野村ホールディングスとCircleの提携が示す国内オンチェーン金融インフラの標準化競争

野村ホールディングスとCircleの提携が示す国内オンチェーン金融インフラの標準化競争

野村ホールディングスは、米ドル建てステーブルコインであるUSDCの発行元として知られるCircle社と提携し、オンチェーン金融分野における協業の検討を開始しました。国内では、SBIグループが日本初となる信託型の円建てステーブルコインであるJPYSCの発行を開始するなど、ブロックチェーン技術を用いた新たな金融インフラの構築が急速に進んでいます。ステーブルコインの役割が単なる送金手段から、取引全体をブロックチェーン上で完結させるオンチェーン金融の基盤へと移行する中、次世代の金融インフラにおける標準化を巡る競争が日本国内でも本格化しています。

野村ホールディングスが目指す資本市場の高度化とオンチェーン金融

野村ホールディングスとCircleの提携が示す国内オンチェーン金融インフラの標準化競争

野村ホールディングスはCircle社との提携を通じて、ブロックチェーン上で金融取引を完結させるオンチェーン金融インフラの構築を模索しています。

同社の広報担当者によると、現時点でUSDCを日本国内で取り扱うことや、特定のステーブルコインを用いたサービスを開始することを決定しているわけではありません。しかし、同社が強みを持つ資本市場領域に近い、オンチェーンでの為替取引、担保管理、および証券と資金の同時決済を指すDVP(Delivery Versus Payment)などを有力な検討領域として挙げています。

野村ホールディングスは、2026年2月に実施した伝統的資産の取引・権利移転・決済の実証実験、および同年4月に実施した国債のデジタル担保管理の実証実験の成果を踏まえ、Circle社のステーブルコインやブロックチェーンインフラの知見を取り入れながら、オンチェーン金融の実装可能性を検討していくとしています。さらに、将来的にはCantonやArcといったグローバルなネットワークの活用可能性についても検討を進める意向を示しています。ここで検討されているCanton Networkは、金融機関向けに設計されたプライバシー保護機能を持つブロックチェーンネットワークとされています。

SBIグループによる円建てステーブルコイン「JPYSC」のローンチ

野村ホールディングスによる発表に先立ち、SBIグループは日本初となる信託型の円建てステーブルコインであるJPYSCの発行を開始しました。

JPYSCは、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長が予告していた通り、2026年度第1四半期でのローンチとなりました。発行初日には100億円相当の規模でスタートしており、この規模について一部ではグループ内の資金移動ではないかとの見方もなされていました。これに対し、流通を担うSBI VCトレードは、実際の顧客からの発行依頼やJPYSCに対する資金需要を踏まえた結果であると説明しています。

SBIグループが実際にステーブルコインの稼働を開始したことで、国内におけるステーブルコインの実用化は新たな段階に入ったと見られています。一方で、現時点での流通のあり方や制度上の位置付けについては課題を指摘する声もあり、今後の具体的な運用手法が注視されています。

決済手段からオンチェーン金融インフラへの移行

これまでステーブルコインは、主に送金コストの削減や国際送金の高速化といった決済手段としての文脈で語られることが多くありました。しかし、海外市場ではすでに、ステーブルコインを決済手段としてだけでなく、より高度な金融取引をブロックチェーン上で行うための基本インフラとして位置付ける動きが広がっています。

例えば、米資産運用大手ブラックロックが提供するトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)であるBUIDLや、米金融大手JPモルガンのブロックチェーン事業部門であるKinexys、そして金融機関向けの共同ネットワークであるCanton Networkなどがその代表例とされています。これらのプロジェクトでは、担保管理、証券決済、資金管理、流動性供給といった金融プロセス全体をオンチェーンで完結させるための基盤として技術が活用されています。

日本国内でも、野村ホールディングスやSBIグループの取り組みにより、競争の軸は「どのステーブルコインが使われるか」という点から、「誰が次世代の金融インフラを構築し、その標準を握るのか」というプラットフォームの主導権争いへと移行しつつあります。

今後のスケジュール

このオンチェーン金融を巡るテーマは、2026年7月1日から3日にかけて京都のみやこめっせで開催されるイベント「IVS2026 CRYPTO ZONE Powered by NADA NEWS」でも主要な議論の一つとなる予定です。

7月1日の14時からは、SBIとともにJPYSCの開発に取り組むStartaleの手塚孝氏が登壇し、インターネット時代のお金をテーマにしたセッションが行われます。また、7月2日の12時15分からは、野村ホールディングスの日髙恵美氏が登壇し、ステーブルコインの決済機能や利回りに関するセッションが行われる予定です。

ポイント

  • 野村ホールディングスが米Circle社と提携し、オンチェーンでの為替取引や担保管理、DVP(証券と資金の同時決済)などの金融インフラの構築を検討しています。
  • SBIグループは日本初の信託型円建てステーブルコインであるJPYSCの稼働を初日100億円相当の規模で開始し、実用化に向けた先行事例を作りました。
  • ステーブルコインの役割は従来の送金や決済の手段から、担保管理や証券決済などの金融取引全体をブロックチェーン上で完結させるオンチェーン金融のインフラへと進化しています。
  • 国内の金融大手によるアプローチは異なるものの、次世代の金融システムにおけるプラットフォームの標準化を目指す競争が本格化している点で注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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