米国商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ委員長は、暗号資産の市場構造に関する法案「Clarity Act(クラリティ法)」が議会で停滞した場合、規制当局がすべてのルールを独自に策定することになると警告しました。セリグ委員長は、現行の州ごとの複雑な規制がビジネスに悪影響を与えていると指摘し、連邦基準の確立が不可欠であると強調しています。本法案は、CFTCと証券取引委員会(SEC)の間で規制管轄を分担することを目指していますが、議会内の対立などにより成立への不透明感が漂っています。
規制の不確実性と連邦基準の必要性
セリグ委員長は、インタビューにおいて、暗号資産市場における連邦基準の確立が極めて重要であると訴えました。同氏によると、現在は各州独自の法律や規制が混在するパッチワーク状態にあり、これがビジネスの展開において重大な障壁になっているとされています。
クラリティ法案は、暗号資産に対する規制権限をCFTCとSECの間で分割・整理し、市場の確実性、明確性、および消費者保護を提供することを目的としています。セリグ委員長は、議会がこの法案を通さなければ、最終的に規制当局側が自らルールを策定せざるを得なくなると警告しています。
法案の進捗と議会における主な対立点
クラリティ法案は、2025年7月に下院を通過し、2026年5月14日には上院銀行委員会で可決されましたが、上院全体での採決はまだ行われていません。セリグ委員長は、8月の議会休会前の可決を促しています。
しかし、法案の成立に向けては以下のような障害が指摘されています。
・倫理規定を巡る対立
民主党議員は、トランプ大統領やその家族、および彼らの暗号資産事業に関連する倫理基準の文言を盛り込むよう求めており、セリグ委員長はこれが超党派の機会を損ねていると非難しています。
・非カストディアル開発者への懸念
法執行機関からは、非カストディアル(自己管理型)開発者を保護する条項が監視の抜け穴を生み、不正資金移動の捜査を難しくする可能性があるとの懸念が示されています。
・交渉の長期化
上院デジタル資産小委員会のシンシア・ルミス委員長によると、分散型金融(DeFi、中央管理者を介さずにブロックチェーン上で行われる金融サービス)や不正資金対策、倫理規定などを巡る交渉は2025年秋から継続しているとされています。
業界への影響と今後の見通し
米国の暗号資産市場に明確なルールが整備されるかは、Web3ビジネスを展開する企業にとって極めて重要です。法案が成立すれば、CFTCとSECの管轄が明確化され、規制の予見可能性が高まると期待されています。
一方で、上院の過密なスケジュールなどから、2026年内の法案成立に対する見方は慎重化しています。民間企業の調査では、年内の成立確率の予測を従来の60%から50%に引き下げたとされており、秋の中間選挙前の成立についても確実ではないと見られています。
ポイント
・CFTCのセリグ委員長は、クラリティ法案が停滞した場合、規制当局が主導してすべての暗号資産ルールを策定することになると警告しました。
・同氏は、現在の州ごとのパッチワーク的な規制がビジネスに悪影響を及ぼしているとし、連邦基準の確立が不可欠であると主張しています。
・クラリティ法案はCFTCとSECの規制管轄を明確にするものですが、トランプ大統領に関連する倫理規定や非カストディアル開発者向けの条項などを巡り、議会や法執行機関の間で意見が対立しているとされています。
・8月の議会休会前の可決を促す声があるものの、上院のスケジュール制約などから、2026年内の成立確率は50%に低下したとの予測も出ています。