日本の大手IT企業であるNEC(日本電気)と、レイヤー1ブロックチェーンであるアバランチ(Avalanche)の開発を推進するアバ・ラボズ(Ava Labs)は、次世代オンチェーンサービスの共同検討に向けた覚書(MOU)を締結しました。両社は2026年7月10日、NECの生体認証技術とアバランチのブロックチェーン基盤を組み合わせた安全なデジタル取引基盤の実現可能性を探るため、第一弾となるホワイトペーパーを共同で公開しました。この取り組みは、ステーブルコイン決済やAIエージェントによる取引、インバウンド観光客向けの本人確認などを支える新たな金融インフラの構築を目指すものであり、Web3の社会実装を推進する可能性を秘めています。
生体認証とブロックチェーンを融合したインバウンド観光客向け決済モデル
ホワイトペーパーでは、訪日観光客向けの店頭決済モデルが具体例として提示されています。このモデルでは、来日前にNECの顔認証技術を活用した検証可能なデジタル証明書(フェイスVC:FaceVC)を発行します。これにより、観光客は加盟店の店頭で顔認証を行うだけで、アバランチ上でステーブルコイン決済やリワードの受領を1タップで完結できるようになります。
利用者の生体情報や購買履歴は、特定の組織に依存しない分散型デジタルID(DID)を用いて本人のデジタルウォレット内に保持され、決済などの処理に必要な最小限の情報のみを開示する設計となっています。これにより、利用者の利便性を向上させつつ、プライバシー保護を両立させることが可能になります。
3つのブロックチェーンを連携させる2層構成アーキテクチャ
技術的なシステム構成案として、NECのアイデンティティ層とアバ・ラボズのブロックチェーン層を組み合わせた2層構成のアーキテクチャが示されています。ブロックチェーン層では、用途が異なる3つのブロックチェーンを分担して使用します。
1. パーミッションドL1(Permissioned L1):参加者を限定したアバランチの許可型ブロックチェーンで、本人確認(KYC)に関する情報を管理します。
2. 決済専用ネットワーク「SETTL」:アバランチL1を基盤とし、ステーブルコイン決済に特化したネットワークです。
3. Cチェーン(C-Chain):EVM(イーサリアム仮想マシン)互換のパブリックチェーンで、リワードトークンやプロモーション用NFTの発行・流通に活用されます。
これら3つの異なるブロックチェーンは、アバランチ独自のチェーン間相互運用機能である「インターチェーン・メッセージング(ICM)」によってシームレスに連携する仕組みとなっています。
多様なユースケースと今後の展開
両社が検討する基盤は、インバウンド向けの店頭決済にとどまらず、幅広いユースケースへの応用が想定されています。具体的には、顔認証を利用した暗号資産ウォレットの秘密鍵の保護や、属性VCとNFTを組み合わせた限定権利の付与および転売防止、ステーブルコインを活用した使途限定型の公共支援や不正受給防止などが挙げられています。
今後は、金融機関向けの本人確認、AIエージェントによる自動取引・認証、クロスボーダー決済(国境を越えた決済)などの具体的なユースケースを整理し、実証実験や事業化に向けた検討が進められる予定です。なお、使用する具体的なステーブルコインの銘柄や、実証実験およびサービス提供の開始時期については、現時点では明らかにされていません。
ポイント
- NECとアバ・ラボズが覚書(MOU)を締結し、生体認証とアバランチブロックチェーンを組み合わせた安全なデジタル取引基盤の検討を開始しました。
- 共同公開されたホワイトペーパーでは、来日前の顔認証技術(FaceVC)を活用したインバウンド観光客向けの店頭決済・リワード受領モデルが提示されています。
- ID管理用のパーミッションドL1、決済専用のSETTL、プロモーション用のCチェーンという3つのブロックチェーンを、アバランチのインターチェーン・メッセージング(ICM)でシームレスに連携させる高度なアーキテクチャを検証します。
- 利用者の生体情報や購買履歴は本人のウォレット内に保持し、必要な情報のみを開示することで、利便性とプライバシー保護の両立を目指します。
- 今後は金融機関向け本人確認やAIエージェント認証、クロスボーダー決済などのユースケースを整理し、実証実験や事業化に向けた検討を進める予定です。