ロシア議会下院の金融市場委員会が、仮想通貨規制法案の修正版を承認しました。最大の変更点はロシア居住者に対する仮想通貨ウォレットアドレスの開示義務の撤廃であり、代わりに残高と取引量の申告を求める内容に緩和されました。この法案は、ロシアが仮想通貨を対外貿易決済や国内の金融市場へ統合していくための包括的な枠組みの一部となります。
ウォレットアドレス開示義務の撤廃と司法保護の導入
ロシア議会下院の金融市場委員会が承認した修正案では、ロシア居住者に義務付ける予定だった仮想通貨ウォレットアドレスの開示条項が撤廃されました。金融市場委員会委員長のアナトリー・アクサコフ氏によると、この決定は個人情報の漏洩や悪用といったリスクを低減するための措置です。今後はアドレスそのものではなく、保有残高と取引量のみの申告を求める方針へと変更されました。
また、過去の申告状況に関係なく、仮想通貨保有に対する司法的保護を保障する条項が新たに設けられました。これは憲法裁判所の見解を踏まえた規定とされています。
個人投資家への投資制限と不正防止対策
修正案では、個人投資家の参加資格について適格・非適格の区分が維持されています。非適格投資家に対しては、投資対象を流動性の高い仮想通貨のみに制限し、規制仲介業者1社あたりの年間購入上限を30万ルーブルと定めています。
さらに、不正防止やセキュリティ強化のための措置も盛り込まれました。規制取引所から仮想通貨を送金する際は、購入者本人のウォレットへの送金に制限されます。また、海外または第三者への大口送金に対しては、48時間の保留期間を義務付けることになりました。
対外貿易決済での仮想通貨活用とデジタルルーブルの普及
ロシアは、対外貿易において仮想通貨やステーブルコインを活用する決済制度の整備を段階的に進めています。すでに施行されている法的枠組みに基づき、輸出入企業はビットコインやステーブルコインを対外貿易決済に利用することが認められており、中央銀行が認可した8つのプラットフォームでの取引が可能です。2025年における仮想通貨を介した対外貿易規模は約1兆ルーブルに達しており、中国、インド、トルコとの取引が中心を占めているとされています。
これと並行して、ロシア中央銀行は中央銀行デジタル通貨であるデジタルルーブルの普及にも取り組んでいます。中央銀行総裁は、広範な普及に向けた準備が整ったと言及しており、システム上重要な銀行12行と大手小売業者に対してデジタルルーブルの受け入れ義務化を進めています。
今後のスケジュール
この修正法案は今後、国家院での第2読会を経て本格的な審議に入る予定です。なお、個人によるノンカストディアルウォレット(自己管理型ウォレット)の使用規制については、現時点で金融市場委員会からの明確な言及はありません。
ポイント
- ロシア居住者に対する仮想通貨ウォレットアドレスの開示義務が撤廃され、保有残高と取引量の申告のみに緩和された点。
- 過去の申告状況にかかわらず、保有する仮想通貨への司法的保護を保障する条項が新設された点。
- 非適格投資家に対する年間購入上限を30万ルーブルに設定し、流動性の高い仮想通貨のみに制限した点。
- 海外や第三者への大口送金に対して48時間の保留期間を義務付けるなど、不正防止策が導入された点。
- ビットコインやステーブルコインを用いた対外貿易決済の枠組みがすでに施行されており、デジタルルーブルの導入準備も進められている点。