ケニアの市場規制当局である資本市場局(CMA)が、国内の暗号資産市場における犯罪追跡とコンプライアンス強化に向け、高度なブロックチェーン分析プラットフォームの導入を進めています。この取り組みは、同国で新たに制定された暗号資産関連法に基づき、詐欺や資金洗浄、制裁回避などの不法行為を監視・防止することを目的としています。アフリカ有数の暗号資産市場であるケニアが、法整備に続き技術的な監視インフラの構築へと乗り出した形です。
新たな暗号資産法に基づく監視体制の構築
ケニアでは、ウィリアム・ルト大統領が署名し発効した「暗号資産サービスプロバイダー法(Virtual Assets Service Providers Act)」のもと、新たな規制フレームワークの運用が進められています。この法律により、ケニア中央銀行(CBK)が決済やステーブルコイン、カストディウォレット(暗号資産を保管するサービス)を監督し、資本市場局(CMA)が取引所、ブローカー、投資顧問、トークン化プラットフォームを規制するという、二重の監督体制が敷かれています。
今回のブロックチェーン分析ツールの導入は、CMAが技術的な監視能力を強化し、新制度下で暗号資産関連企業のライセンス付与や監督を効果的に行うための重要なステップとされています。現時点で新制度におけるライセンスを正式に取得した事業者は存在せず、既存の事業者は2026年11月までに新たなコンプライアンス要件を満たす必要があります。
ビットコインやイーサリアムなど20以上のネットワークを監視
導入が計画されている分析プラットフォームは、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)をはじめ、少なくとも20以上のブロックチェーンネットワークにおける取引をリアルタイムおよび過去に遡って監視する能力を備えているとされています。
入札文書などによると、このプラットフォームには以下のような高度な機能が求められています。
- 高リスクのウォレット、大口送金、コインミキサー(取引履歴を不鮮明にするサービス)、ダークネット関連アドレスの自動検知
- 国連や米国財務省外国資産管理局(OFAC)の制裁リストに基づく取引のスクリーニング
- ウォレット間の関係性のマッピング、取引タイムラインの再構築、異なるチェーンをまたぐ(クロスチェーン)資金移動の追跡
- 資金洗浄、ランサムウェア、詐欺、テロ資金供与に関するリスクスコアの算出
また、ケニアのユーザーが頻繁に利用する取引所の特定や、国内向けに無認可でサービスを提供する海外プラットフォームの検出も可能になるとされています。
急成長するケニア暗号資産市場と規制強化の背景
ケニアはアフリカにおいて極めて活発な暗号資産市場の一つであり、すでに600万人以上のユーザーがデジタル資産を利用しているとされています。2024年7月から2025年6月までの期間には、約190億ドル相当の暗号資産がケニア国内に流入したとの報告もあります。
市場が急速に拡大する一方で、投資家を狙った詐欺や不法な資金移動への対策が急務となっていました。今回の取り組みは、国際的な金融監視機関である金融活動作業部会(FATF)のマネーロンダリング防止基準への適合を目指す、ケニア政府の計画の一環でもあるとされています。法律の整備に留まらず、実効性のある技術的インフラを配備することで、持続可能で安全なWeb3ビジネス環境の構築を目指していると見られます。
ポイント
- ケニアの資本市場局(CMA)が、暗号資産犯罪の追跡と市場監視を目的とした高度なブロックチェーン分析プラットフォームの導入を進めています。
- 監視対象はビットコインやイーサリアムを含む20以上のブロックチェーンにおよび、リアルタイムおよび過去に遡った取引の追跡、制裁リストとの自動照合などが行われる予定です。
- 新たに制定された「暗号資産サービスプロバイダー法」に基づき、ケニア中央銀行(CBK)とCMAによる二重の監督体制が構築され、既存の事業者は2026年11月までに新たなコンプライアンス要件を満たす必要があります。
- アフリカ有数の規模を持つケニアの暗号資産市場において、技術的インフラの導入を通じた実効性のある法執行と、国際的なマネーロンダリング防止基準への適合が進められている点で注目されます。