金融庁PIP支援の日本国債トークン化実証でCanton Networkが採用された背景と伝統金融が求める条件

伝統金融とブロックチェーンの融合が加速する中、米Digital Asset社が開発するCanton Networkに注目が集まっています。2026年4月、金融庁が主導する決済高度化プロジェクト(PIP)の支援のもと、みずほフィナンシャルグループや野村ホールディングスらが日本国債を活用したデジタル担保管理の実証実験に同ネットワークを採用すると発表しました。本記事では、Cantonの共同創設者兼CEOであるユヴァル・ルーズ氏へのインタビューに基づき、なぜ伝統金融が既存のパブリックチェーンではなくCantonを選ぶのか、そして日本国債のトークン化が持つ重要性について解説します。

伝統金融がイーサリアムではなくCantonを選ぶ3つの決定的な理由

金融庁PIP支援の日本国債トークン化実証でCanton Networkが採用された背景と伝統金融が求める条件

Canton Networkは、単一のチェーン上で全ての取引を処理するパブリックチェーンとは異なり、金融機関がそれぞれ独立したルールや台帳を維持したまま相互接続できる仕組みを持っています。ルーズ氏によると、伝統金融機関がイーサリアムなどの既存パブリックチェーンを採用せず、Cantonを選ぶ理由は以下の3点にあります。

1つ目は、高度なプライバシーの確保です。金融機関には、規制上すべての取引データを公開できないという制約があります。Cantonは必要な情報だけを選択して開示する仕組みを備えているため、規制を遵守した運用が可能です。

2つ目は、資産のコントロール権の保持です。パブリックチェーンやアービトラムなどのレイヤー2では、スマートコントラクトのバグや第三者による資産凍結のリスクが伴います。Cantonでは、資産の発行体が100パーセントのコントロール権を保持し続ける設計となっています。

3つ目は、中立なガバナンスです。Cantonはオープンソースであり、特定の開発会社が支配するのではなく、伝統金融の巨頭であるDTCC(米証券保管振替機構)やEuroclear(ユーロクリア)などが数年ごとに交代で議長を務める中立組織「Canton Foundation」がガバナンスを担っています。

世界が注目する日本国債のトークン化と金融インフラの変革

2026年4月に発表された実証実験は、みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、日本証券クリアリング機構(JSCC)らが参加し、金融庁の決済高度化プロジェクト(PIP)の支援を受けて実施されます。この決済高度化プロジェクトは、金融庁が2025年11月に設置した決済分野特化型の実証実験支援枠組みとされています。本プロジェクトは、日本の現行の振替法や多層口座構造といった法規制・商習慣を維持したまま、24時間365日の即時クロスボーダー取引の実現を目指すものです。

ルーズ氏は、日本国債のトークン化をグローバルなオンチェーン金融における最重要ユースケースの一つと位置づけています。日本国債市場は米国債に次ぐ世界第2位の規模であり、銀行間で資金を調達し合うレポ市場の1日あたりの取引量は約1.5兆ドルに達します。Cantonを活用することで、この巨大な流動性を、規制に準拠した安全な形でオンチェーンへ移行させることが可能になるとされています。

この取り組みが目指すのは、単に国債をデジタル化することではなく、仲介業者を介さずに24時間365日国債へアクセスし、リアルタイムで担保として別の資産を調達・決済するという、金融インフラそのものの変革です。

実需重視のビジネスモデルと今後の本格稼働スケジュール

暗号資産市場では、実質的な経済活動やキャッシュフローがない状態で将来の期待のみから高い時価総額がつくケースが見られますが、ルーズ氏は最も重視する指標としてUsage(実需・利用率)、すなわちユーザーが技術を利用するために支払う手数料を挙げています。

Cantonがネットワーク上で生み出している実際の取引手数料の収益は、すでにイーサリアムやソラナを上回る規模に達しているとされています。現在は、金融インフラプロバイダーのBroadridgeがCanton上で毎日3400億から4000億ドル規模のレポ取引を実際に処理しており、手数料収益のスケール化が始まっています。

今後の重要なマイルストーンとして、2026年10月に、世界最大の証券決済機関である米DTCCのプロジェクトがCanton上で本格稼働することが予定されています。ルーズ氏はこの稼働を世界の金融の歴史における巨大な転換点になると述べており、2026年後半に向けて大型プロジェクトを確実に実運用に載せる方針を示しています。

ポイント

  • Canton Networkは、金融機関が独立したルールや台帳を維持したまま相互接続できるネットワークで、高度なプライバシー、資産のコントロール権、中立なガバナンスを特徴としています。
  • 2026年4月に発表された日本国債を活用したデジタル担保管理の実証実験は、日本の法規制や商習慣を維持したまま、24時間365日の即時クロスボーダー取引の実現を目指す取り組みです。
  • 日本国債市場は世界第2位の規模であり、この巨大な流動性を規制に準拠した形でオンチェーンへ移行させることは、グローバルなオンチェーン金融において極めて重要なユースケースと位置づけられています。
  • Cantonは実需(Usage)を重視しており、すでにネットワーク上での取引手数料収益はイーサリアムやソラナを上回る規模に達しているとされています。
  • 2026年10月には、世界最大の証券決済機関である米DTCCのプロジェクトがCanton上で本格稼働を予定しており、金融インフラの実運用化に向けた大きな節目となる見通しです。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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