イーサリアム財団、政府・機関向けガイドを公開:中立な分散型インフラとしての信頼性を強調

イーサリアム財団のグローバル・ポリシー・戦略(GPS)チームは2026年7月1日、各国政府や機関向けに中立なデジタルインフラとしてのイーサリアムを解説する報告書「Ethereum for Governments and Institutions」を公開しました。この報告書は技術に詳しくない読者を想定した入門資料であり、少数の中央管理者に依存する既存のデジタルシステムが抱えるリスクと、それに対するイーサリアムの優位性を解説しています。監査大手の客観的な評価データや、すでに始まっている各国政府での具体的な導入事例を紹介することで、信頼性の高い中立な基盤としての実用性を説明しています。ブロックチェーンが公共の社会基盤としてどのように機能し得るかを示す、Web3業界のビジネスパーソンにとっても注目すべき内容となっています。

政府・機関向けガイド公開の背景と中央集権型システムの課題

イーサリアム財団、政府・機関向けガイドを公開:中立な分散型インフラとしての信頼性を強調

イーサリアム財団のグローバル・ポリシー・戦略チームが公開した報告書「Ethereum for Governments and Institutions」は、決済や本人確認、登記といった社会基盤を支えるデジタルシステムが、現在少数の中央管理者に依存している現状を問題視しています。単一の運営者に依存する体制は、サイバー攻撃や地域的な障害が発生した際にシステム全体が同時に停止するリスクを抱えるほか、運営者の裁量でルール変更や利用者の排除が行われかねないという大きな課題を指摘しています。このような背景から、特定の管理者に依存せず、主権を保ちながら他者と連携できる中立なデジタルインフラの必要性が高まっており、その解決策としてイーサリアムが提示されています。

客観的指標が示すイーサリアムの信頼性と安全性

報告書では、ブロックチェーン監査大手のOpenZeppelinが公表した2026年3月時点のデータを中心とする技術リスク評価レポートを引用し、イーサリアムの安全性について他チェーンとの比較を交えて解説しています。

まず稼働実績において、イーサリアムは2015年の稼働開始以来、一度もシステムが停止したことがありません。これに対し、比較対象となった他のチェーンはいずれも1回から7回の停止を経験しており、中には2023年に19時間にわたって停止した事例もあります。

経済的な安全性についても、ステーキング(担保として暗号資産を預け入れる仕組み)された資産の総額は約760億ドル(約12.2兆円相当)に達しており、不正な取引を確定させるために必要なコストは約507億ドル(約8.1兆円相当)と算出されています。さらに、不正を行ったバリデーター(ネットワーク上で取引を検証・承認する参加者)の預け入れ資産を自動的に没収する「スラッシング」と呼ばれる罰則も備わっています。

また、バリデーターは大陸や法域をまたいで広く分散しており、一般的なパソコンと32ETHがあれば誰でも参加可能であるため、高い分散性が確保されています。ソフトウェア面でも、独立して開発された5種類以上のクライアントソフトウェアが存在することで、単一の不具合がネットワーク全体に波及するリスクを抑えています。一方で、他の一部の大手ブロックチェーンでは、運営企業がトークン供給量の約42%を保有し、バリデーターの選定にも影響力を持つ事例が指摘されています。

各国政府における具体的な活用事例

報告書では、イーサリアムがすでに実際の公共サービスで活用されている事例も紹介されています。

ブータンおよびアルゼンチンのブエノスアイレスでは、イーサリアム上に構築した分散型デジタルID基盤を導入しており、利用者が自分のデータの共有範囲を自ら選択できる仕組みを採用しています。また、インドにおいても土地登記の管理や不正防止、公的記録の改ざん防止を目的として、イーサリアムを基盤としたシステムが活用されています。

これらの事例を踏まえ、報告書は各国政府や機関にとって、主権を保ちながら他者と連携できる中立な基盤をどのように選択するか、また既存の規制の枠組みに収まらないこのようなインフラをどのように統治していくかという2つの課題が重要になっていると位置づけています。

ポイント

  • イーサリアム財団が、政府や機関向けに入門資料となる公式ガイドを公開し、中立なデジタルインフラとしての有用性を提唱した点。
  • 2015年の稼働開始以来一度も停止していない実績や、約760億ドルのステーキング総額など、他チェーンと比較して高い信頼性と安全性が客観的データで示された点。
  • ブータン、アルゼンチン(ブエノスアイレス)、インドなどで、デジタルIDや土地登記管理といった公共システムへの実用化がすでに進んでいる点。
  • 各国政府や機関が主権を維持しながら連携できる中立な基盤の選定と、新たなインフラの統治方法という課題が浮き彫りになった点。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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