Metaの初代チーフ・データ・オフィサー(CDO)に就任したアレックス・シュルツ氏は、AIエージェントが主体となって取引や調整を行う「エージェンティック・コマース」が同社全体の次のビジネス層になるとの見解を示しました。同氏によると、Meta内部では取引の決済手段としてステーブルコイン(米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産)の使用が当然の前提とされていますが、この決済インフラをMetaの外部社会へ普及させることが今後の大きな課題であるとされています。かつて独自通貨「Libra」を断念したMetaは、現在、規制された第三者のステーブルコインを統合するパートナーシップ戦略へと舵を切っています。
AIエージェントが取引を主導するエージェンティック・コマースの台頭
シュルツ氏は、AIエージェントが自律的に連携して取引を行うエージェンティック・コマース(AIエージェントによる商業取引)について、単なるプロダクトの一カテゴリではなく、Meta全体のビジネスを次の段階へ引き上げる不可避な流れであると語りました。
同社は様々な企業向けにビジネスエージェントを構築しており、2026年初頭のほぼゼロの状態から、現在は週に100万以上の企業がMetaのAIエージェントをアクティブに活用するまでに成長しているとされています。
具体的なユースケースとして、日常的な予定調整や手配をWhatsApp(Metaが提供するメッセージングアプリ)上のAIエージェント同士が自律的に連携して解決する例が挙げられており、これが将来的にサプライチェーン交渉やクロスボーダー決済といった大規模なビジネス領域へも応用される可能性があると見られます。
決済インフラとしてのステーブルコインとMetaの戦略シフト
エージェンティック・コマースの構想において、Metaはメッセージングやコマースのインターフェース層を提供し、その下部で機能する決済の決済層としてステーブルコインの活用を想定しています。シュルツ氏は、物理的な財布(ウォレット)が不要になり、デジタル決済が主流となる未来において、ステーブルコインが解決策の大きな部分を占めると述べています。
Metaはかつて独自のステーブルコイン「Libra(のちにDiemに改称)」の立ち上げを試みたものの、規制上の課題から2022年に断念した経緯があります。この経験を踏まえ、現在は独自の通貨を発行するアプローチから、規制に準拠した第三者のステーブルコインをプラットフォームに統合するパートナーシップ戦略へと移行しているとされています。
世界的な普及における課題とアジアの先行事例
Metaの内部ではステーブルコインの活用が前提とされている一方で、シュルツ氏は「それ以外の世界(外部社会)に普及させること」がより困難な課題であると指摘しています。
同氏は、アジアにおけるWeChat(中国の多機能アプリ)の送金モデルや、日本、タイ、台湾におけるLINEのコマースインフラを例に挙げ、メッセージングアプリを基盤とした対話型コマースが大規模に機能することはすでに実証されていると強調しました。Metaはブラジルやインドなどの市場で、WhatsAppを通じた対話型コマースを100万以上の小規模事業者に提供しており、今後はステーブルコイン等のデジタル決済をいかに一般社会へ浸透させるかが、エージェンティック・コマースの本格的な普及に向けた鍵になると見られます。
ポイント
- Metaのチーフ・データ・オフィサーであるアレックス・シュルツ氏は、AIエージェントが取引を主導するエージェンティック・コマースが同社全体の次のビジネス基盤になるとの見解を示しました。
- MetaのAIエージェントをアクティブに利用する企業は、2026年初頭のほぼゼロから、現在は週に100万社以上に拡大しているとされています。
- 同社はかつての独自通貨Libra計画の断念を経て、現在は規制された第三者ステーブルコインを自社プラットフォームに統合するパートナーシップ戦略を推進しています。
- 対話型コマースの決済層としてステーブルコインが不可欠であるとされる一方、Meta外部の一般社会へどのように普及させるかが今後の大きな課題として指摘されています。