イギリスの政党「リフォームUK」の党首であるナイジェル・ファラージ下院議員が、暗号資産政策を巡りイングランド銀行(中央銀行)に対して不適切なロビー活動を行った疑いが浮上しています。労働党のフィル・ブリッケル下院議員は、議会の基準コミッショナーに対し、ファラージ氏の行動が議会のロビー活動規則に違反していないか調査するよう要請しました。この疑惑は、ファラージ氏がステーブルコイン(米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産)である「Tether(テザー)」の主要投資家から巨額の資金提供を受けていたことに関連しており、政治的影響力と暗号資産業界のつながりを示す事例として関心を集めています。
イングランド銀行への働きかけと具体的な疑惑
労働党のフィル・ブリッケル議員が議会基準コミッショナー(ダニエル・グリーンバーグ氏)に提出した苦情によると、ファラージ氏は暗号資産政策において、自身の最大の寄付者である投資家に有利となるようなロビー活動をイングランド銀行に対して行ったとされています。
具体的には、ファラージ氏が2025年9月にイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁と非公式の会談を行った際、中央銀行デジタル通貨(CBDC、中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨)である「デジタル・ポンド(通称Britcoin)」の導入計画を断念するよう求めたとされています。また、個人が保有できるステーブルコインの額を制限する規制案に対しても、反対の意向を伝えたとされています。
主要寄付者との関係とビジネス上の利害
ファラージ氏に巨額の資金を提供しているクリストファー・ハーボーン氏は、ステーブルコイン「Tether(USDT)」を発行するTether社の主要な株主(約12%の株式を保有しているとされる)です。ファラージ氏はハーボーン氏から、500万ポンド(約670万ドル)の個人的な贈り物を受け取っているほか、同氏からリフォームUKに対しても約1500万ポンドの寄付が行われています。
もしイングランド銀行がデジタル・ポンドを導入したり、ステーブルコインの保有額に制限(例えば2万ポンドの上限)を設けたりした場合、Tetherなどの民間ステーブルコインの需要が低下し、ハーボーン氏の投資価値や利益に直接的な悪影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
一方で、ファラージ氏とハーボーン氏側はこれらの疑惑を強く否定しています。ファラージ氏は、ハーボーン氏からの資金は特定の条件や見返りを伴わないプライベートな贈り物であると主張しており、ハーボーン氏の代理人も通常の政治献金であると説明しています。
議会規則と今後の調査
イギリスの議会規則では、議員が資金提供を受けた人物や組織の利益のために、政府関係者や公的機関の役員に対して働きかけるロビー活動を、資金を受け取ってから12カ月間は禁止しています。
議会基準コミッショナーは、すでにファラージ氏が受け取った500万ポンドの贈り物が適切に申告されていなかった問題について調査を進めていますが、ブリッケル議員は今回のイングランド銀行へのロビー活動疑惑について、議会のロビー活動規則に関連する別個の問題として追加の調査を求めています。もしロビー活動における規則違反が認められた場合、ファラージ氏は公式な戒告から議会への出席停止処分まで、さまざまな処分を受ける可能性があるとされています。
ポイント
- リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首が、イングランド銀行に対してステーブルコイン規制や中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関するロビー活動を行った疑いが持たれています。
- 労働党のフィル・ブリッケル下院議員が、議会基準コミッショナーに対し、ファラージ氏の行動について正式な調査を要請しました。
- ファラージ氏は、Tetherの主要株主であるクリストファー・ハーボーン氏から500万ポンドの個人的な贈り物を受け取っており、この資金提供とロビー活動との関連性が焦点となっています。
- イギリスのデジタル・ポンド(Britcoin)開発計画やステーブルコイン規制の行方は、民間のステーブルコイン市場に直接的な影響を与える可能性があるため、ビジネスパーソンにとって重要視されます。
- ファラージ氏とハーボーン氏側は、資金提供に見返りなどの条件は一切なかったとして、ロビー活動の疑惑を強く否定しています。