カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領が、国内における暗号資産(仮想通貨)の導入と産業の発展を加速させるための新たな大統領令に署名しました。この大統領令は、マイニング向けのガス火力発電の活用、規制された暗号資産取引に対する所得税の免除、国境を越えたステーブルコイン決済の実現などを目指すものです。これまで進められてきた法的な枠組みの整備から、より実践的な産業の育成と経済への統合へと大きく舵を切る動きとして注目されています。
大統領令の主な目的と背景
カザフスタン大統領府が発表した「カザフスタン共和国におけるデジタル資産産業の刺激および発展に関する措置について」と題された大統領令は、デジタル資産市場の法的・経済的条件をさらに発展させ、投資を誘致し、同国をデジタル技術の地域ハブとして位置づけることを目的にしています。
この大統領令は、人工知能・デジタル開発省、カザフスタン国立銀行(中央銀行)、およびアスタナ国際金融センター(AIFC)が共同で作成したものです。カザフスタンでは2026年5月1日に新しいデジタル資産の法的枠組みが施行され、取引所やプラットフォームのライセンス制度が導入されるなど、基本的な規制環境の構築が進められてきました。今回の決定は、こうした法整備の段階から、業界の具体的な成長を支援する段階へと移行することを示しています。
提示された具体的な支援策と規制方針
大統領令では、暗号資産産業を刺激するためのいくつかの重要なアプローチが提示されています。
まず、税制面の優遇措置として、カザフスタン国内の規制されたインフラを通じて行われるデジタル資産取引から得られる個人所得について、所得税を免除する計画が盛り込まれています。これは、これまで未規制の海外プラットフォームを利用していたユーザーに対して、国内のライセンスを保有するサービスプロバイダーへの資産移転や、資産の自主的な開示を促すためのインセンティブとして機能することが期待されています。
次に、国境を越えた決済の利便性向上です。輸出入業務を行う国内ビジネスをサポートするために、デジタル資産やステーブルコインをクロスボーダー決済や資金移動に活用するメカニズムを開発・導入することが計画されています。
さらに、エネルギー資源の有効活用も含まれています。石油やガス田から発生する随伴ガスや天然ガスを自律的な発電に利用し、これをデジタルマイニング(暗号資産マイニング)の電力として供給できる仕組みを導入します。ただし、このガス利用は国家の優先的な需要に影響を与えない範囲に限定されるとされています。
今後のスケジュールと展開
今回の新しい大統領令を受けて、カザフスタン国立銀行や関連当局は、暗号産業の中期計画の策定を進めています。
この計画の中には、分散型金融(DeFi)に対する規制アプローチの定義、トークン化された金融商品の開発、さらにはトークン化された国債の発行プロジェクトの立ち上げなどが含まれているとされています。また、ステーブルコインの発行者に対するマネーロンダリング防止要件の適用など、規制の強化も並行して行われる見通しです。
ポイント
- カザフスタン大統領が暗号資産産業の発展を促進する新たな大統領令に署名しました。
- 国内の規制されたプラットフォームでの取引に対する個人所得税の免除により、取引の国内回帰と透明化を狙う点で注目されます。
- 輸出入を行う国内企業を支援するため、国境を越えた決済におけるステーブルコインやデジタル資産の活用メカニズムを構築する点が実務上の影響として大きいです。
- 石油やガス田から発生する随伴ガスなどをマイニングの独自電源として有効活用する仕組みが導入されます。
- 今後は、トークン化された国債の発行や分散型金融(DeFi)の規制アプローチ定義に向けた中期計画が策定される予定です。