米上院財政委員会に所属するスティーブ・デインズ上院議員が、暗号資産の税制を包括的に見直す法案の草案を関係者に配布しました。草案には、米ドル建てステーブルコインによる日常的な決済や10ドル以下のネットワーク手数料に対する課税上の負担軽減策が盛り込まれています。一方で、株式と同様のウォッシュセール規則を導入するなど租税回避の防止策も含まれており、実務負担の解消と適正な課税ルールの確立を目指す内容と見られます。議員事務所によると、法案は来週にも正式に提出される見通しです。
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ステーブルコイン決済の損益免除と事業者の負担軽減策
配布された法案草案は全13条で構成されており、現段階では法案の正式名称と提出者欄は空欄となっています。
草案の中心的な内容の一つが、暗号資産を利用した決済時の負担軽減です。対象となる米ドル建てステーブルコインを商品やサービスの購入に利用した場合、売却や交換に伴う利益または損失を認識しない仕組みが設けられます。対象となるのは、取得価格が1ドルの上下3%以内で、米財務省が毎月公表する要件を満たした銘柄です。
また、暗号資産で支払うネットワーク手数料についても、1回の取引に関連する合計額が10ドル以下であれば損益を認識しない規定が含まれています。この規定は、法案が成立した場合、2027年12月31日より後に行われる資産処分に適用されます。
このほか、事業者が時価評価課税を選択できる制度の創設や、一定の条件を満たす暗号資産の貸付を課税対象の売却とみなさない措置が盛り込まれました。さらに、投資信託が保有資産をステーキング(保有資産をネットワークの維持や検証のために預け入れて報酬を得る仕組み)しても税務上の資格を失わない規定や、広く取引されている暗号資産を寄付する際の鑑定要件を免除する内容も含まれています。
ウォッシュセール規則の拡大と租税回避への規制
草案では負担軽減策を設ける一方で、暗号資産を利用した租税回避を防ぐための厳格な規則も提示されています。
具体的には、株式などに適用されているウォッシュセール規則(損失を確定させた直後に同一銘柄を買い戻すことで不当に税負担を減らすことを防ぐ規制)を暗号資産にも拡大します。資産を売却した前後30日以内に実質的に同一の資産を取得した場合、損失としての計上が制限されます。
あわせて、保有資産を実際に売却することなく、売却と同等の経済効果を得る取引に対して税金を課す「みなし売却規則」の適用も明記されています。
米議会における法案審議の現状と今後の見通し
暗号資産の税制見直しに関しては、米下院でも包括法案の審議が先行しています。下院では9月14日に「Digital Asset Tax Certainty Act」が提出され、ステーブルコインや取引手数料、マイニング、ステーキングなどを網羅した内容となっています。同法案は9月16日、下院歳入委員会において38対5の超党派の賛成多数で承認されました。ただし、中間選挙前に下院本会議で採決される予定はなく、本格的な審議は選挙後になる見通しです。
今回草案をまとめたデインズ議員は今期限りでの退任を予定しており、退任前に暗号資産税制の枠組みを提示したい考えです。中間選挙の前に上院で法案を提出しておくことで、選挙終了後から新議会が発足するまでの会期において、上院側でも税制審議を進める余地が残される見込みです。
ポイント
- 米上院財政委員会のデインズ議員が暗号資産税制を包括的に見直す全13条の法案草案を配布し、来週の正式提出を予定している点
- 1ドルの上下3%以内の米ドル建てステーブルコイン決済や10ドル以下のネットワーク手数料について損益認識を免除し、実務や決済での利便性を高める点
- 株式と同様のウォッシュセール規則やみなし売却規則を導入し、暗号資産を用いた租税回避への規制を強化する方針を示した点
- 下院で超党派により承認された包括税制法案に続き、中間選挙後の会期で上院が審議を進めるための重要な足がかりとなる点
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