金融庁は2026年9月17日、日本暗号資産等取引業協会と7月15日に実施した意見交換会の資料を公開しました。同庁は暗号資産交換業者の一部が、取引所形式よりも収益性の高い販売所形式へ利用者を誘導している可能性があると懸念を示し、UI導線について事業者との対話を継続する方針を明らかにしています。あわせて、2027年4月1日に施行される本人確認でのICチップ読み取り必須化への準備や、金融活動作業部会(FATF)の声明を受けたイラン向け対抗措置の徹底についても言及しました。交換業者のサービス設計やシステム改修に直接関わる監督方針が示された点で注目されます。
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販売所形式への誘導懸念とUI導線における対話の継続
金融庁は、金融審議会の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告書で指摘された論点を踏まえ、暗号資産交換業者の一部が取引所形式よりも収益性の高い販売所形式へ利用者を誘導している可能性がある点に懸念を示しました。
販売所と取引所の両方を提供する事業者では、利用者がどちらを選択するかによって手数料や価格形成の仕組みが異なります。金融庁は、2024年11月に施行された改正金融サービス提供法において導入済みの「顧客の最善の利益を勘案し誠実かつ公正に業務を遂行する義務」を踏まえ、UI導線に関して事業者との対話を続ける方針を示しています。さらに、自主規制規則の整備における適合性原則(利用者の知識や経験、財産の状況等に応じた適切なサービスの提供)の在り方についても議論を求めました。
2027年4月施行の本人確認におけるICチップ読み取り必須化
意見交換会では、2026年3月6日に改正された犯罪収益移転防止法施行規則への対応についても取り上げられました。
対面で写真付き本人確認書類の提示を受ける現行の確認方法について、対象書類をICチップ付きのものに限定し、ICチップの情報の読み取りを必須とする内容となっています。これ以外の確認方法は原則として廃止されます。2025年6月の非対面確認方法に係る改正と同様に、施行日は2027年4月1日とされています。
暗号資産交換業者も犯罪収益移転防止法の対象事業者に含まれるため、金融庁は各金融機関に対し、口座開設時の本人確認フローに関わるシステム対応を含め、施行に向けた準備を着実に進めるよう求めました。
FATF声明に基づくイラン向け対抗措置と取引確認の徹底
国際的な動向として、FATFが2026年2月11日から13日の全体会合で採択した声明への対応も共有されました。同声明では北朝鮮とイランが対抗措置の適用対象とされ、ミャンマーはリスクに応じた厳格な顧客管理措置の適用対象とされています。今回、イランについては暗号資産サービスプロバイダーの支店設置禁止や新規コルレス関係の構築禁止などの対抗措置が追加されました。
これを受け、金融庁を含む関係省庁は2026年4月13日に関係金融機関や協会へ要請文を発出し、取引時確認義務や疑わしい取引の届出義務、暗号資産の移転に係る通知義務の履行徹底を求めました。日本暗号資産等取引業協会に対しても、会員企業への周知徹底が要請されています。
ポイント
- 金融庁が暗号資産交換業者による販売所形式への誘導懸念を表明し、顧客本位の業務運営義務を踏まえたUI導線について事業者と対話を継続する方針を示した点で注目されます。
- 手数料や価格形成が異なる販売所と取引所の選択に関し、自主規制規則における適合性原則の在り方が議論される点で業界への影響が考えられます。
- 犯罪収益移転防止法施行規則の改正により、2027年4月1日から本人確認におけるICチップ読み取りが必須化され、交換業者に口座開設システムの改修対応が求められる点で重要です。
- FATFの声明に伴い、イランに対する暗号資産サービスプロバイダーの支店設置禁止や新規コルレス関係の構築禁止など、厳格な対抗措置の履行徹底が求められている点で注目されます。