暗号資産取引所のOKX、暗号資産ウォレットのMetaMask、イーサリアムのレイヤー2開発企業であるMatter Labsなどを含む27社のコンソーシアムは、AI(人工知能)エージェント間の紛争を解決するためのオープンなインフラ規格「Internet Court(インターネット・コート)」を共同で立ち上げました。この取り組みはGenlayer Foundationが主導しており、AIベースの決済、エスクロー(取引の安全を担保するために第三者が資金を一時的に預かる仕組み)、紛争解決を相互運用可能にすることを目指しています。AIエージェントが自律的に取引を行う「エージェント・コマース」が拡大するなか、従来の司法制度では対応できないマシン・スピードでの迅速なトラブル解決を可能にすることで、信頼性の高い取引環境の構築に貢献するとされています。
設立の背景とエージェント・コマースにおける課題
AIエージェントが人間の承認を介さずに、資金のコミットや売買を自律的に行う「エージェント・コマース(AIエージェントが自律的に取引を行う仕組み)」が急速に進展しています。しかし、これまでは契約不履行や不一致が生じた際、これらを仲裁する包括的な紛争解決メカニズムが存在していませんでした。
従来の人間主導の法制度や解決プロセスでは、AIエージェントが実行する「マシンの速度」での取引や意思決定に対応できないため、ビジネス上のボトルネックとなる懸念が指摘されています。Genlayer Foundationの共同創設者兼CEOであるデビッド・リウドル(David Riudor)氏は、マシンの速度で動く資金には、マシンの速度での司法判断が必要であると述べており、取引に問題が生じた際にAIエージェントが利用できる共有の解決の場として、Internet Courtの重要性を強調しています。
Internet Courtの技術的特徴と相互運用性
Internet Courtは、アイデンティティ、決済、エスクロー、執行、紛争解決といった既存の技術を単一のフレームワークに統合するプロトコルとされています。これにより、AIエージェントは自然言語を用いて契約の交渉、完了、執行を自律的に行うことが可能になるとされています。
技術面においては、MetaMaskの「Smart Accounts Kit」(ERC-7710 delegationsやx402 Facilitatorを含む)などを統合し、これまで断片化されていた複数のAI決済システムやアイデンティティ規格の相互運用性を確保する計画です。従来の裁判所に代わり、分散型司法判断(中央管理者を介さずにネットワーク上で紛争を解決する仕組み)を用いることで、自動化された契約の失敗を迅速に仲裁する仕組みを提供します。
初期ユースケースと今後の影響
Internet Courtの初期のユースケースとしては、AIエージェントのガードレール(逸脱防止策)、極小額のサービス契約(マイクロバリュー契約)の自動執行、紛争となったデジタル証拠の分散型司法判断などが挙げられています。
人間が介在しないプログラマブルな暗号資産が、AIエージェントの取引において自然な決済手段となる中、このプロトコルは断片化したAIコマースインフラを、一つのオープンで強制力のあるシステムへと統合する役割を果たすと見られています。
ポイント
- AIエージェント用の紛争解決プロトコルの創設:OKXやMetaMask、Matter Labsを含む27社のコンソーシアムが、AIエージェント用の紛争解決コートであるInternet Courtを共同で立ち上げました。
- マシン・スピードの司法判断を実現:自律的な取引において契約上の不一致が生じた際、従来の人間主導の法制度ではなく、AIエージェントの速度に合わせた迅速な分散型司法判断を提供します。
- 断片化したインフラの統合:決済、エスクロー、アイデンティティなど、個別に開発されていたAIコマース関連技術を単一のフレームワークに統合し、相互運用性を高めます。
- 主要なWeb3技術との連携:MetaMaskのSmart Accounts Kitなどを統合することで、実用的な自律取引と契約執行の仕組みを構築します。