サークル社が詐欺被害資金の回収をめぐり刑事告訴される、ステーブルコインの無効化・再発行対応で米当局と対立

米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」の発行体であるサークル(Circle Internet Financial)社が、詐欺被害に遭った資金の回収対応をめぐり、米ウィスコンシン州の検察当局から刑事告訴されました。同社は裁判所による盗難資産の凍結命令には応じたものの、その後の無効化と再発行の命令に対して技術的な限界などを理由に拒否しており、当局との間で対立が生じています。この問題は、ステーブルコイン発行体が法執行機関からの要請や裁判所命令にどの程度協力すべきかという、Web3業界におけるコンプライアンスと技術的限界の議論を浮き彫りにしています。

ウィスコンシン州での刑事告訴とサークル社の主張

サークル社が詐欺被害資金の回収をめぐり刑事告訴される、ステーブルコインの無効化・再発行対応で米当局と対立

事案の始まりは、ウィスコンシン州ウォルワース郡の男性が投資詐欺(ロマンス詐欺)に遭い、約38万1,000USDCを詐取されたことです。これを受け、裁判所は2025年8月に盗まれたUSDCの凍結をサークル社に命じ、同社はこれに応じました。

しかし、同年12月に裁判所が「凍結されたUSDCを無効化(バーン)し、同額の新たなUSDCをウォルワース郡保安官事務所が管理するウォレットへ移転する(差し押さえを実行する)」よう命じた際、サークル社は技術的に対応できないと主張して命令に従いませんでした。この対応を受け、ウィスコンシン州の検察当局はサークル社を軽犯罪容疑(法廷侮辱罪・司法妨害の容疑)で刑事告訴しました。州検察が大手金融企業を刑事告訴するのは極めて異例とされています。

サークル社は裁判所への提出書面で、今回の告訴は根拠がないとして却下を求めています。同社は、他人のウォレット内にあるトークンを操作する技術的能力がなかったこと、被害者補償に向けた代替案を提示したものの十分な協議が行われなかったこと、さらにウィスコンシン州裁判所には当該命令を出す管轄権がなかったことなどを主張しています。

各州当局の懸念とテザー社との対応の違い

サークル社の対応に対する懸念はウィスコンシン州にとどまりません。ニューヨーク州の地方検事らも2026年1月、連邦上院議員宛ての書簡で同社の対応に懸念を示していました。書簡では、サークル社が裁判所命令のない法執行機関からの資金凍結要請に応じないことや、盗難資金の返還を求める裁判所命令に十分対応していないことが問題視されています。

サークル社は2026年に公表したブログで、恣意的あるいは政治的な干渉から利用者を守るため、USDCの凍結は適法な法的手続きを経た命令に基づいてのみ実施する方針だと説明しています。この姿勢は、裁判所命令がない段階でも一部の法執行機関からの要請に応じて資産凍結を実施しているとされる競合のテザー(Tether)社とは対照的です。

また、技術的な観点からも議論が起きています。暗合資産フォレンジック企業の専門家は、不正ウォレット内のUSDCをバーン(無効化)し、同額を新たに発行する「バーン・アンド・リイシュー」に対応するようソフトウェアを更新することは可能であると指摘しています。実際にテザー社は、不正取得されたトークンについて累計11億ドル相当を再発行したと説明しています。

一方、ニューヨーク州の地方検事らは、サークル社がUSDCの裏付け資産(準備金)として利息を生む資産を保有していることに触れ、盗難資金を返還せず凍結にとどめる方が、同社にとって経済的利益(準備金から生じる利息収入)につながる可能性があるとの見方も示しています。ブロックチェーン調査会社の研究者によると、サークル社は現在少なくとも1億1,900万USDCを凍結しているとされています。

業界への影響と今後の解決策の模索

今回の告訴は、ステーブルコイン発行元が負うべき法的な協力義務の範囲や、スマートコントラクトの技術的な管理権限について、業界全体に大きな問題を提起しています。既存の法的枠組みでは、発行者が裁判所の命令に基づいてトークンの無効化と再発行を行う義務があるかどうかが明確に規定されておらず、今回の司法判断が今後の先例となる可能性があります。

サークル社はウィスコンシン州への提出書面の注釈で、連邦検察当局との間で、盗難資金を恒久的に凍結したうえで同額の新たなUSDCを発行する「被害者補償の仕組み」について大筋合意したことを明らかにしました。ただし、この仕組みを今回のウィスコンシン州の事件に適用できるかどうかについては回答を避けています。

なお、サークル社の規模について、入力テキスト(ソース1)では時価総額約170億ドル(約2,754億3,000万円)と記載されていますが、一部の最新市場情報ではUSDCの現在の時価総額は約732億ドル(約11兆9,000億円)とも報じられており、データの基準時点によって差異が見られます。

ポイント

  • 米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」の発行体であるサークル社が、詐欺被害に遭った資金の無効化と再発行を求める裁判所命令に従わなかったとして、米ウィスコンシン州検察から刑事告訴されました。
  • サークル社は「他人のウォレット内のトークンを無効化・再発行する技術的能力がない」と主張する一方、競合のテザー社は「バーン・アンド・リイシュー(無効化と再発行)」による被害資金の返還実績を有しており、対応の違いが浮き彫りになっています。
  • ニューヨーク州の検察当局などは、サークル社が裁判所命令のない凍結要請に応じない方針や、凍結資産から生じる利息収入の存在を問題視しており、ステーブルコインの利益相反に関する懸念も示されています。
  • ステーブルコイン発行者が負うべき法的な執行協力義務は未だ明確な法的枠組みが整っておらず、今回の事件は規制とコンプライアンスのあり方に大きな影響を与える可能性があります。
  • サークル社は連邦検察当局と「被害者補償の仕組み」について大筋合意したと明かしており、今後の実務的な解決策として注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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