています。このように規制への適応が進む一方で、複数の資産やコモディティを裏付けとする「資産参照トークン(ART)」の認可取得数はゼロという、極めて対照的な状況が続いています。

MiCAにおけるステーブルコインの分類では、ユーロや米ドルなど単一の法定通貨に連動する「電子マネートークン(EMT)」と、複数の法定通貨、商品(金などのコモディティ)、あるいは暗号資産のバスケットに裏付けられた「資産参照トークン(ART)」の2つに大別されます。EMTについては現在までに21の発行体が認可され、35のトークンが流通しているのに対し、ARTは認可されたアセットが一つもない状態となっています。

規制フレームワークにおける構造的障壁の指摘

ステーブルコイン発行大手Circle社のEU戦略・政策担当シニアディレクターであるパトリック・ハンセン(Patrick Hansen)氏は、欧州証券市場監督局(ESMA)のデータに基づき、この現状を指摘しています。同氏によると、MiCAにおいてARTのルールを規定する「Title III」および「Title IV」の要件が、市場参入における構造的な障壁になっている可能性があるとされています。

ハンセン氏は、この持続的なゼロという数字は制度上の摩擦を示しているとし、EUが今後行う予定のMiCAレビュー(規制評価プロセス)において、ARTカテゴリーの要件を修正するか、あるいはカテゴリー自体を廃止・削減することを望む意向を示しています。

Web3ビジネスへの影響と今後の展望

この問題は、欧州の暗号資産市場における多様なアセットトークンの創出に大きな影響を与えています。コモディティ(商品)や現実世界資産(RWA)のトークン化はWeb3業界で大きな関心を集める分野ですが、現状の厳しいART規制が新規参入を阻む要因になっていると見られます。

EUによる今後のMiCAレビューにおいて、ARTに関する規定が実務に即した形へと緩和、または再定義されるかどうかが、今後の欧州におけるステーブルコインおよびトークン化市場の活性化に向けた重要な焦点となると見られています。

ポイント

  • MiCA施行から2年が経過した現在、約280社が暗号資産関連のライセンスを認可されている一方、ART(資産参照トークン)の認可数はゼロにとどまっています。
  • ARTは、金などのコモディティや複数資産のバスケットを裏付けとするトークンであり、MiCAの「Title III」および「Title IV」で厳格に規制されています。
  • Circle社のパトリック・ハンセン氏は、この状況が制度的な構造障壁を証明しているとし、EUの規制レビューにおいて同カテゴリーの修正または廃止を求めています。
  • 単一の法定通貨に連動するEMT(電子マネートークン)は21の発行体が認可を得ており、ARTの停滞と対照的な進捗を見せています。
  • 今後行われるMiCAのレビューでART規制がどのように見直されるかが、欧州における多様なデジタルアセット市場の発展において注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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