DeFi(分散型金融:中央管理者を介さずにブロックチェーン上で行われる金融サービス)大手のAave(アーベ)の開発企業であるAave Labsは、2026年7月9日、フィンテック企業やウォレット、取引所、決済プロバイダー向けの新インフラ製品「Stable Vaults(ステーブル・ボルト)」をリリースしました。この製品は、DeFiの複雑な仕組みを抽象化し、企業が自社のアプリ上で予測可能なステーブルコインの利回りをエンドユーザーに提供できるようにするものです。これにより、一般のユーザーは暗号資産の複雑な操作を意識することなく、安定したステーブルコインの運用サービスを利用できるようになるとされています。
複雑なDeFiインフラを自動化する仕組み
Stable Vaultsは、スマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動実行する仕組み)を基盤とした資金プールのインフラです。預け入れられたステーブルコイン(USDC、USDT、GHOなど)の資金を、Aave V3やV4、Savings GHO(Aaveが発行するステーブルコインGHOの貯蓄プログラム)、その他のERC-4626(トークン化された資金プールの共通規格)に準拠したDeFiの利回り戦略に配分し、資本効率を最適化します。
この仕組みにより、DeFi市場特有の変動金利を、企業がユーザーに提供しやすい予測可能で安定した金利へと変換します。また、クロスチェーン(異なるブロックチェーン間)での流動性管理や資産のリバランス、利回りの分配といった複雑なバックエンド処理を自動化するため、企業が自前で複雑なDeFiインフラを構築・運用する手間を大幅に省くことができます。
企業のビジネスモデルに応じたカスタマイズ性
Stable Vaultsを導入する企業は、どのステーブルコインを受け入れるか、どの利回り戦略を使用するか、そしてユーザーに提供する金利を自由に選択・管理できます。例えば、ネオバンク(実店舗を持たないデジタル銀行)が自社アプリに貯蓄機能を組み込んだり、決済会社が加盟店の売上金のアイドルバランス(遊休資金)で利回りを得たり、ウォレットや取引所がワンタップで利回りを得られる機能を統合したりすることが可能です。
また、実際の運用金利がユーザーに約束した金利を上回った場合、その差額はボルト運営企業の収益となるため、オンチェーン(ブロックチェーン上)での固定金利ビジネスモデルとして機能させることができるとされています。
業界における背景と重要性
ステーブルコインが日常的な決済やデジタルバンキングに普及する中、多くのフィンテック企業が、ユーザーに暗号資産の複雑な操作を求めることなく利回りを提供する方法を模索しています。すでに競合であるMorpho(モルフォ)などのプロトコルも同様の市場で台頭しており、CoinbaseやRobinhoodなどが類似のボルト製品を採用しているとされています。
Aave Labsは、すでに自社のモバイルアプリで稼働実績のあるこの技術を外部の企業向けに開放することで、急成長するステーブルコインの利回り提供インフラ市場でのシェア獲得を狙うものと見られます。
ポイント
- Aave Labsが、フィンテックや決済アプリ向けにステーブルコインの利回り機能を容易に統合できるインフラ製品「Stable Vaults」をリリースしました。
- DeFiの変動金利を予測可能で安定した金利に変換し、クロスチェーンのリバランスや流動性管理などの複雑な技術プロセスを自動化します。
- 導入企業は受け入れるステーブルコインや利回り戦略、顧客に提示する金利を自由にカスタマイズでき、超過利回りを自社の収益にすることが可能です。
- Web3の複雑な操作を意識させずに主流ユーザーへDeFiの利回りを届ける手段として、今後の金融サービスの幅を広げる点で注目されます。